長岡市医師会たより No.399 2013.6


もくじ

 表紙絵 「緑陰 MaRou の杜」 丸岡稔(丸岡医院)
 「渓流釣り」 江部達夫(江部医院)
 「診療所に勤務して、今、思うこと」鈴木信明(鈴木内科医院)
 「英語はおもしろい〜その32」 須藤寛人(長岡西病院)
 「ジューンベリーの大収穫」 郡司哲己(長岡中央綜合病院)



緑陰「MaRouの杜」 丸岡稔(丸岡医院)


渓流釣り  江部達夫(江部医院)

 昨年、喜寿を迎えた。肉体はまだまだ若いつもりでいたが、渓流に入ってみると、身軽さがなくなり、足の運びがだんだん悪くなって来ていた。
 私の渓流釣り歴は古く、中学生の時からイワナ釣りを始めており、65年になる。ずいぶん危ない目にも遭ったが、今日まで無事に来られたのは運も良かったのであろう。
 足を滑らせ急流に流されたことも何回かあった。流れの中で転倒した時は、上流には決して向かず、直に下流に向くのが鉄則、上流に向いたため、ウェーダー(防水ズボン)に水が流れ込み、流れに持って行かれた釣人もいる。足腰に衰えが見え始めた70歳過ぎから、河原を歩き、流れに入る時は杖をつき、転倒には充分に注意を払っている。

喜寿迎え 老いに気がつく 川渡り

 この65年間、私の血となり肉となったイワナやヤマメの数はどれ位になっただろうか。一万匹は越えただろうが、釣り上げるのに苦労した大イワナや大ヤマメ、その時の場景は今でも鮮やかに思い出される。私の釣りは自給自足から始めたものだった。

大イワナ 釣り上げ渓は 静まれり

 小学生の頃から始めた昆虫採集、中学生になると本格的なものとなり、夏休みは蝶を求めて新潟県内のあちこちの山へ、長岡市内の中学生4、5人で、泊まりがけで出かけていた。山の中の学校によく泊めてもらった。食事造りも楽しみであった。
 私の家の裏には川が流れており、幼稚園の頃から川釣りを楽しんでいた。戦後の食糧難の頃、私の釣ったフナ、ウグイやナマズは我が家の夕食の食卓を飾った。フナの味噌汁、ウグイの塩焼き、ナマズの天ぷらはご馳走であった。
 蝶々を採りに出掛けた山々、そこには渓流があり、イワナがいた。当時はどの流れにも魚影が濃く、イワナは簡単に釣れた。塩焼きにしたり、腹に味噌を詰め、朴葉(ほおば)に包んで焼いほおばて食べた。

薪焚きの 夕食(ゆうげ)の支度や イワナ釣り

 蝶採りの山歩きは高校生まで、二年の浪人生活が終わり、大学に入った時には、趣味の虫採りよりもイワナ釣りが面白くなり、大イワナを求めて東北の渓流まで出かけていた。イワナを食べ飽きた訳ではないが、医師になってからはイワナより旨いヤマメ釣りに転向。
 医師として初めて勤めた病院が岩船郡関川村の国保病院。関川村には山形県から流れてくる大河荒川があり、その支流の大石川が飯豊連峰の北端杁差(いぶりさし)岳から流れている。この川の上流はイワナの宝庫、村の中を流れる中流域はヤマメが棲み、渕にはヤマメが群れ、急流の岩陰には大型のヤマメが潜んでいた。

岩陰に 餌待つヤマメ 潜みおり

 関川村は昭和42年8月の羽越大水害で、水没。美しい渓流であった大石川も荒れ川となった。5年の歳月をかけた護岸と堰堤工事の結果、コンクリートの川に変わってしまった。
 もう二度とヤマメが棲むことはないだろうと思われた。しかし10年も過ぎる間に、流れは少しずつ変わって行った。度々の大水により、川底から大きな石が浮き出たり、深みができ、草や木も生える中州もできて、だんだん自然の姿を取り戻してきた。ヤマメも戻ってきた。もっとも私も組合員である荒川漁業組合で、ヤマメの稚魚を毎年3万匹も放流していることもあるが、ヤマメの親であるサクラマスも上って来ていた。

