長岡市医師会たより No.370 2011.1


もくじ

 表紙絵 「富士新春(1月3日 富士吉田にて)」 丸岡稔(丸岡医院)
 「新年を迎えて」 会長 太田 裕(太田こどもクリニック)
 「新春を詠む
 「春までの預かりもの」 廣田雅行(長岡赤十字病院)
 「新春・夢叶う  箱根駅伝」 岸 裕(岸内科・消化器科医院)



「富士新春(1月3日 富士吉田にて)」 丸岡稔(丸岡医院)


新年を迎えて  会長 太田 裕(太田こどもクリニック)

 明けましておめでとうございます。会員の皆様には、健やかに新しい年を迎えられたことと存じます。
 昨年の医師会を振り返ってみますと、最も大きな出来事は、小沢民主党と太いパイプを持つという原中会長が選出されたことです。この事は医師会に大きな変化をもたらしました。会長選はこれまで東西のイニシアチブの取り合いの様相を呈しておりましたが、今回の選挙では自民党民主党また政党医師会を演出しvsvs医師会の中に政治的な覚醒をもたらしました。
 そして民主党政権へ移行し、これまで小泉政権下で毎年行われてきた社会保障費の自然増2、200億円のカットがなくなり、更に、年ぶ10りに診療報酬%値上げが行なわれ0.19ました。その結果、診療所や中小病院は苦戦を強いられましたが全病院の8割が増収、前年同期比%増と6.26なり、一定の評価を得ています。一方、医療ツーリズムを推し進めるなど混合診療の解禁に道を開き、結果的には国民皆保険制度を崩壊に導くあやうさを秘めています。
 また、昨年7月の参議院選挙では、3人の医系立候補者がそろって落選しており、これは医師会の集票力のなさ、医師会と病院の連繋のまずさ、政治に対するあり方が問われる結果となっており、今後の取り組み、方針の再考そして会員の政治的社会的関与がこれまで以上に必要となると思われます。
 来年には診療報酬そして介護保険のダブル改定があります。医師会にとって非常に大事な年であります。国民にとっては、医療、介護そして年金、この3つが安心して生活を送っていく上で最も重要な基盤ですので、医師会としましてもしっかり対応し、その道筋を国民に十分に示してゆかねばならないと考えております。
 次に長岡市医師会に目を転じますと、昨年4月より新しい執行部体制となりました。大塚、長尾両副会長、高木総務を軸に取り組んでおりますが、皆様のご協力により順調に医師会運営が行われております。
 これまで長年続けられてまいりました互助部会についてですが、この度の公益法人制度改革に伴う新法人移行後に保険業法の適用を受けますと、これまでのような傷病見舞金の支給ができなくなる事(5年間の延長がその後決まっていますが)、また現在会費が年12、000円、傷病見舞金が日に1、000円で3年間受領可能で、仮に名の方が満額20の支給を受けた場合、3年で互助部会の保有額が0円になります。この制度は、部会が設立された当時では相互扶助として当然であったと思われますが、医療の進歩により、状況が変わり、いわゆる制度疲労を起こしていることになります。幸い現時点で解散すれば、これまで納入された会費を9割方返還することが可能です。1月日に開催されます臨時31総会にて互助部会の解散をお諮りいたしますので、会員の皆様のご理解、承認の程よろしくお願いいたします。
 次に地域連携パスについてですが、大貫前会長より引き継ぎました大腿骨頚部骨折、脳卒中、COPD、肝疾患の地域連携パスに加え、認知症、糖尿病、慢性腎障害のパスについても検討が進んでおります。まだパスの運営が途に就いたばかりで試行錯誤が続いておりますが、さらに良いものとし、地域完結型医療構築の手助けになればと考えております。また胃がん、大腸がんなどのがんに関する連携パスも作ってまいりましたが、新潟県全体での統一パスが作られ、登録なども簡略化されます。
 救急医療に関しましては、三病院の輪番による二次救急がうまく回っております。これは各月行われています三病院救急懇談会によるところが大であります。一次救急に関しましては、休日診療、大人の平日夜間、子どもの急患とも来院患者は一昨年の新型インフルエンザの時のような混雑はありませんが、特にトラブルもなく市民の皆様に認知された救急となっております。会員の皆様のご協力、誠にありがとうございます。
 昨年より病院長会議が再開されました。暮れの会は3病院のほかに西病院が加わり、救急、地域医療、病院の役割など多方面の話題について懇談がもたれました。いつも問題になるのは救急についてです。県は二次医療圏を設定しておりますが、県央、魚沼地区とも二次の受け入れ能力が低下してきており、長岡地区に集まる傾向が強まっています。この事は救急だけでなく、一般診療においてもあてはまり、周辺の医療圏の弱体化が年々進んでいることの現れと思われます。その結果、今後ますます救急、一般診療とも広域化が進み、多くの患者が長岡地区に集まってくることが予想されます。これに対応するためには、開業医と病院との地域連携を更に推し進め、病院の対応力の強化、機能分担をはかることが重要となります。そして地域住民にとっても、医師にとってもこれまで以上に実力があり魅力的な医療圏を構築しなければなりません。そしてその実現には医師確保が最低限の条件となりますので、あらゆる機会を利用して長岡の魅力をアピールして一人でも多くの医師を引きつけてゆければと考えております。会員の皆様のご支援、ご協力、宜しくお願いいたします。
 皆様にとりまして大きな飛躍の年になりますようお祈りして新年の挨拶とさせていただきます。

