集団災害時における一般医の役割

〜 Mass-gathering medicine 〜

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5.NBC災害

コラム〜NBCの防護服

 生物化学剤によるテロが考えられる環境では、個人防護服の着用が必要である。防護服には、有害物質に対応できるように、様々なものがあるが、米国環境保護局防護基準では、レベルAからレベルDの4段階に分持されている。ここではレベルAからCの3段階の防護服を紹介する。

 

 レベルAは呼吸器、皮膚、眼、粘膜を最高のレベルで守ることができる。呼吸器はマスク内が陽圧になる、プレッシャーデマンド型空気呼吸器を化学防護服内に着用するタイプである。有害物質が不明で、最も危険度が高い場合の基本的スタイルである。蒸気、ガス、液体、細菌等のあらゆる形態の生物化学物質による汚染下での使用が可能である。欠点は、重装備で細かい活動はできず、医療活動はほぼ不可能であることである。また、空気ボンベに充填された空気を呼吸するため、活動時間は空気ボンベの容量により決まり、およそ20分から30分と限定される。

 

 レベルBは呼吸器防護ではレベルAと同等であるが、皮膚に関しては一段低いレベルになる。原因物質の種類と汚染濃度が同定され、レベルAと同等の呼吸器防護が必要で、皮膚防護はさほど心配ない場合に使用する。

 化学防護服は、フード付きのつなぎタイプのものと、ツーピースタイプのものがある。呼吸用保護具は空気ボンベを背負う空気呼吸器、又は、圧縮空気をホースで送気するタイプのエアラインマスク等を使用する。空気ボンベを替えることができるため、長時間の作業にも対応できる。実際の生物化学剤テロにおいては、レベルA、Bの防護服を着て危険地域に入るのは、消防、警察、自衛隊の仕事である。医療関係者が着ることはまずありえない。また、これらの防護服の着用、着脱には訓練を要する。

 

 レベルCの防護服は、有害物質の性状、濃度等が確認されている場合使用される。濾過式マスクと使い捨て化学防護服を着用する。応急救護所あるいは病院での初療、除染の際に医療関係者が使用する可能性がある。マスクには毒物の種類に適したフィルター又は、吸収缶を選択する。

 レベルCの防護服の着脱を説明する。

(1)上着等は脱ぎ時計も外す。

(2)防護服を手に取り、まず足を通し、次に袖を通す。ファスナーを一番上まで上げる。

(3)防護服の裾を捲り上げ、自分の靴を脱いで、ブーツを履く。自分のズボンはしっかりとブーツの中に入れ、防護服の裾を下ろす。

(4)手袋をする。袖は、手袋の上に出す。

(5)介助者に手首と足首の接合部をテープで密閉してもらう。

(6)マスクを装着する。装着したら、カートリッジの部分を閉鎖し空気の漏れがないかどうかをチェックする。

(7)メガネを装着する。

(8)介助者にフードをしつかりかけてもらう。

 防護服の脱衣は防護服が汚染されている可能性があるため慎重に行う。その際には、防護服を着た介助者が必要である。

(1)フードを外し、メガネとマスクを外す。

(2)手首のテープを外す。

(3)慎重にファスナーを下ろし、介助者が防護服の内側を持ち、めくるように脱がせていく。

(4)手袋も裏側にしながら取る。

(5)ブーツを脱ぐ。