甦る 渓にヤマメの 姿増し

 大石川は今ではヤマメの多い川として有名。5、6、7月の最盛期には関東ナンバーの車も多い。数を期待してやって来る者、大物を狙って来る者など。
 ヤマメは川で育って2年経つと、メスの全てとオスの一部が海に下り、更に1年経つと大きなサクラマスとなって川に帰って来る。春に戻ったサクラマスは秋まで川で過ごし産卵する。川に残ったヤマメは4、5年経つと尺を越す大ヤマメとなり、サクラマスの卵に精子をかけているのだ。
 大石川での私の記録は35センチメートル、もうマスに近い大きさだが、体にはうっすらとパーマークが残っていた。釣り上げるのに30分はかかった。勢いが落ちるまで、急流の中で遊ばせておくのだ。川巾一ぱいに逃げ廻るヤマメと引き合っている。釣り上げた時には右腕は棒のようになっていた。10年前のことであった。

尺ヤマメ 釣上げタバコの 手は震え

 5年前の7月下旬のこと、夕方5時に大石川に出かけた。私の釣りは早朝か夕方、日の高いうちは出かけない。釣り場に着いた時、上空は黒い雲で覆われ、突然スコールのような大粒の雨が降り出し、稲妻も走った。雨は10分程で上がった。川に入り毛針を投げ始めた。雨の中は鳴き止んでいた蝉が、1匹、2匹と鳴き始め、やがて大合唱に。

夕立の 止みてまた降る 蝉しぐれ

 雨の後しばらく射していた夕日は山陰になった。川面が暗くなり始めると、ヤマメは虫を追ってあちこちで跳ね上がった。こんなにたくさんいたのかと思った。

日は落ちて 虫追うヤマメ 数増せり

 私の毛針にもヤマメは次から次へと食いついてきたが、12センチ以下の2年子が多く、針からはずして逃がすのが面倒。目的は20センチ以上のものだが、竿を仕舞う時刻になっても10匹しか釣れてない。これでは私の釣果を楽しみにしている友人達に十分なご馳走ができない。
 東の山から月が顔を出した。満月に2日足りないが、結構明るく川面を照らした。大型のヤマメが騒ぎ出した。

月照りて ヤマメ激しく 毛針追う

 月明かりの下でのヤマメ釣り、30分で予定の数を釣り上げ竿をたたんだ。その晩は関川村の友人宅に泊まり、釣りたてを塩焼きにして楽しんだ。
 2日後、行きつけの鮨屋に7人のヤマメファンが集まり、塩焼き、てんぷら、姿寿司と満足してくれた。この日は満月、東の山から大きな月が昇って来た。

月見酒 姿造りの ヤマメずし

 古希を過ぎてからの私の渓流釣りは、大物を狙って場所をあちこち移動するのは止め、足場の安全な流れ2、300メートル程を、ゆっくり下りながら、深みや大石の陰一つ一つをていねいに探っている。結構釣果を上げている。
 ゆっくりとした川歩き、気持ちにゆとりができたのか、この頃は川原に咲く草花に目を癒し、カジカ蛙の鳴き声に耳を傾け、夕刻岸辺に光るホタルを楽しむなど大自然を満喫している。

カジカ鳴く 渓の夕暮れ 初ホタル

 喜寿も過ぎて一年、今年もヤマメ釣りの季節がやって来た。ここ数年出会っていない尺ヤマメに、この夏にはと期待を込めて作った毛針が気に入ってもらえるか、試す日がやって来た。

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診療所に勤務して、今、思うこと  鈴木信明(鈴木内科医院)

