健康情報コーナー 最終更新98.7.31
市政だより(平成3年〜6年)掲載「成人病にならないために」より 市政だより(平成8年〜9年)掲載「母と子の健康づくり」より その他 49.乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症予防(98.7.31掲載)
成人病でやっかいなことは、かなり病気が進行しないと自覚症状が出てこないことです。そこで、少しでも早く病気の始まりを見つけ、対策を立てることが大切です。特に、がんの場合には、早いうちならほとんど治すことが可能ですから、検診を受けることが絶対必要となります。 現在、ひろく職場検診や住民検診が行われていますが、住民検診の受診率は、まだそう高くありません。長岡市の場合、平成7年度の受診率は、40歳以上の成人を対象とした基本健診が27.2%、胃がん健診12.9%、子宮がん検診9.5%で、いずれも全国平均を下回っています。 受診しない理由は、「具合が悪くない」「忙しい」「忘れた」「めんどうくさい」「病気が見つかるのが恐い」などがあげられています。 少しでも住民の皆さんが受診しやすいように検診にはいろいろと気が配られています。せっかくのチャンスを大いに利用しましょう。 また、検診を受けても、その結果を放置している人があります。中には半年以上もたって、かぜで受診したついでに結果を見せに来る人や、2年分の結果をまとめて持ってくる人もいます。これでは検診の意味はありません。どうぞ検診の結果を無駄にしないで下さい。 長生きは人まかせではできません。健康は自分がつくり、自分で守るものです。検診で日ごろから健康のチェックを心がけましよう。
1.長生きするにはまず健診!
血圧が収縮期(最高)140以上、または拡張期(最低)90以上のいずれかを示すときに「高血圧」と呼んでいます。
高血圧の人のおよそ80〜90%は他の原因がなくても高血圧になる素因をもった人で、ほぼ40歳前後から血圧が上昇することが多く、これを「本態性高血圧」と呼びます。残りの10〜20%は腎臓病やホルモンの異常など他に原因があって血圧が高くなる人で、これを「二次性高血圧」と呼びます。
いずれにせよ、高血圧をそのままにしておくと、やがて心臓・腎臓・脳などに障害がおこってきます。では、健康診査(健診)を受けて高血圧といわれたらどうすればよいのでしょうか?
血圧は、一日のうちで驚くほど高くなったり、低くなったりして変化していることがわかっています。精神的に緊張したり、心配ごとがあったりすると血圧は一時的に高くなります。また、仕事の最中や運動をした後にも血圧は高くなります。このように血圧はいろいろな原因で一時的に高くなることが多いのです。
ですから、健診で一回高血圧といわれても、必ずしも心配するような病気があるとは限りません。大切なことは、いつも高血圧の状態であるのかどうか、他の病気が原因で高血圧となっているのかどうかを早く確かめることです。放置せずに、必ずもう一度診てもらうことが肝要です。
健康診査(健診)の際に必ず行う項目の一つに尿検査があり、たんぱく・糖・ウロピリノーゲンなどが調べられます。今回は、たんぱく尿をとりあげてみました。
尿は腎臓でつくられ、いったん、ぼうこうにためられてから体外に排せつされます。腎臓は、体内の余分な水分や老廃物を尿として排せつするほかに、造血ホルモンをつくったり、血圧を調節するなど大切な働きをしています。腎臓に異常が起こると、多くの場合、尿にたんぱくが混じってきます。このたんぱくが混じった尿を「たんぱく尿」といいます。
健診でたんぱく尿が発見されたら、まず腎臓に異常があるかどうかを疑ってみなければなりません。しかし、腎臓に重い病気がなくても、激しい運動をした後や、強い精神的ストレスがあったり、入浴をした直後などで一過性のたんぱく尿がみられることがあります。また、若い年代の人や、比較的やせ型の人が長く起立位をとった後にもたんぱく尿がみられることがあります。
したがって、健診で一回たんぱ〈尿があるといわれても、必ずしも重い腎臓の病気があるとは限らないわけですが、そこで放置しておかずに早く精密検査を受けて腎臓に異常があるかどうか診断してもらうことが必要です。健診の尿検査は、腎臓病の早期発見のための大切な手段なのです。
職場健診、住民健診、ドック健診などで尿の潜皿反応腸性(尿に血が混じっている)と通知された経験のある人は少なくないと思います。ある統計では、男性で4.5%、女性で11.7%に陽」性反応がみられたとの報告もあります。
潜皿反応に現在使用されている方法は、極めて鋭敏な検査法で、これによって肉眼では見えない顕微鏡的な皿尿の有無も知ることができます。
皿尿には、尿が腎臓でつくられるときに血液が混入する腎性の皿尿をはじめ、尿が腎臓内、尿管、膀胱、尿道を流れるときに血液が混入する場合や、外陰部に付着した血液が混じってくる場合などいろいろな原因があります。特に治療の必要のない偶発的な血尿であることも多いのですが、精密検査の結果、全身の出血性疾患、内科的腎疾患、尿路の腫湯、結石、炎症性疾患などの成人病が発見されることもしばしばです。
健診で尿の潜皿反応をチェックするのは、実はこうした成人病の早期の発見と治療の糸口をつかむためなのです。
潜血反応陽性の人は、全員精密検査を受けることが理想ですが、特に腎疾患の既往症のある人、潜血反応とともに蛋白尿や糖尿のみられる人、潜血反応陽性が続く人、1回でも目で見て分かる血尿があった人、原因不明の発熱、腹痛、腰痛や膀胱部の不快感、頻尿、排尿痛などの勝脱症状や排尿障害のある人は、ぜひ一度精密検査を受けられることをおすすめします。
最近よく相談を受けることの一つに、薬をどう飲んだらいいかということがあります。いろいろな診療科にかけもちでかかっている方も多いようで、それぞれの診療科から何種類もの薬を処方されることがあるからです。
たとえば、脳外科と耳鼻科と整形外科の3か所にかかっていて、それぞれから3種類ずつの薬を処方されている方がありました。
9種類の薬を全部飲むのはこわい気がするし、どの薬を服用したらよいのか迷い、相談に来られました。
処方された薬の中には、作用の似かよっている薬もありました。そこで、病状をよく聞き、4種類に減らすことをアドバイスし、次に受診するときには、そのように申し出ることを勧めました。
このような例が、最近ことに目につきます。一人でいくつもの病気をかかえ、病院に通っている患者さんにとっては不安なことです。
そんなときに頼りになるのは、家庭医です。高度の専門的な知識はともかくも、長い経験から総合的な判断力は優れています。
健康面での相談はもちろんのこと、例にあげたような薬のことについても気軽に相談にのってもらえるような家庭医を持つことは、これからますます大切になります。