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新春を詠む

初春や 余生明るく 美しく    荒井紫江(奥弘)

諏訪大社 温水うれし 初手水    十見定雄

庭の木々 枯葉落として あらたまる    江部達夫

ヒマラヤを 越えてゆきたる 初荷かな    石川 忍

飼犬の をらずふたりの 初笑ひ    郡司哲己

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春までの預かりもの  廣田雅行(長岡赤十字病院)

 「ソロソロ帰りましょうよ。」「ご馳走さん、お勘定を!。」女房殿に促され、渋々腰を上げた久し振りに顔を出した行きつけの焼き鳥屋。暖簾を分けて、「じゃあ、又。」と、挨拶し、何時もの様に、「有り難うございました。気を付けて……。」の返事が返って来ると思いきや、「先生、何とかなりませんかねェ、これ。」ママの指差す先を見ると、ほぼ丸坊主となりかけた山椒の木。以前から店の入り口のこの木には時々アゲハ蝶の幼虫が付いて居る事が有ったのですが、最近はトンと見かけず、青々と葉を茂らせていたと言うのに。今日は店に来た時間がやや遅く、その時はそれに気付かなかったのです。暗さに目が慣れて来ると、枯れ枯れしてしまった山椒の枝のあちこちにアゲハの幼虫が、それもほぼ終令の大きさに成りかかったものが、ざっと見ただけで七、八頭。「こりゃあいけませんねェ?。」最終令に入った幼虫の食欲は猛烈で、しかも越冬しなければならないこの季節の者ですから、半端で無いと覚悟しなければなりません。「このままだと山椒は丸坊主、更には幼虫が目立ってしまうから蜂にも狙われやすくなるしなァ。しゃあない、“窮鳥懐に入らば、猟師も何とやら。”何とかしましょうかね。」ま、女房殿も以前からこの種のアゲハの幼虫には寛大な事でもあるし。と言う事で、ビニール袋に集めた幼虫は何と十四頭。心当たりの柑橘類、カラタチ、山椒の木の類の在処を頭の中でざっとチェック。「やるしかないわな。」
 ご存知の様に蝶の食草は、その種類によって限られておりまして、このアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハ等と呼ばれるメジャーなグループの物は、主として庭木等としてよく植えられる柑橘類です。それで、幼虫は通称「柚子坊(ゆずぼう)」等とも呼ばれている様です。(←写真)
 因みに以前、本会報に書かせて頂いたジャコウアゲハは、ウマノスズクサ。春の女神、ギフチョウは、カンアオイを食べますが、こんなにかけ離れたかに見えるこの二種類の食草、実は分類上は非常に近い種であると言う事を、ついこの間知って、恥ずかしながら吃驚しています。
 あちらこちらと少しずつ山椒の葉を頂いて、子育てが始まりました。適量を飼育用に作った牛乳パックの箱に入れ、残りは冷蔵庫の野菜室でキープ。この幼虫は危険を感じると頭の部分から橙色の「臭角」と言う特殊な匂いのする角を出して敵を威嚇します。食草を取り替えたり、触ったりすると、周囲にこの匂いが漂います。珍しく顔を出した長女も、「なかなか可愛いじゃない。」等と、のたまうものの、では一部持って帰って自分で育てようとまでは言わないのでは有ります。
 暫く飼育する内に、一頭又一頭と飼育箱の壁や、カバーのガーゼに付いて動かなくなります。前蛹になったのです。(←写真)この写真や前の写真をご覧になってジブリアニメの「風の谷のナウシカ」に出て来た「王蟲(おうむ)」を思い出される方も有るかも知れません。尤も、「気持ちが悪い。」と仰る方が圧倒的かも知れませんね。
 やや飼育環境が過密傾向に有った事や、食草が季節も有ってさほど豊富で無かった等が有った為か、全体に小ぶりな感じでは有りますが、それでも、数日すると脱皮してしっかり蛹に成ってくれました。(←写真)蛹の中には緑色の物や茶色の物、こげ茶の物等が見られますが、これは周囲の状態への「擬態」とされては居ますが、冬に向かってのこの緑は?等と考えてしまわざるを得ない面も有ります。結果として、上手く蛹になれなかった者が一頭、小さ過ぎて食草が足りず十分大きく成れないまま死んでしまった者が一頭。それでも約八十五%が蛹に成れて、ま、上出来でしょう……、等とは言って居られないのです。と、言いますのは、持って来た幼虫が大きく成っていた事にその要因があります。幼虫を狙うのは、直接食物として狩りに来る蜂だけでは無いからなのです。つまり、見た目で分からない敵を抱え込んでしまっている、と言う事が有るのです。「寄生蜂」がそれです。蛹に成って、良し々と思っていると、何時の間にかその蛹の胴体に穴が開いてしまっていて、小さな蜂が飛んでいる、などと言う事が結構有るのです。大きく成った幼虫を持って来て育てていると、その前に寄生されてしまっていた、と言うリスクが有る訳なのです。とは言っても、この段階では分かりませんので、運を天に任せるしか有りません。蛹を並べて、今年の秋のジャコウアゲハの蛹と一緒に干物籠に入れて越冬に向けて準備をしましょう。さて、来年の春に、一体何頭がこんな美しい姿を見せて呉れるでしょうかねェ?。(↓写真)