〜 今日より明日へ、活動的な毎日をおくろう!〜

 2011年7月より鈴木内科医院で勤務し、父である院長とともに診療にあたっています。今回、診療所に勤務して、今、感じていることを書いてみようと思います。
 当院は糖尿病診療に力をいれており、糖尿病患者と接する機会がたくさんあります。現代社会では過食・運動不足の方が多く、糖尿病を含めた生活習慣病が今後、減っていくことは難しいように思われます。糖尿病診療は、近年、薬剤の進歩が著しく治療選択が多彩になってきています。以前から毎月、糖尿病患者の HbA1c の集計をしているのですが、ここ1〜2年で、かなり HbA1c が改善してきています。血糖コントロール不良の方も減ってきてはいるのですが、合併症により病院に紹介させて頂く症例も多いのが現状です。若年者でも脳梗塞を発症したり、血液透析に至る症例も散見され、同世代の方が大きな合併症をかかえている姿をみると、さみしい気もしてきます。大きな合併症をつくらず、療養できないものでしょうか?
 慢性疾患は本人の生活習慣・社会的背景・価値観など、いろいろな視点からとらえる必要があると思います。病態の改善には、思考・行動修正が必要と感じる場面もありますが、築き上げてきた生活習慣・価値観を変えることは非常に難しいところです。予防第一であり、行動変容のきっかけをつくれないものか、いろいろ考え模索しています。
 そこで運動に着目してみることにしました。外来で「10分でも歩くといいですよ」と勧めてみても、実際に行動する人は多くはないように思われます。我々自ら率先して運動したら、何か変わるかな?と考えていたところ、友人から長岡丘陵公園リレーマラソンを勧められました。42.195kmを複数人でリレーし完走する競技です。
 さっそく昨年の春、当院スタッフ、立川綜合病院と長岡赤十字病院の医師・看護師らに参加してもらい、1チーム10人で申し込みました。思いつきではじめたこともあり、練習したとたんに膝を故障し歩けなくなってしまいました。なんとか大会前には復活でき、当日、完走することができました。協力してくれた方々との絆も深まり、充実した大会でした。その後、大会記念Tシャツ(みんなのサイン入り)・完走証・写真などを院内に展示しました。患者さんたちとの会話のネタになり、自分のしていることなど以前より話してくれるようになった気がします。
 今年も5月26日に同大会が開催され、2チーム20名で参加しました。当院スタッフの子供や長岡赤十字病院の看護師・リハビリスタッフらにも力を貸してもらいました。当日は晴天で気持ちよく走れ、2チームとも完走でき、満足感いっぱいの大会でした。特に子供の頑張る姿は、すがすがしく印象的でした。そして終了後の飲み会の楽しいこと!大会への参加の目的が、自分たちの楽しさに変わった気もしますが、来年も参加できたらいいなと考えています。
 また、昨年の秋には、「越後長岡ツーデーマーチ山古志&信濃川ウォーク」に子供達・友人らで参加してみました。信濃川ウォークのみの参加でしたが、ウォーキングもやってみるとなかなかきつい……参加者は年配の方が多いのですが、足腰の強さに驚愕しました。患者さんらも参加しており、歩きながら話をすることもありました。ウォーキングは一緒に歩く人とゆっくり話をする時間があります。最近、こんなに時間をかけ友人らと話すこともなかったため、非常に貴重な時間となりました。これまた終了後の飲み会、最高でした!
 最近は走る習慣がつき、自分自身もかなり活動的になったように感じます。以前できなかったことが、できるようになると自信も高まり、モチベーションの向上につながっていきます。つい先日、ある糖尿病患者が来院されました。定期的に治療していますが、なかなかよくならない状態が続いていました。ところが今月は非常に血糖コントロールがよくなっていました。看護師に最近走りはじめたんだよ、と語っている姿をみましたが、ちょっと笑顔がありいい顔をしていたのが印象的でした。私たちが歩いたり走ったりすることが、直接、患者さんたちに影響しているとは思えませんが、会話が増えたことは間違いありません。何かを感じてもらえたらうれしく思いますし、活動的に生活して欲しいものです。これからも地域のイベントには積極的に参加していきたいと思っています。
 診療所に勤務してからは、いろいろな立場の方と接する機会が増えました。自分ではわからないこと・感じられないことなど、他の方からお話を聞くと非常に参考になります。医院は我々だけでやっているのではなく、事務、看護師、薬剤師、薬局経営者、卸業者、製薬会社、医院・病院や介護関係の方々など、いろいろな人の助けや連携によって成り立っていることを改めて痛感しています。院長含め、いろいろな人に手助けしてもらえる環境に大変感謝しています。自分のできることは限られますが、自分なりにできることを社会に貢献していけたらいいなと考えています。よろしくお願いします。

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英語はおもしろい〜その32  須藤寛人(長岡西病院)