現代社会では、機械文明の恩恵を受けて運動が不足する一方で、グルメ志向が強く、体内で余ったエネルギーは脂肪として貯えられ、肥満が起こります。肥満した人には、糖尿病・高血圧症・動脈硬化症(脳卒中や心筋こうそく)・高脂皿症などの成人病やその予備軍が多数みられます。
こうした肥満の解消には、食事制限だけでは不十分で、運動によってカロリーを消費することが大切です。
適度の運動を続けることにより、生理的運動能力の退行(老化)を8〜9年阻止できるといわれ、筋力や心肺機能の強化、ストレス解消、肥満や成人病、また中高年女性に多い骨粗しょう症の予防やボケ防止など、さまざまな効用が知られています。
以前、ジョギングがブームになったこともありますが、現在は、ケガが少なく無理なく楽しく長続きする運動として、歩くこと、特に少し汗ばむくらいの遠歩が勧められます。健康の維持と体力の増強のためには、1日1万歩が目標とされますが、マイカー通勤のサラリーマン、主婦、自営業の方などの1日歩数は4千歩くらいで、運動不足が目立ちます。
遠歩をするときの留意点をあげてみます。
(1)満腹時よりは空腹時に行うこと。寒い日は保温に、暑い日は発汗に注意。 (2)遠歩は週休2日くらいにして、体調や天候によっては休む勇気も大切です。 特にきちょうめんな血液型A型の方はご注意を。 (3)靴は、少し高価でも自分に合ったものを選ぶこと。
「老化は足から」といわれ、「二本の足は二人の医者」ともいわれます。適度な運動は、健康・長寿の秘訣です。
日本人の2%に胃かいようがあり、治っても再発を繰り返す胃かいよう症の人が8%強いるとのことですから、長岡市では常時3,775人の胃かいようの人がいて、再発に悩む人が15,600人もいることになります。
最近の治療法や薬剤の進歩は目覚ましく、正しく治療すれば、痛みもすぐとれ、早期に治癒します。しかし、甘く見て、好き勝手しすぎると痛い目にあうこともあります。何度も胃かいようを繰り返すうちに痛みにも慣れ、薬もほとんどのまず、またちょっと痛み出したからと久し振りに来院、「痛い時には大事にすること、アルコールは厳禁」と帰したその日に、湯上がりのビール2本で七転八倒、かいようの穿孔(せんこう)かと、すぐ病院にお願いして手術となり、幸い事なきを得た例がありました。
治療の基本は、ストレスを避け、生活を安定させること、酒・たばこ・コーヒー等の晴好品や刺激物を控え、指示通りに服薬することが大切でしょう。治療中何度か検査が必要ですが、面倒だから、苦しいから、薬さえあれば楽になるからと嫌がる人がいます。敵の情報の重要さは、先の湾岸戦争でも実証済みで、我々もかいようの病態、病期に合わせて処方を変えますし、数あるかいようの中には修練を積んだ目で見てもがんと紛らわしいものもあります。また、長期間観察していたかいよう症の胃の他の部位に、早期がんが出てきたこともあります。必要最小限に大事な検査をお勧めするのですから、進んで受けてください。
酒は百薬の長といいます。つきあいを滑らかにし、その場の雰囲気を盛り上げ、一人で飲んでもストレスの発散に役立ちます。
飲酒は、動脈硬化を防ぐHDLコレステロールを増加させるので、致死的な心筋こうそくは、飲まない人より飲む人の方に少ないという報告もありますし、ビールやワインなどの発酵酒は、胃液やすい液の分泌を冗進し、消化を助けるともいいます。
しかし、過ぎたるはなお及ばざるがごとしで、アルコールの大量摂取は中性脂肪を増加させ、動脈硬化を促進し、高血圧の頻度も増します。高濃度大量のアルコールは胃壁の粘膜を破壊し、びらんやかいようをつくります。
また、一日80mlのアルコール(日本酒で3合分)を10年以上飲み続けると、高い率(特に女性は8割)で肝硬変を来します。すい炎を起こしたり、胆石発作を誘発したりと悪い影響も多いようです。
せっかくの神様の贈物ですから、お酒は末永く楽しみたいものです。現在のところ、医学的にお勧めできる一日のアルコール量は30ml、日本酒1合強、ウイスキーのダブル1杯強、ビールなら大びん1本程度です。
ついでに、アルコールlmlで7キロカロリーあります。ウイスキーのダブル1杯のカロリーは、ごはん1杯分です。糖尿病の方、肥満の方はご注意ください。
今回は便と便通の話です。おいしく食べた物も、消化管で吸収され、形を変えて排せつされます。特有な色や臭いから不潔なものと毛嫌いされますが、どうか顔をそむけずご一覧下さい。
食物によって便の色も違います。肉・魚が多ければ黒褐色に、野菜・牛乳が多ければ淡黄色に傾きます。服用する薬でも赤みが増したり、鉄剤では黒色便になったりします。
消化管出血による黒色便、タール便、血便、炎症性腸疾患による粘血便、閉鎖性黄だん時の白色便、消化不良の脂肪便と、色からだけで貴重な情報が得られます。形も有形か水様か、太いか細いか、あるいは兎糞状などとあります。平素から観察する習慣をつけるとよいでしょう。
日に何回も排便があるといって受診される人がいます。診察して他に問題がなければ異常なしとお話しします。
一般に「下痢」とは、腸管内水分の分泌穴進、吸収阻害、通過時間の短縮などにより、便中に水分量が異常に多くなった状態です。一方「便秘」とは、排便頻度の減少により種々の自覚症状を伴った状態をいいます。
便と便通に変化があったとき、特に腹痛・食欲不振・腹部膨満・貧血・ヤセなどの症状があれば、速やかに受診することをお勧めします。
しかし、病気の初期には自他覚症状に乏しく、大腸がんなどでは大事に至ることもあります。そこで、長岡市では平成2年から胃検診と一緒に検便法による検診を行っており、早期発見に大きな成果をあげています。すすんで受診してください。
がん・心臓病・脳卒中・糖尿病などの、いわゆる成人病(生活習慣病)は、本来はおとなの病気ですが、最近では子どもの成人病(生活習慣病)が増えています。特に問題なのは、早くから成人病(生活習慣病)になる成人病(生活習慣病)予備軍が大変増えていることです。
小児成人病(生活習慣病)と呼ばれるものには3つのグループがあります。第1群は、成人病が既に子どもの時にはっきりしているもの、例えば糖尿病、心筋こうそく、胃かいようなどです。第2群は、潜在している成人病で、動脈硬化がすでに始まっているものです。そして、第3群は、成人病の危険因子(肥満・高血圧・高コレステロール血症)を持っている子どもで、このグループが成人病(生活習慣病)予備軍と呼ばれています。
コレステロールについて日米を比較した最近の研究によると、成人ではアメリカの方がずっとコレステロール値が高いのに、20歳末満の若い人では逆に日本の方が高く、しかも年々増加しています。また、肥満については、この20年で2〜3倍も増加し、小中学生の5〜10%が肥満していることになります。
この原因としては、動物性脂肪の多い食事、食べ過ぎ、偏食、不規則な食事、運動不足、過保護などがあげられます。このような状態が続くと、いまの子どもたちの寿命は10年以上短くなる可能性が
