長岡市医師会たより No.274 2003.1

このページは、実際の会報紙面をOCRで読み込んで作成しています。 誤読み込みの見落としがあるかも知れませんが、ご了承ください。

もくじ
 表紙絵 「縄文復活」     福居 憲和(福居皮フ科医院)
 「新年のご挨拶」       会長 齋藤 良司(齋藤皮膚泌尿器科医院)
 「新春を詠む」
 「平成15年年男・年女アンケート調査」(省略)
 「囲碁つれづれ」       杉本 邦雄(杉本医院)
 「新会館建設の動向〜その8」 会館建設委員会委員長 大貫啓三
 「元旦のお弁当始め」     郡司 哲己(長岡中央綜合病院)

縄文復活   福居憲和(福居皮フ科医院)
海の渦巻く波の泡より美と愛の女神アフロディティが生まれた様に、思いの世界では、縄文土器の化身も立ち現れ、土器の持つ凝縮されたエネルギーを解放、立ち昇らせ空の星にしてしまうのです。

新年のご挨拶  会長 齋藤良司(齋藤皮膚泌尿器科医院)

 新年お日出とうございます。

 会員の皆様にはいかが新年をお迎えでしょうか。

 昨年もまた医療界には厳しい年でありました。4月の診療報酬引き下げ改定は本制度始まって以来初めてのことで、しかも引き下げ率は厚労省の試算2.7%をはるかに越え、日医の4〜6月のレセプト調査では自然増を考慮すると4.7%に及ぶとの結果が出ています。更に10月からの外総診の廃止、老人の自己負担の定率制の影響、本年4月からの健保本人の三割自己負担を考慮すると、診療報酬の引き下げは、日医の二次レセプト調査の中間報告でも10%を越えることが予測されています。

 今回の診療報酬の改定が内閣府直属の経済財政諮問会議からのトップダウン方式で決められたとはいえ、日医の状況判断の甘さとその対応に問題があったとの批判も当然と思われます。

 次に最近大きな問題となつているのに医療特区があります。これは医療経済のみならず、現在の国民骨保険制度の根幹を揺るがす多くの問題を含んでいます。これも内閣府に作られた総合規制改革会議から提出された構造改革特区構想で、最近特命大臣も置かれました。医療もその一つに含まれています。この構想は経済財政至上主義の実践手段の一つであり、手挙げ方式で地方自治体単位に行政の多くの分野で、固からの援助なしで規制を緩和し、経済効果を目的として施策を実施させ、成功例では全国展開への拡大を意図するものです。

 医療に特区制度が導入されると、地域的に異なる保険制度ができ、利潤追求を目的とした株式会社の参入、混合診療の導入や外国人医師による診療等の問題が出てきます。「誰でも、何時でも、何処でも」という理念で出来た現在の国民皆保険制度を根底から崩す原因となると日医は危倶しています。平成14年12月20日付けで、日本医師会は日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会と連名で小泉内閣総理大臣宛に、被用者三割自己負担の実施凍結、高齢者自己負担軽減、医療への株式会社参入阻止、混合診察の導入反対の要望書を提出しました。

 政府がとった今回の診療報酬改定の手法を顧みて日医でも今後、医師連盟の活動方針も含め広報活動にも工夫を加え、郡市医師会の意見を十分に尊重し、各会員の声を積極的に活動に反映させたいとの意向です。真に国民と共に歩む医師会でありたいものです。

 最近の社会情勢の変化、特に国の医療、年金、福祉、介護政策の影響は医師会にも現実的な新しいいろいろの問題を提起させてきています。

 特定機能病院や療養型病院の色分けは完結型の中小病院を圧迫し、新たなる経営方針の模索を求め、開業医にも一般医であると共に、ある程度の専門性を要求しています。これは患者の求める両面性でもあり、病診連携が益々重要視される所以です。長岡ではすでに日赤、中央、立川の三病院で病診連携室が活動しておりますが、更にこれを有効利用するため昨年より医師会内でも病診委員会で「開放病床」の検討を始めました。ご意見をお寄せ下さい。近くこれに関するパネルディスカッションも予定されています。