※発音記号は、省略しました。ご了承ください。

 aggravate さらに悪化させる
 今回は、痛み、症状、病状、容体、経過などが「悪くなる、一層悪くなる」などという時に使う英語について見てみよう。一般的な表現は、become worse、worsen(ex. The function may worsen during pregnancy.)(名詞「悪化」:worsening)、become more severe、become more serious などであろう。
 医学的使用や文章用語として、この意味の最も適切な英語は、例文は後に示すが、(他動詞)"aggravate" であろう。語源は ラ.aggravatus の過去分詞 aggravare = to make heavier, from ad- + gravare to burden, from gravis heavy。即ち、「重い」から、「……に負担をかけるの意」が原義となる(Merriam-Webster 大辞典)。現在では、一般的には(負担・罪などを)「いっそう重くする」などと訳されるが、病状などの医学的な使用においては「さらに悪化させる」である。
 aggravate の第二の意味は、M-W 大辞典の "usage" の補足説明に、「持続的な、あるいは悲しみの刺激で、不快や怒りを生じさせる」の意味として用いられると書かれており、"This letter comes to aggravate me a thousand times worse." の例文が載っている。
 名詞は aggravation であるが、この一般的な使用は上記したような第二の意味、「腹だたしさ」、「いらだたせるもの」に使用されることが多いと書かれている(M-W 辞典)が、実際は医学的に、(病気の)「悪化、増悪」としてよく使われる。また、同辞書には "aggravating" は "annoyance" の意味に限って用いられるようであると書かれているが、aggravating の共起検索例文をみても実に多くの用例が(形)「悪化させた」という意味で使用されていることが分かる。
 aggravate、aggravated、aggravating、について以下に共起検索より選別した例文を示す。"Atherosclerosis often accompany and aggravate renal disease."、"Inflammatory disease symptoms are aggravated by ongoing repeated stress."、"in order to avoid aggravating secondary injury"、また、aggravation の使用例は、"aggravation of neuronal damage"、"aggravation of inflammatory symptoms"、"There is no apparent aggravation to osteoporosis." などである。
 次ぎに、deteriorate、deterioration について見てみる。deteriorate は(他)「(質を)悪くする、悪化する」;(自)「悪くなる、悪変(低下)する、脱落(退廃)する」である。語源は ラ.deterior worse, from de down, away;-ter two + -iror(suffix)で、「さらに悪化する」の意。研究社英和辞典では「(健康が)衰える」と訳し、例文は "The condition deteriorate rapidly." が示されている。医学英語活用辞典(篠塚規訳)には「(病態、容体が徐々に悪くなる」と明瞭に書かれてある。
 共起検索での例文を示すと、"Nutritional status deteriorated significantly during the study period."、"She was deteriorating despite maximal conventional therapy."、"deteriorated and died after a clinical course"、"with deteriorating kidney function"、"deteriorating liver function"、などが挙げられる。私の印象としては、deteriorate の方が aggravate より「より病状が重篤に変化するとき」に用いられる感じがする。
 名詞 deterioration「悪化」についてみると、Doland's medical Dictionary には "mental deterioration"、"emotional deterioration" が載っている。共起検索の300例について見たところ、"clinical deterioration"、"neurologic/neurological d."、として使われた例が最も多く(各20例)、次いで "functional d."、"progressive d."、"cognitive d."が多かった。実例文"acute renal failure or acute deterioration of chronic renal failure"、"Hemodynamic aberrancies may cause severe clinical deterioration."、"Kidney function deterioration may be a consequence of cardiac……"を示したい。派生語 deteriorative は = deteriorating。Deteriorator は「悪化者、堕落させる者」。
 最後に、exacerbate、exacerbation についてみる。exacerbate は「(苦痛・病気・恨みなどを)さらに悪化させる、増悪する、激化させる」と一般の辞書には載っている。ラ.exacerbare, from ex(強調)+ acerbus harsh bitter(にがい),unpleasant, from acer sharp で元々は人の感情を「激させる」、「いらだたせる(embitter)」の意からとのこと。他動詞で、"Her condition was exacerbated by lack of care." の例文が挙げられている。
 名詞 exacerbation は「(病勢の)悪化、再燃、増悪シューブ;(悪感情などの)激化」で、医学用語には日常的に用いられるが、どちらかというと文章的用語と言えるかも知れない。共起検索には、"Caffein administration exacerbated liver damage."、"The effect is exacerbated by high temperature."、"Symptoms are exacerbated with sporting activities……"などが示されている。そのほか、exaggerate「誇張する」などに使われる語も「(病気を)悪化させる」という意味で使われる。decline自動詞「悪化する」、「低下する」は、ややインフォーマルであるが、病状経過悪化の時に用いられる一般用語である ex. "Voluntary activity declined due to weakness."。病状が生死にかかわるほど悪化、重篤化した時は "critical"を使用したほうが適切であろう。(続く)