あります。そのうえ、夫婦1組あたり1.53人という子どもの数では、日本の将来が大変心配になります。
対策としては、まず子どもの時から正しい食習慣を身につけることです。そして、規則正しい生活・運動などを親子で一緒に考え、実行することが大切です。
検査で尿に糖が出た場合、二次検査としては、尿の再検査ではなく、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)の測定−ブドウ糖負荷試験−が必要となります。
これは、ブドウ糖液を飲んで2時間後までに前後4回採血して調べるもので、血糖値により「正常型」「糖尿病型」そのいずれにも属さない「境界型」と、3つのタイプに診断されます。
空腹時に血糖値が139mg/dl以下で、ブドウ糖液を飲んだあと2時間の値が、120〜199mg/dlの範囲にあるものが境界型となります。つまり境界型は、正常型に近いものから限りなく糖尿病に近い灰色の人まで非常に範囲の広いグループで、尿糖陽性者の中で最も多くみられるものです。
これは「境界型糖尿病」とも呼ばれますが、“糖尿病”そのものではありません。いわば糖尿病予備軍で、症状のないまま大部分が放置されているのが現状ですが、数年後に明らかな糖尿病になる人も少なくありません。
境界型の人で、家系に糖尿病のある人、肥満している人、検査で血圧・血中脂質・尿酸値などに異常のある人は、糖尿病への移行の危険性がより大きくなります。また、このグループでは、動脈硬化症(心筋こうそく・脳卒中など)が進行しやすいことが知られています。
糖尿病への移行を防ぐ有力な手段は、アルコールや間食のとりすぎに注意すること、バランスのとれた食事をとること、そして必要な運動を続けることです。そうすることで、正常型へ改善されることも少なくありません。
糖尿病は、遺伝的な素質に過食・過飲・運動不足など日常生活のゆがみが重なって起こる病気で、習慣病とも呼ばれています。近年、食べ物の氾濫とともに激増し、10年前の長岡市の精密検査では、40歳以上の5%に認められました。
口が渇く、水を多く飲む、尿が多い、食べてもやせる、全身がだるいなどが主な症状ですが、現在では多くの方が地域や職場の健康診断で無症状の早期に発見されています。
早期に発見された軽い糖尿病は、適切な治療と正しい自己管理(食事・運動など)があれば、何ら恐れる病気ではありません。しかし、ゆがんた日常生活が改善されなかったり、必要な治療が徹底されなかったりすると、そのツケは糖尿病に特有な合併症として、社会生活の大きな支障となり、生命が脅かされることになります。
成人の失明の主な原因は糖尿病ですし、腎臓の障害で血液透析を受けている方々の中で糖尿病の患者さんが占める割合が急激に増加しています。
また、中高年の生命を直接脅かす三大原因のうち、心臓病・脳卒中の多くは動脈硬化症によるものです。そして、糖尿病患者では、早期から動脈硬化症がより強く起こることが知られています。
このように糖尿病の経過には二面性があり、治療の最大目標は合併症を防ぐことにあります。そのためには、病気を正しく理解し、適正な日常生活を生涯継続するという強い意思が必要です。
また、最近は、小中学生の成人病の増加が危惧されており、本人だけではなく、家族ぐるみで病気の治療、予防に取り組む姿勢が望まれます。
がんの原因は、まだよくわかっていませんが、その予防のために、日常生活で注意することはいくつかあります。
まず、からだの調子を整えるため、ストレスを発散させ、軽い運動を心がけます。そして、十分な睡眠をとり、心身の疲労回復をはかることが大切です。
さらに、からだの中に発がん物質をとり入れないように気をつけることです。水や食物にも徴量の発がん物質が含まれている可能性があります。がん発生のリスク(危険)を分散させるためにも、偏りのない食事をとることです。
たばこも吸わないにこしたことはありませんが、どうしても吸いたいという場合でも1日10本以下にすることです。たばこの煙には、濃い発がん物質が含まれています。たばこを吸う時には、ほかの人の迷惑にならないようにしたいものです。
日常生活に気を配ってもなお、体質的にがんになりやすい方もおられます。家系的に、まわりにがんの多い方はもちろんのこと、そうでない方でも、定期的な検査を受けることも大事な予防策の一つです。早期の発見は、がん対策の第一歩です。
胃がんは、日本人がかかるがんのうち最も多いもので、がんで死亡する人の約4分の1を占めています。
胃がんの発生率は、男性の方が女性より少し高く、同じ日本でも地域によって異なっており、東日本の日本海側で高く、西日本で低くなっています。この理由としては、食事の影響、例えば塩分のとり過ぎ、米飯にかたより過ぎた食事などがあげられます。
胃がんは、がん細胞の広がり方によって、「進行胃がん」と「早期胃がん」に分けられています。胃の壁は内側の表面から粘膜・粘膜下層・筋層・漿膜と4つの層に分かれており、がん細胞が粘膜と粘膜下層だけに見出されるがんを特に早期胃がんと呼んで区別しています。というのは、この時期に発見し、治療すれば、胃がんをほぼ完全に治すことが可能だからです。
早期胃がんは、ほとんど症状がありませんが、現在発見する方法として、レントゲンによる胃の集団検診と内視鏡による精密検査の組み合わせが最も広く用いられています。
平成5年度の新潟県内の集団検診の結果では、発見された胃がんの58%が早期胃がんでした。これに対して病院などの外来で発見される早期胃がんは20数%にすぎません。
このように胃がんを早く発見し、治療すること(二次予防)は重要ですが、そもそも胃がんにならないようにすること(一次予防)がもっと大切です。そのためには、塩分の少ない食事をとり、緑黄色野菜や牛乳を十分にとることです。また、たばこをやめ、お酒をほどほどにすることも心がけたいことです。
がんは、早期に発見し、治療することが大切です。今回は、肺がんを早期に発見できた例をご紹介しましょう。
Kさんは62歳の主婦です。たばこは吸いません。ですから、肺がんは無関係の病気と思っていました。ところが、住民検診の胸部エックス線検査で異常が疑われました。精密検査の結果、右の肺に約1.5cm大の腫瘍が見つかりました。手術を受けたところ、「腺がん」という種類の肺がんでした。その後、5年がたちましたが、再発や転移もなく、健康に過ごしています。
Tさんは54歳の自営業の方です。毎日30本もたばこを吸うヘビースモーカーです。かぜをひいてから咳が続き、タンの中に血が少し混じりました。胸部エックス線検査は異常なしでしたが、タンの検査で異常が疑われました。そこで、気管支ファイバースコピー(カメラ)による検査を受け、左の気管支に早期の「局平上皮がん」が見つかりました。手術後3年がたちましたが、経過は良いようです。