 また医師会として、学校保健、産業保健、介護保険、住民健診などにも積極的に協力するのは言うまでもなく、学童の教育面にも参画できたらと思っています。最近、小児救急医療の問題が提起されていますが今後充分な討議が必要です。

 今年あたりから市町村合併の進展が本格化することは必死で、これは二次医療圏、医師会の再編とも関連し、長岡市医師会にとっても地域医療の新たな課題となりましょう。

 さて、昨年7月臨時総会で基本設計の承認を頂いた新医師会館の建設については、12月の入札で施工業者も決まり、今年3月雪解けを待って着工、9月末竣工の予定です。会員の皆様には新たに多額の負担をお願いすることになりました。時々現地にもお出になり、ご意見を頂ければ幸いと思っております。

 最後に会員の皆様のご多幸と新会館の竣工を祈念して新年のご挨拶とさせて頂きます。

 

 目次に戻る   

新春を詠む

きざはしの凍雪嶮し初詣  渡辺修作

初空や赤き鳥居の一の宮  荒井紫江

ねぎらひて過ぐる友あり落葉掻  十見定雄

ほろ酔の肩がぶつかる雁木道  伊藤 洸

初凧の小佐渡を朱鷺の翔びこせる  郡司哲己

 

  目次に戻る


囲碁つれづれ  杉本 邦雄(杉本医院)

 大学受験に失敗し、ごろごろしていた時、祖父、父のうっているのを見てるうちに碁を覚えました。大学では、金沢大学医学部との対抗戦に出かけたこともありましたが、まだ級の時代で、囲碁部の中で一番下手で先輩にいろいろ教えて貰ったり迷惑をかけたり、下も下の状態でした。5、6年たって親父が私に白を譲った頃から碁が面白くなったように思います。お分りでしょうが、大体上手い方が白石を持つことになつております。でも、その頃は初段か2段くらいでヘボもいい処だったのでした。今が上手だと言っているのではありませんが、あの頃よりは碁の中身が分かってきて、勝負よりも石を愛するようになってきました。碁は人生だ、とよく言われますが精神状態によって連勝が続いたり、何度打っても負けてばかりだったり、一つ一つの石に心を込めないと良い碁はうてないように思うようになりました。

 日本棋院に大枝雄介九段と言う先生がいられますが、この方が確か六段の頃から指導をうけており、大枝一門のお弟子さん達から月に一度は長岡で指導碁があります。かれこれ30年にもなりましょうか。お弟子さんはどんどん段を上げて行かれるのに我ら仲間はなかなか置き石が減りません。ああ、仲間と申した方々をご紹介しなければなりません。我らの会を六枝会と命名し、斎藤古志、黒川和泉、太田 裕、斎藤昌志、大塚武司、三間孝雄の先生方です。斎藤昌志先生は三条市医師会の方で、6人で六枝会としたわけです。あとから三間先生が入ってこられ、現在は7人で指導を受けています。お弟子さんの中から新しいカップルが生まれ、近々お祝いをしようじゃないかと話し合っておる処です。

 兎に角、碁は楽しい、仲間が出来るのも、一つのメリットです。最近、ネットでよく碁をうちます。「プロの碁」と言うのがあって、高段の棋士の打った棋譜を我らアマに打たせて実力を判定するゲームで、それに挑戦しているのですが、判定結果では二級から八段まで全くさまざま、そのプロ棋士の考え方にあうと高い評価を得られるのです。と言うことはプロでもいろいろな考え方があると言う事に他なりません。十人十色なんですね。でも、碁打ちには悪者は居ないとも言います。世の中、せこくなってきましたが、みんなで碁を打ったら沈みかけた日本丸も、昔日の面目を取り戻す事が出来るのではと思ったりしております。