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ジューンベリーの大収穫  郡司哲己(長岡中央綜合病院)

 「きょうはYさんを電話でお庭に御招待。ジューンベリーを収穫してもらったの。味見でおいしいって。よく熟して赤くなったものだけ、家族人数分いただくねと摘んで帰ったわ。」と夜の食卓の家人のなごみの話題です。いまふう雑談力ありです。
 「喜んでもらえてよかったね。ブルーベリーも熟したら、小鳥に食べられる前に、今年もまた採りに来てもらってね。」とわたし。

 小さな木の実を数個ずつみんな平等にね、って数える日頃から几帳面なYさん(家人のお友達、ご近所の女性)のお顔が目に浮かびます。
 英語で6月、ジューンと言えば? ジューンブライド、6月の花嫁が有名ですが。……我が家ではジューンベリーですな、……6月のベリー。
 お菓子やジャムなどでよく見かけるベリー類はブルーベリー、ラズベリーが代表。我が家でも育てておいしくいただいております。ラズベリーは鉢植、丈夫なブルーベリーとおまけのブラックベリーも地植です。ところでベリーという単語、ぴったりの日本語訳がなく、辞書を調べると「液果」に分類。液果とは多肉質で水分が多く、軟らかい果実のことだそうで、ミカン・トマト・ブドウなども含む幅広い概念。ふーん、使わなそうな言葉ですよね。
 ○○ベリーという名前でも、調べるとけっこう他人同士なんですね。ラズベリーとブラックベリーはバラ科キイチゴ属で、いわゆる木苺。ブルーベリーはツツジ科スノキ属。ちなみにジューンベリーはバラ科ザイフリボク属だとか。

 さて話題のジューンベリーです。昨秋に園芸に興味のあるYさんと家人のふたりで、見附のN園芸店で苗木を購入。各自の庭に植え付けたのです。ところがY家の苗木はこの冬の大雪で半分の高さで折れ、ほとんど花が咲かなかったそうです。
 一方我が家では、苗木を軒先すぐの地面(他の樹木の根張りが少ない)に植え込み、無事に根付きました。なんといっても冬は2メートルの雪に埋もれる庭です。家人とふたりで板木も使用して、念入りな雪囲いをしました。この苗木には家人も熱意がこもっていました。えこ贔屓の甲斐あり、枝折れもなく無事に冬を越し、まだ丈の低い木なのに、春は白い花を沢山咲かせました。
 そして6月、次々と青い実が赤く色づき熟してきたのでした。その名前にたがわず、立派、立派。

 翌日はまた別の小母さんが散歩途上に目ざとく果実発見。「おめさん、なんだね、そのきれいな実は?」家人は、庭に招き入れ、10個ほど食べ頃の色の実を選んで、振る舞ってあげたとのことです。「うまいね。……そんなしゃれた名前、おぼえられねーね。」
 その午後……小母さん、お礼にと山菜(ミズとフキ)をもって訪れたそうです。いずれもその後の皮むき、すじ取りが手間がかりなやつで、家人は悲喜こもごも。
 「ジューンベリー人気はすごいね、よかった。手間のかかった、このオカズもおいしいよ。」とわたし。
 ミズのおひたしと、フキのきんぴら炒めとは、その日の夕食のおいしい酒のつまみになりました。

 もともとは数年前、園芸趣味の白根の叔母が庭に植えたジューンベリーの木でした。家人がすっかり気に入り、我が家にも……。北米原産ですが、暑さ、寒さに強く、日本でも育てやすい果樹の筆頭クラスで人気上昇中ということであります。

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