肺がんは、がん細胞の種類やできる場所により、早期の発見や治療がむずかしい場合もあります。KさんやTさんの例は、早期に発見された幸運な例です。手遅れにならないために、中年を過ぎたら年に1回は胸部エックス線検査を受けましょう。そして、たばこを吸う人は、タンの細胞診検査も合わせて受けることをお勧めします。
食生活の欧米化により、大腸がんは年々増えていますが、早期に発見されればほぼ100パーセント治ると言ってよいでしょう。
大腸は、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸からなる長さ2メートルくらいの管です。このうち、がんのできやすい場所は、直腸(50〜60%)、S状結腸(20%)、盲腸(10%)で、直腸に最も多く発生していますが、最近ではS状結腸がんが増えています。これは高脂肪食の影響と言われています。
しかし、高脂肪食をとっても、野菜や海草を多く食べる国では大腸がんにかかる人が少ないことが知られています。高脂肪食をとったときは必ず野菜などの繊維質もとるよう心がけましよう。
大腸がんの症状としては、便秘と下痢を繰り返すとか、いくつかの自覚症状があげられますが、初期には血便が唯一の自覚症状です。自覚症状のない時期にも、肉眼でわからない血便が出ます。
ですから、早期大腸がんの発見には、この血便の検査(便の潜血反応)が非常に有用です。長岡市でも、胃の検診と同時に便の潜血検査を行っており、早期発見に大きな成果をあげています。ぜひ、年一回は便の潜血検査を受けましょう。
食生活の欧米化によって、日本でも乳がんが増えています。乳がんには毎年約2万人がかかり、約6干人が死亡しており、死亡率は子宮がんを抜いてきています。年齢別では、40歳代の発生率が最も高くなっています。
一般に乳がんになりやすいといわれているのは、
?@太っている人・高脂肪食をとっている人 ?A遺伝因子として、母・姉妹・祖母などが乳がんにかかった人 ?B30歳以上で出産回数が少ない、あるいは出産経験のない人 ?C初潮が早かった人、閉経の遅かった人 などです。
がんに対しては、早期発見・早期治療が重要です。乳がんは自分で発見できる唯一のがんであり、早期発見のチャンスが非常に大きいと言えます。定期的に自分のおっぱいを自分で調べる自己検診を実行し、何かいつもの状態と違って「おかしいな」と感じたら、すぐ医師に相談しましょう。
乳がんの症状で一番多いのは「しこり」で、90パーセントの人が自分で気づいています。「しこり」があっても、大部分は乳腺症などの良性疾患で、乳がんである確率は数パーセントです。たまたまがんであったとしても、直径2センチメートル以下の早期乳がんの状態で発見されれば、比較的簡単な手術で治すことが可能です。気がついたら、恐れずにすぐ受診してください。
また、乳首から血の混じった分泌物が出たとか、乳首がただれたとか、皮膚にひきつれができたとかいったことも、乳がんの早期発見につながる大切な症状です。みなさん、日頃から自己検診の習慣をつけるようにしましょう。
最近は、一般家庭向けの血圧計が多数市販されており、家庭でも手軽に血圧が計れるようになってきました。でも、実際に血圧を計ってみると、変動が大きく、なかなかとらえどころがないものです。
血圧は、例えば120〜60というように2つの数字で表し、大きい方の数字120を「収縮期血圧」、小さい方の数字60を「拡張期血圧」と呼んでいます。収縮期血圧は正常な人でも一日の巾で60近い変動があり、高血圧の人では80くらいの変動になるといわれています。
この血圧の変動には、24時間を周期としたりズムがあり、睡眠中は低下し、目覚めとともに上昇し、食事・排尿・排便・運動などの身体的動きや哀しみ・不安・緊張といった精神的変化にも影響されます。高い血圧は、午前(特に10時頃)に見られることが多く、この時間帯には心筋こうそくや突然心臓死、脳血管障害の発作が多いことが知られています。
ですから、病院などの外来で計る血圧と家庭での血圧とでは、多少違いがあるのは当然のことかも知れません。実際、家庭での血圧は正常なのに、外来や健康診査ではいつも高血圧といわれる人がかなり見うけられます。これは、精神的緊張などが原因と考えられ、“白衣高血圧症”と呼ばれています。
家庭での血圧の測定は、できるだけ回数を多く、しかも時間帯を変えて行い、自分自身の血圧の変動の傾向を知っておくことが大切です。これは、血圧をコントロールしていくうえで非常に有用です。
もし、外来での血圧と家庭での血圧とがあまり違うようなら、測定法などをかかりつけの医師にチェックしてもらうとよいでしょう。
生き生きとした生活を送るためには、体中の血液循環(血のめぐり)を良くしておかなければなりません。血液は血管の中を流れています。血管がいたんでくると血液の流れが悪くなり、ひいては体の働きが悪くなってきます。
血管の異常の代表的なものに動脈硬化があります。血液の流れぐあいや、血液の成分に異常が起こると、血管の壁が厚く、硬くなっていきます。血管の壁が厚くなると、血液の流れるすき間は狭くなってきます。ちょうど水道管の内側にごみがたくさんたまって、水の通りが悪くなるのと同じ状態になります。
このような血管から栄養をもらっている臓器は、働きが悪くなりますが、はじめのうちは自覚症状のないことが多いのです。いよいよ血のめぐりが悪くなったり、血管がつまって血が通わなくなったときに初めて「発作」という形で症状が出てきます。心臓の血管であれば、狭心症や心筋こうそくとなり、脳の血管であれば脳卒中という症状が出てくるわけです。
動脈硬化の原因としては、高血圧・高脂血症(血液中のコレステロールや中性脂肪が異常に多い)・糖尿病などがよく知られています。このような病気のある人は、しっかり治療しておかなければなりません。治療の第一歩は、食事・運動・規則正しい生活リズムなどの生活習慣の改善です。
たばこは動脈硬化を著しく進めます。その程度は、高血圧症をほうっておいたのと同じくらいといわれています。また、体をよく動かして平素から血液循環をよくしておくことも大切なことです。
コレステロールは、体内の細胞の膜やホルモンの材料として、なくてはならないものです。しかし、本来は体の大切な栄養分であるコレステロールも多くなり過ぎると有害(毒)になってきます。
最近では、日本人の男性の26.8%、女性の34.7%が「要注意」以上の高いコレステロールを示しています(1990年循環器疾患基礎調査)。こうなった原因としては、食事内容が欧米化して肉・油・砂糖類が多くなってきたこと、産業や家庭生活の機械化によって運動量が少なくなってきたことがあげられます。
血液中のコレステロールが必要以上に多くなると、血管の壁にたまって動脈硬化を起こします。ただし、コレステロール中でも動脈硬化を予防するものもあることがわかってきました。これをHDLコレステロール(善玉コレステロール)といいます。
大切なことは、総コレステロールの量を正常にし、善玉コレステロールを増やすことです。そのために、ふだんの生活の中で次のようなことに注意しましょう。