 2月1日には医師会新年碁会があります。無心で臨んで好い結果が出せたらなあ、そう言えばここ何年か入賞から遠ざかっています。優勝すると、その弁を「ぽん・じゆ〜る」に書かねばならぬ義務がある。でも、たまにはその機会に巡り合いたくもあるんです。

 ひと昔、ふた昔前は当医師会にも碁を打つ先生が多くいられました。が最近は少人数です。新年碁会に級位の方でもご参加頂ければと思っております。

 

  目次に戻る


新会館建設事業の動向〜その8  会館建設委員会委員長 大貫啓三

−施工業者が決まりました−

 基本設計段階以降掲載をしばらくお休みしておりましたが、このたび施工業者も決定し、建設に向けて大きく動き出すことになりましたので、今秋予定の竣工まで改めて新会館に関するいろんな情報を掲載していきたいと思います。ご意見等お寄せいただければ幸いです。

 会員の皆様には、別途発行の「お知らせ」等で逐一状況をお伝えしてまいりましたが、今年度の大きな動きをまとめてみますと、以下のとおりです。

●平成14年5月 長岡市と新会館建設地の売買契約を締結

●平成14年7月 臨時給会にて新会館基本設計案及び資金計画案を原案どおり承認

●平成14年10月 資金計画スタート(改定会費徴収開始)

●平成14年10月 実施設計完了

●平成14年12月 施工業者選考

●平成15年1月 施工業者と契約

 なお、着工・竣工は、従来どおり3月着工、9月末竣工の予定です。

 さて、今回は、施工業者の選考過程の詳細を報告いたします。

 昨今の不況による工事件数の減少のためもあると思いますが、かなり早くから当医師会には多くの建設会社から照会がきておりました。9月中旬に正式に受付を行ったところ、地元はもちろん県内・全国大手を含む18社から申込みがありました。

 18社では選考上多すぎるということで、やむなく書類審査により4社には線引きをさせていただき、14社にしぼりましたが、選ぶ側である当方は勿論、選ばれる側にも透明性を確保し、いかに公正な選考を行うかに大変苦心いたしました。

 まず、参加業者に対して行う現場説明ですが、一同に会して行うと参加メンバーがお互いにわかってしまうため、図面等は送付することとし質疑もFAX及びEメールで受け付け、参加業者との直接の接触は行わないようにしました。

 肝心の選考方法については、提示額のみで選考するため最も透明性を示すことが出来る「入札方式」、見積書で積算内容も審査する「見積合せ方式」のどちらににするか議論が分かれましたが、結局、双方の利点を取る形で、入札による一次審査で提示額の低い方から4〜5社選び、更に見積書を提出してもらい、内容を審査したうえで決定するということにいたしました。また、業者との無用な接触をさけるため、札・見積書は時間指定の宅配便を利用して受け付けることにしました。

 11月上旬に図面等を送付、約一月弱の積算期間を経て、12月2日、医師会館にて斎藤会長始め三役で参加14社から届いた札を開封し、提示額の低い順から4社(便宜上、低い順からA〜D社とします)を選び、即見積書の提出を依頼しました。

 翌12月3日、A〜D社から見積書各2部が届き、1部は設計チームヘお渡しして内容のチェックを依頼しました。

 12月6日、三役で設計チームから審査結果について説明を受けました。それによりますと、各会社とも項目の見落としや計上誤りと思われる所があったものの最もその程度が少なかったのは、一番低い額を提示したA社でありました。

 12月10日、第5回会館建設委員会にて選考状況を報告のうえ慎重に審議し、A社に施工を発注することが適当である旨の委員会の報告書を取りまとめ、会長に提出しました。

 12月11日、定例理事会役員会にて当該報告書を了承、A社に決定することとしました。

 12月24日、三役で正式にA社側と会い、契約の進め方等について話し合いました。

 そして、1月14日大安の日に医師会館にてA社即ち鹿島建設株式会社と契約を締結しました。

 以上が選考から契約までの過程です。

 具体的な額の記載はここでは省略しますが、入札に参加された全14社ともとても真撃に取り組んでいただき、当方で基本設計時に市場価格で積算した概算建設費用を上回ったところはなく、全て下回っておりました。参加いただいた各社には、この場を借りまして厚く御礼を申し上げたいと思います。