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新春・夢叶う 箱根駅伝  岸 裕(岸内科・消化器科医院)

 明けましておめでとうございます。皆さま、楽しいお正月を過ごされた事と思います。お正月の風習もその地方によりさまざまと思いますが、私の住む長岡市古志十日町村では1月1日に村にある4か所のお寺様に年始参りを済ませ、その足で、新年賀詞交換会として町内会館で村人相集い、新年の祝杯をあげる。
 2日はのんびりと過ごし、来る1月3日は雪が降ろうと雨あられであろうと、毎年恒例の“お寺様ご年始”。
 4つのお寺さまご住職とそのお供の一行が年始返礼として村中を歩いてお通りなさるのを、村人は自宅玄関前にてお待ち受けする風習が(おそらく江戸時代かひょっとしたらもっと前からか)ずっと続いている。と言う訳でお正月は長い旅行には行かず、2日・3日はTVで恒例の箱根駅伝を見て過ごす。
 自分は走る事などまったくしないくせに見るのは好きなのだ。駅伝の様にたすきを繋ぐ為に走るというのはマラソンとはまた違った楽しみがある。ちなみに全国都道府県対抗駅伝では新潟県を応援し、学生駅伝(10月の出雲・11月の全日本・新春の箱根)は私が医師になる前に卒業した母校、早稲田のえんじにWのユニフォームを家族皆で応援している。
 昨年の箱根駅伝は早稲田は竹澤健介君が卒業したこともあり7位。東洋大学が往路五区の山登りで柏原竜二君の素晴らしい走りもあって優勝、2連覇を達成した。今年は東洋も3連覇を目指しているが、早稲田も出雲・全日本と優勝していて学生駅伝の三冠がかかっている。
 わくわくしながら見る。早稲田は往路1区で1年生の大迫傑君が区間賞トップでたすきを渡すとずっと1位でたすきが渡り、いよいよ往路5区!東洋の柏原君は今年不調だったにもかかわらず素晴らしい追撃を見せて逆転、山登りの天才がトップを奪って往路は東洋大の優勝。
 しかしながら早稲田は復路6区で高野寛基君が氷の張った道路に滑って転倒してしまったアクシデントにもかかわらず、東洋を抜いてトップに立つ。そして8区、9区、10区と(東洋の選手達が区間賞の走りをしたにもかかわらず)1位を守り抜き復路優勝と総合優勝を飾った。実に18年ぶりの総合優勝、嬉しい箱根駅伝であった。また早稲田ではないが、今年MVPを獲得した東海大学の村澤明伸君は2区で17人抜きの快挙を達成、もしかしたらオリンピックのマラソンで彼が走る日が来るかも知れないと思うくらいだった。
 どの大学の選手も母校の栄誉をになっての必死の激走。その思いがTV画面からでもひしひしとつたわってくる。誇らしげに先導する白バイの警官。祈る気持ちであろう関係者と各大学の監督も。
 早稲田の渡辺監督も自分が18年前に選手として走って以来の優勝。それを目指して、それを夢見て、ダイエットして10数キロやせたとか。その甲斐あっての見事な胴上げ。宙に舞う監督はあらかじめそれを信じてダイエットしたのだとか。信じて行い、願いがかなったところが凄い。
 今年は春から縁起が良いわい。やはり早稲田じゃ。と、感激のあまり雑煮の餅をのどに詰まらせないように気をつけながら年賀状をチェック。
 すると、お目出度い事がもうひとつ。医学部時代の同級生からの賀状で彼のお嬢さんが今春、宝塚大劇場で初舞台を踏むとの事。おでこの広い卵型の顔立ちの美しいお嬢さんはかつて宝塚月組のトップスターであった涼風真世に良く似ている。男役フェアリー系のトップスター目指して頑張って下さい、とエールを送る。
 そう、今年は望めば夢かなうかも。

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