まず、肥満をなくすことです。さらに、食事内容にも気を配りましょう。コレステロールは、たまごの黄身・魚のたまご類(すじこ、たらこなど)・肉・レバー(肝臓)などに多く含まれます。これに対して、魚肉や大豆製品は良い影響があるといわれています。極端にはしることは良くありませんが、魚・大豆を中心とする日本的な食事を見直すことも大切です。
少量のアルコールには良い作用もありますが、たばこは有害です。また、適度な運動は善玉コレステロールを増やし、動脈硬化を防ぐといわれています。
心臓に酸素や栄養分を含んだ血液を供給する血管を「冠動脈」といいます。冠動脈の病気(冠動脈硬化症)で血管が狭くなったり、閉塞したりした時に起こる病気が、狭心症や心筋こうそくです。これらを「虚血性心疾患」と呼びます。
これらの病気を起こしやすくする危険因子が、高血圧、たばこ、高コレステロール皿症、肥満、糖尿病などであることはすでによくご承知のことと思います。
かつては、日本人はヨーロッパやアメリカ大陸の人々に比べて虚血性心疾患は非常に少ないといわれていましたが、最近20〜30年間で次第に増えてきています。これには、私たち日本人が古くからとっていた食事の内容が少しずつ変化してきたことに原因がありそうなのです。
伝統的な日本人の食事は、米飯・魚類・野菜を主にとっていたのですが、最近徐々に肉類・乳製品を中心として脂肪分を多くとるようになり、欧米並みの食事に近づいてきました。それとともに血液中のコレステロールも徐々に増加していることがわかってきました。
肉類や乳製品は、もちろん欠かせない栄養源ですからバランス良くとることが必要ですが、ここで改めて古くからの伝統的な日本人の食習慣を思い起こしてみる必要がありそうです。塩分が多く、たんぱく質が少ないなどの欠点は改めながら、良い部分は残しておきたいものです。食卓でできる心臓病の予防法です。
脳卒中(脳血管障害)は、最近少しずつ減ってきているとはいえ、まだ最も多い成人病(生活習慣病)の一つです。この中には、脳出血・脳こうそく・くも膜下出血などが含まれます。
脳卒中は、いったん発病すると命を失うことが多い病気です。回復しても、手足がまひしたり、会話が不自由になったりするなど厄介な後遺症が残ることが多く、予防が何よりも大切です。
現在までに明らかになっていることとしては、血圧が正常の人に比べて、高血圧が長く続いた人の方が脳卒中を起こす率が高いこと、そして、高血圧の程度によっても差があり、重い高血圧の人ほど脳卒中が多いことです。
しかも、高血圧の人でも、長い間適切な治療を受けて血圧を正常に保っておくと、脳卒中になる危険性が少なくなってくることも確かめられています。
どうやら、脳卒中を起こしやすくする一番の悪役(危険因子)は、高血圧といえます。そのほかに、食事のかたよりすぎによる栄養不良や肥満、高コレステロール血症、糖尿病や心臓病なども危険因子といわれています。
脳卒中を予防するためには、ふだんから塩分のとり過ぎに注意し、過食や過労を避けるなど、高血圧を予防できるような生活習慣を身につけることです。さらには、高血圧や糖尿病などの疾病があれば、医師と相談し、根気よく適切な治療を続けることが大切です。
脳卒中は大きく二つに分けられます。一つは血管が破れて起こる出血(脳出血、くも膜下出血)、もう一つは血管がふさがって起こる脳梗塞(脳軟化症)です。
脳卒中は?@今まで元気だった人が突然発病する?A身体の片側に症状が起こるという特徴があります。例えば、急に右手、右足が動かなくなるというように。
これに反して、両手や両足が動かなくなるのは、脳卒中というよりは頸や腰の脊髄からくる症状と考えてよいでしょう。
また、発症すると治療はなかなか困難ですので、何よりも予防が大切です。ふだんから血圧に注意し、尿や血液の検査をこまめに行い、かかりつけの医師とよく相談することが重要です。自分の血圧やコレステロール値などをしっかりと覚えておくことが病気に関心を持つことにもなって有意義でしょう。
脳卒中で倒れた場合、昔は動かしてはならないといわれていましたが、それは誤りです。一刻も早く救急車で病院に運び、専門医の診断を受けることが大切です。
ぼけないためのワンポイントアドバイス
ぼけには治療法はありません。日常生活の中で予防しましょう。
・頭を使う(読書、日記) ・家に閉じこもらない ・趣味、スポーツ、ボランティア活動など楽しみや生きがいを持つ ・いつも人の立場を考え、気配りや感謝の気持ちを忘れない ・会話を絶やさず、喜怒哀楽を素直に表現する ・手指、足先をこまめに動かす
正月の屠蘇(とそ)から忘年会まで、一年中飲む機会には事欠きません。その上、接待酒などがあっては、全く肝臓の休まる暇もありません。
無理して飲み続け、高カロリーの宴会料理を食べていると、肝臓がどうなるかというのが今回の話です。
まず、食べ過ぎについてです。過剰な栄養摂取は、インスリンの過分泌を起こし、肝臓での脂肪合成を促進し、脂肪肝・高脂皿症を来します。
高脂皿症は、末梢組織への脂肪を沈着させて肥満を来し、組織でのインスリン感受性を低下させて高インスリン血症を招きます。また、脂肪肝も、肝機能を低下させて肝臓でのインスリン分解機能を弱め、高インスリン血症を来します。
つまり、過食を続けると肥満となり、高インスリン血症・高脂血症・脂肪肝の悪循環に陥るということです。
一方、アルコールの飲み過ぎは、肝細胞に障害を起こし、脂肪合成を高め、細胞内に蓄積して脂肪肝を来します。アルコールの代謝産物であるアルデヒドも肝細胸障害を起こします。
近年、アルコール消費量の増加に伴い、従来1割程度であった全肝硬変症におけるアルコール性肝硬変症の割合が3割を超えたとの報告もあります。
元来、軽症の脂肪肝は予後の良いもので恐れるものではありません。しかし、肥満・脂肪肝にアルコールの害が加わると、脂肪肝性肝硬変に至る危険が増します。
過飲・過食を慎み、適度な運動を心がけ、人生を楽しみたいものです。
時は元禄、一人のお侍さんが中山道を歩いておりますと、大きな松の木の下で、手ぬぐいでほおっかむりをした粋な姉さんが苦しんでおります。
お侍「いかがなされた」
女「急に差し込みが・・・」
お侍「それはきっと癖(しゃく:胆石の痛み)でござろう。癖によく効く熊胆を進ぜよう」
女「それはご親切に・・・」
お侍は熊胆を与え、澄みきった空を眺めながら、また歩き出しました。しばらくして、ふところが妙に軽くなっているのに気がつきましたが、後の祭りでありました。
最近増えている病気の一つに胆石症があります。日本人の胆石症は、以前はビリルピン結石という色素胆石が多数を占めていましたが、食事の欧米化が進むにつれてコレステロール胆石が多くなってきています。
日本における胆石の保有者数は、日本医療統計によると900万〜1000万人ともいわれています。すなわち、国民の7〜8%の人が胆石を持っている計算になります。