 現在、鹿島建設では3月の着工に向けて着々と準備が行われており、9月末には余裕を持って竣工できるとのことです。既に10月以降の新会館利用の打診も来ているようです。新会館は、規模や費用は別にして、間違いなく長岡を代表するような建築物になります。どうぞ、ご期待ください。

 

目次に戻る

元旦のお弁当始め  郡司 哲己(長岡中央綜合病院)

 今年は元日二日と雪国にはめずらしい好天に恵まれ、いわゆる初晴でした。大晦日、一日と若い同僚のT君とふたりで小児科の日直および救急拘束を勤めました。

 ところで生活の基本は食にある、という生活哲学を持っておるわたしです。(…おいおいそんなに胸を張って、ひとさまに言うことか。)

 そんなわたしの元日の病院勤務では、昼食に苦労する経験が多いのであります。数年前元旦の多忙な急患診療の合間をぬって、ひととき昼食に戻りました。食事棚にはなんと菓子パンと牛乳パック、こんな手抜きの病院給食で泣いたこともありました。もちろんわたしはこどもの医者ですが、こどもではありませんからホントには泣きませんよ。

 もっとも勤務病院のそばにはセブンツエルブなんて24時間ストアも最近はオープンしております。ここの一部のサンドイッチとお弁当はおいしいと思います。

 でもさすがにお正月ですからね。家人には迷惑千万でもありましょうが、わたしの「食のポリシー」に添ってお弁当をお願いするということで。前夜から家人には、この一年の「最後のお願い」として、翌日すなわち元旦のお弁当をつくつてもらうことになりしました。家人も仕事続きのわたしに対する同情もあり、快く引き受けてくれました。

 大晦日も仕事を終え夕方に帰宅して、ふたりと犬二匹で年夜の晩を過ごし、除夜の鐘を聴いて寝ました。ところが早朝から「室内柴犬」”ゆめ”が早起きして、散歩をせがみます。こういう日はきっと朝から快晴なのです。

 外に出て薄明るいなか、凍て道を転ばぬように気をつけて歩きます。枕草子の「山ぎは少しあかりて」なんてあたりの雲らしいのが、日の出の茜色に染まり始めます。初東雲−はつしののめ、なぞという季語が浮かびます。駆け出し俳人の悲しさで肝心の俳句は浮かびませんでした”ゆめ”はしばらく雪道を歩くと大きい方の用を足しました。散歩をせがむときはときに下痢だったりしますが、そんなこともなく立派な「御用始め」でありました。わたしの頭に今度は有名な俳句が浮びました。

 去年今年貫く棒の如きもの 虚子

 元旦の朝食はちゃんとタムラ漢方堂の延命屠蘇散で用意したおとそを一杯だけ酌み交わし、お雑煮や簡略でありますがお節料理をいただきました。そそくさと切り上げ、家人に手作りお弁当を手渡され、いざ出勤であります。

 外の空気は冷たく、上る日差しにあたり一面に雪の表面から白靄が立ち上っております。

「うーん、この朝靄は吉兆だな。」

「あらそうなんですか?」と感心する家人です。

「いや、なんだかそんな気がしただけ。」

 新年の淑気とは目にはみえないのでありましょう。

 その元旦は地域の救急指定の当番に勤務先病院があたっていましたので、ごつた返すことは予想済みでした。遅い午後にやっとお弁当を開くことができました。塗わっばのお弁当の上段は実家の佐渡直送の牡蠣のフライ、塩引き鮭など。下段はしっかりまん中に自家製の梅干。おう、祝祭日の日の丸ですな。以前も本欄に紹介した「有季定型」遵守の伝統俳句のような家人の弁当です。

 元旦の弁当始めでありました。

 どうぞ本欄を本年もよろしくお願い申し上げます。

 

  目次に戻る