また、いろんな病気で亡くなられた方の解剖時の胆石保有率をみると、最近では16%の高率になっています。この割合は、女性の方、高齢者の方ではさらに高くなっています。
胆石の原因としては、遺伝(体質)・脂肪分のとり過ぎ・肥満・糖尿病・薬剤の影響などがあげられます。このうち、脂肪のとり過ぎや肥満は、個人の努力で防げます。
なお、胆石をお持ちの方は、てんぷらとうなぎだけは、お召し上がりになりませんように。胆石発作の約半分は、この2つの食べ物によって起こっていますから。
ここでは、胆石の治療についてお話ししましょう。
胆石の治療法は、最近の医学の進歩によりたくさんあって、医師もどれを選んだらよいか悩むほどです。
人間ドックなどで偶然に見つかるいわゆる「静かな胆石」は、定期的な検査を行えば、放置しておいても差し支えありません。しかし、しょっちゅう痛みを起こしたり、熱を出したりするような胆石は、さまざまな治療の対象になります。
胆石の内科的な治療法には、
(1)胆石を溶かす胆石溶解療法 (2)体外からの衝撃波による胆石破砕療法 (3)内視鏡を使って胆石を取り除く内視鏡的胆石除去法 などがあります。
このうち、(1)胆石溶解療法と(2)胆石破砕療法は、主として胆のうのコレステロール胆石に対して行われます。また、(3)内視鏡的胆石除去法は、もっぱら総胆管内の胆石除去に威力を発揮します。
胆石の外科的な治療法としては、大きな傷跡を残す手術法が一般的でしたが、最近では胆のうの胆石については、腹腔鏡という道具を使って、おなかにごく小さな傷跡を残すだけで胆のうを切除できる方法が開発され、これが主流になりつつあります。さらに驚くことは、この方法では、手術から退院までの期間が3〜7日と短いことです。
以上のように、さまざまな治療法が開発され、どれを選択するかは患者さんが決める時代になってきたと言っても過言ではありせん。
昔から医師の間では、胆石のできやすいタイプを「4F」と言ってきました。これは、英語の Female(女性の)、Forty(40歳代の)、Fatty (太った)、Fair(美人の)の頭文字を取ったものです。お心当たりの方は、ご用心のほどを。
痛風症は、一名“帝王病”ともいわれ、昔は帝王や貴族がかかる病気とされていました。しかし、最近は一般庶民の食生活も帝王なみになったせいか、成人病として登場してきました。
病名を見ても痛そうな感じがしますが、この病気では、尿酸という物質が体にたまり、足の親指の付け根の関節などが炎症をおこして赤くはれあがり、激しい痛みに見舞われます。これを痛風の急性発作といいます。
尿酸は、肉類などに含まれるプリン体という物質からつくられます。このため、肉食の好きな人・大酒家・肥満した人などがこの病気にかかりやすく、男性に多いのも特徴です。有名な力士が何人かこの病気で悩んでいるようです。
進行すると、体中に尿酸が蓄積し、骨や関節を破壊し、尿酸のかたまりである痛風結節という固い結節をつくります。合併症としては、腎障害、動脈硬化症やこれに伴う高血圧や心臓病などがあり、糖尿病や高脂血症の併発なども知られています。
ドックや健康診査で尿酸の皿中濃度が6mg以上になったら要注意です。血中尿酸を減らす良い薬も出ていますので、糖尿病のような厳重な食事療法は必要ありませんが、次のようなことを心がけることが大切です。
(1)肉類その他プリン体を多く含む食品を控える。 (2)過食を避ける。 (3)アルコール類を制限する。 (4)太りすぎに注意する。
骨が軽石のようにスカスカになり、骨折しやすくなる骨粗しょう症。高齢者人口の急増で深刻な問題となったこの病気の予防に、最近厚生省が積極的に取り組む計画を明らかにして、大きな関心を呼んでいます。
病的な原因を別にすれば骨粗しょう症は老化現象といえますが、高齢にもかかわらずカクシャクとしている人も多いわけで、遺伝や生活様式などの影響も考えられます。
骨粗しょう症は、閉経を機に急速に骨の密度が減少する女性の方が、男性よりかかりやすいといわれています。これは多分に性ホルモンの関与があるためです。もちろん男性にも起こりますが、その進み方はずっと緩やかです。しかし、油断は禁物。男性でも胃を切除すると消化吸収力が衰え、骨粗しょう症になる危険が増えることになります。
骨粗しょう症が直接命にかかわるわけではありませんが、ごくささいな転び方でも簡単に背骨や太もものっけ根の骨、手首の骨などが折れ、痛みのために寝たきりになったり、手足の動きが著しく不自由になったりします。せっかくの余生が台無しになってはつまりません。日頃から良質のたんぱく質やカルシウムの豊富な食物を摂ることを心掛け、少し早足で歩くなど適度な運動や日光浴などでできる限り予防しましょう。
現在では骨粗しょう症の程度を計る機器を備えた病院が増え、検診も行っています。利用して自分の骨の健康度を知っておくのもいいでしょう。
そして心身ともに健康で、文字通り気骨ある人生を全うしようではありませんか。
広い意味では、見鞘炎から腰痛症までもリウマチの仲間ということになっていますが、ここで述べるのは狭い意味のリウマチで、一般に慢性関節リウマチと呼ばれている病気のことです。
関節の滑膜という部分がこの病気の主な舞台です。
女性が男性の3倍も多くかかり、しかも20歳から50歳代の年齢層が60%以上を占めるので、まさに主婦の病気と言えそうです。したがって発病しても家庭のことに追われて、なかなか早期の治療に来られず、進行してしまう悲劇が少なくありません。
この病気自体は死病ではありませんが、手足や首などの関節が病変によって破壊されて体の不自由が増し、他の病気を合併して死に至ることが怖いのです。ただ全体の1%弱とされる悪性関節リウマチの場合、血管に炎症が起こって生命に危険を及ぼすことがあり、厚生省の特定疾患の指定を受けています。何しろまだ原因さえ明らかでないのでその治療も決定的なものはありません。しかし、免疫の何らかの狂いから生ずることは分かっています。
最近では、免疫を調整したり抑制したりする働きのある薬を使って、病気の進行を食い止める努力がなされています。すでに破壊された関節を装具や人工関節で置き換える手術も成果を挙げています。
日本リウマチ学会では、平成6年4月、早期リウマチ診断基準を発表し、リウマチの疑いのある患者さんに早め早めの対応を呼びかけています。何事も先手必勝です。関節痛などのある人は、一人で悩まずに、早めに診療を受けましょう。
足が冷えて眠れない、冷えると腹が痛む、夏でも靴下をはなせない…。成人女性(男性でもまれではありません)の多くが、このような冷え症に悩まされますが、冷えを訴えて受診されることはごくまれです。多くは、問診で初めて明らかになります。
冷え症は、自律神経機能の失調による血行障害が原因とされ、女性の更年期障害の中枢的症状で、冷えによっているいるな症状や病気が起きたり、悪化したりします。
東洋医学ではその原因をお血(おけつ)や水毒ととらえ、頭痛・頭車・めまい・動懐・肩こり・疲れやすい・手足がむくむ・生理不順など、さまざまな訴えのある方に、手足・腰などの冷えが高率にみられます。長い間の原因不明の痛みや体調不良が、冷えを治療することにより劇的に改善することは少なくありません。
近年、栄養状態や生活環境が良くなっていますが、“しもやけ”に悩んでいる方は少なくありま
せん。寒冷と深い関わりのある冷え症ですが、自律神経失調による症状ですので、つらい症状は季節を問わず現れます。
春、花冷えや木の芽の出る頃、夏は梅雨どきや冷房病など、最近は病気も季節感が失われています。
冷え症の治療は、東洋医学が最も得意とするものの一つですが、食事や生活習慣、環境の改善なども同時に必要です。
最近、テレビなどマスコミが更年期障害を盛んに取り上げます。これは長寿社会になり、日本女性がその人生の3分の1を閉経後に送るようになったことに関連しています。閉経は、以前は48歳前後でしたが、現在では55歳でも生理のある人がいる反面、45歳以前に閉経を迎える人もあり、その幅が広がってきているといってよいでしょう。
更年期障害は女性ホルモンのひとつ、エストロゲンの欠乏によって起こります。更年期障害かと思って婦人科を訪れる人が多いのですが、なかには他科の医師から「更年期障害だ」と言われて来院する人もいます。本人も、専門外の医師も、簡単に診断することは控えたいものです。
更年期障害の症状は、のぽせ、不眠などの精神症状、おりものとか性行為障害(萎縮性膣炎)、膀胱炎様症状、あるいは尿失禁などです。
治療としては精神安定剤、抗うつ剤、漢方薬、自立神経調整剤などがありますが、最近、ホルモン補充療法が脚光を浴びてきつつあります。
女性であるかぎり、避けて通れない道行なのですが、気の持ちようで症状が強くも弱くもなるものなのです。「自分で病気を作らないで」は、しばしば患者さんに言っている言葉です。明るく前向きに生活しましょう。
今回は、成人の鼻出血(鼻血)についてとりあげてみます。
原因については、大きく分けて3つあります。第1に、白血病、血小板の減少、血清蛋白の異常など、血液の病気により全身的に出血しやすくなったときです。
第2に、鼻そのものに病気がある場合です。そのうちで多いのは、鼻炎により鼻の粘膜が充血し、出血しやすくなったときです。また、まれに鼻内に腫瘍ができたとき、あるいは鼻の細い動脈に動脈瘤ができたときも出血しやすくなります。
いずれも少量の出血が多く、鼻をかんだときによく起こります。鼻内の診察、エックス線などで部位を調べ原因ごとに治療します。
第3に、高血圧や動脈硬化など基礎になる病気があり、血管が破綻する場合です。救急車で運ばれる鼻出血の大部分はこれです。鼻のみならず口にも血液がまわり、顔中血だらけになるタイプです。
この場合は、大量の出血により血圧低下を来すまで何回も発作的に出血します。このときは、血液を飲まないように静かに口から吐き出すようにしてください。胃の中に大量の血液を飲み込むと、必ず気分が悪くなり、幅吐するからです。
治療は、全身的に血圧をコントロールし、輸液か必要なら輸血をします。鼻の方はタンポンをきっちり入れて圧迫止血します。
このような形で起こる鼻出血の場合は、早めに受診をしてください。早期に治療すれば、輸血が不要になる場合が多いのです。また、この種の鼻出血を予防するには、そのもとになる高血圧の予防と治療が大切でしょう。
私たちは、目のほかに、回転感覚や加速度を感じる内耳、手足の位置を感じる筋肉関節などによって、周囲の状況を関知しています。立ったり歩いたりできるのは、これらの器官からの信号を受けた脳が情報を統括し、無意識に全身の緊張感を高めたり、手足を動かしたりする指令を発し、身体の平衡を保っているからです。
このバランスが崩れ、身体がふらついたり、歩行障害が起こったりするのが平衡障害であり、これを自覚的に感じるのが「めまい」なのです。身体の平衡にとって重要な器官である脳や内耳に急に強い障害が起こると天井がぐるぐる回る回転感覚となり、吐き気も伴いますが、ゆっくりとした弱い障害では身体が少しふらつく程度のめまいとなります。
こうした症状を治すには、原因が脳にあるのか、あるいは内耳などの感覚器にあるのかを診断する必要があります。脳が原因の場合は、意識障害・手足のしびれ感のような神経症状を伴うことがあります。一方、内耳から起こるときは、耳鳴り・難聴を伴うことがあります。
検査では、身体の筋緊張のゆがみが眼球運動の異常として現れやすいので、電気眼振計を使って異常を知ります。さらに必要なら、CT(コンピューターによる断層撮影)や脳血管撮影をします。しかし、なにか少しふらつく感じだけというめまいも多く、わけのわからないうちに治ることもよくあります。
現代のように高速の乗り物で移動したり、高層ビルなどの高い所で生活したりするようになると、平衡感覚にもストレスがかかってきます。ゆっくりとした生活を心がけることが、めまいの予防には大事かもしれません。
緑内障というのは、目の内圧(眼圧)が高くなり、視力・視野がおかされる病気です。緑内障には2種類あって、短時日で大変な視力低下がくるものと、徐々に視野が狭くなり視力も失われるものがあります。
このうち短期間のものは、眼痛もあり、だれでも気がついて、眼科医に行って治療しますので、よほど悪い条件がなければ大体完全に治るものです。
ところが、長年かかって少しずつ進行する緑内障は、必ず両眼に発生し、自覚されずにかなり悪化してから気がつくことが多いものです。この場合、眼科医は進行を止めることはできますが、元に戻すことはできません。
したがって、現在の成人病検診や人間ドックなどでは、必ずこの緑内障についても調べることになっています。こういう検診等を受ける機会のない人は、定期的に眼科を受診することをお勧めします。実際に「私は緑内障ではないでしょうか」といってくる人たちがだんだん増えています。
中年以上の1〜3%に緑内障があるといわれ、すべてが失明状態になるわけではないにしても、少なからず生活に支障をきたします。また、緑内障は遺伝するか、とよく質問されますが、特殊なものを除いて遺伝性はないと考えてよいでしょう。
つねに失明原因の上位を占めてきた緑内障も、早期発見、早期治療により失明予防ができるようになってきましたので、手遅れになる前に眼科医をたずねてみましょう。
白内障という病名を知らない人はいないでしょう。目の中にある水晶体、つまりレンズが白く濁る病気です。
進行すると光が目の奥に届かなくなり、物がぼけて見え、視力が低下します。そして、日常生活に不便を感ずるようになれば、手術をしなければなりません。濁った水晶体を取り出して、その代わりに人工のレンズを入れるのが白内障の手術です。白内障の手術というと、昔は大変なものでしたが、今はハイテク技術の導入によって、実に安全にできるようになりました。
白内障の原因は、特殊なものを除き、まだ不明です。しかし、老人に圧倒的に多いことから、老化現象と考えるのは当然です。ところが、同じ年齢の老人でも、白内障になる人とならない人がいます。では、どうすれば白内障にならないですむのでしょうか。昔からおもしろい統計があります。こまかい文字などを見ることの多い知的労働者とそうでない肉体労働者を比較すると、白内障は肉体労働者の方がはるかに多いのです。
水晶体というものは、遠くを見たり近くを見たりするたびに変形しているわけで、この変形を多く経験すればするほど、白内障になりにくいと考えられます。つまり、足腰と同じように常に使っていれば老化しないということになります。
ですから、白内障になりたくなかったら、本を読んだり、こまかい仕事をしたりする方がよいといえるでしよう。
日本人の平均寿命は、今では女性が82歳、男性が76歳に達しています。気候風土に恵まれ、衣食も足り、医療水準も高いせいでしょうか、日本は世界一の長寿国となりました。
日常の生活・食事などに注意し、成人病の予防を心がければ、ある程度の長生きは可能です。しかし、88歳の米寿をこえて“きんさん・ぎんさん”のようになるには、両親から受け継いだ丈夫な体質も必要です。
さて、医師も人間ですから、いろいろな人がいます。もちろん日頃から節制している模範的な人もいます。しかし、「年に1度は健診を」と他人には勧めても、自分は5年に1度でもすればいい方だと
いう医師も多くみられます。患者にはアルコールやたばこを減らすように説いても、自分自身はおかまいなしという医者が圧倒的です。
病気は、早期の診断と治療により、確かに良くなる場合もありますが、自然の経過をとることも多いのです。医者はこのことを知っているので、不養生を承知で生活を楽しんでいる人が多いというわけです。
もちろん、いつも健康に気を配ることは大切なことです。でも、血圧を気にしながら好物の塩辛を食べたり、肝臓に悪いなあと思いながらお酒を飲んだりしていては、人生が味気なくなります。もっとゆとりを持って、毎日を過ごしたいものです。
頼りになるかかりつけの医者をみつけ、時々は相談しながら、ほどほどの不養生を楽しみましょう。
この言葉を耳に、目にしたことがありますか? 実は厚生省等がまとめた平成7年度から10カ年計画で子育てを支援するための総合計画のことなのです。
そのスローガンは、「?@子育てを社会全体で支援する ?A子育てしやすい環境をつくる ?B子育てに伴う不安や負担感を軽減する」の3点です。
分かりやすく内容を紹介すると…「子育ては健全な次世代の形成に向けての社会的投資と考え、家庭においての子育てに加え、国や地方、企業が協力して社会的に支援する。そして、仕事と了育てとを両立することのできる雇用環境や子どもの健全な成長を支える生活環境を整備し、安心して子どもを生み育てることができる母子保健医療や相談支援体制を確保するとともに、教育費などの負担なども配慮し、子育て家庭を支援する」ということです。
新ゴールドプラン、公的介護保険は、主に70歳を過ぎた高齢者に対する対策で、ほとんど毎日、新聞紙上に登場しているのですが、それに比べこれから国を担っていく子どもたちには、高齢者に対するほどには光が当たっていないように思えます
(このコーナーで今年度は母子保健をとりあげるのもこの辺に理由がありましょう)。平成9年度から母子保健サービスが県から市町村に移譲され、地域にあったきめ細かな体制づくりが期待されているところです。
そんなわけで、今年度は母子保健関係のニュースを、今回を含めて12回シリーズでお届けします。
わが国の人口は、平成2年10月の国勢調査によれば1億2,361万人に達しており、中国、インド、ロシア、米国、インドネシア、ブラジルに次いで世界で第7位です。そして世界人口に対する割合は2.3%となっています。一方、人口密度は332人/平方キロでバングラデシュ、韓国、オランダに次いで第4位になっています。
人口の年平均増加率は0.4%で、大正9年から昭和10年までの年率1.4%や第一次ベビーブームといわれた戦後間もないころの2%以上の高さと比べると半分以下にまで低下しています。
人口の年齢構成をみると、年少人口(0〜14歳)は18.2%と年々減少していますが、一方老年人口(65歳以上)は12.1%と増加しつつあり、厚生省人口問題研究所の統計によると、平成9年では老年人口(15.6%)が年少人口(15.6%)を上回ると言います。
女性が生涯に産むこども数の平均値を表す合計特殊出生率をみると下降傾向にあり、平成5年は1.46となっています(平成6年は1.50とやや増えましたが)。
このように人口の高齢化、少産少死の傾向はますます顕著になりつつあり、将来の日本を担うべき人口を確保し、送り出すために、母了保健の果たすべき責務はますます重要になってきているのです。
わが国の人口は、平成2年10月の国勢調査によれば1億2,361万人に達しており、中国、インド、ロシア、米国、インドネシア、ブラジルに次いで世界で第7位です。そして世界人口に対する割合は2.3%となっています。一方、人口密度は332人/平方キロでバングラデシュ、韓国、オランダに次いで第4位になっています。
人口の年平均増加率は0.4%で、大正9年から昭和10年までの年率1.4%や第一次ベビーブームといわれた戦後間もないころの2%以上の高さと比べると半分以下にまで低下しています。
人口の年齢構成をみると、年少人口(0〜14歳)は18.2%と年々減少していますが、一方老年人口(65歳以上)は12.1%と増加しつつあり、厚生省人口問題研究所の統計によると、平成9年では老年人口(15.6%)が年少人口(15.6%)を上回ると言います。
女性が生涯に産むこども数の平均値を表す合計特殊出生率をみると下降傾向にあり、平成5年は1.46となっています(平成6年は1.50とやや増えましたが)。
このように人口の高齢化、少産少死の傾向はますます顕著になりつつあり、将来の日本を担うべき人口を確保し、送り出すために、母了保健の果たすべき責務はますます重要になってきているのです。
一般に胎児は頭から生まれてきます。これを専門用語で「頭位」といいます。しかしお尻から生まれてくる胎児も2〜4%おり、「骨盤位」といいます。俗に「さかご」と呼ばれるものです。
骨盤位は胎児の運動性が強いとき、羊水が多いときや、多胎、子宮の形態異常などが原因で起こります。ほとんどの場合は骨盤位牽引手術で経膣的に娩出しますが、初産の骨盤位、高年の骨盤位の場合や骨産道の形態異常、胎児の過大、娩出力の低下のような場合は帝王切開になることもあります。
妊娠25週から27週では、10へ30%が骨盤位ですが、その後自然回転をしたり膝胸位(産婦が膝と胸を下につける姿勢)によって頭位になる胎児もいて、最終的に2〜4%が骨盤位のまま分娩期を迎えます。骨盤位は頭位に比べて破水を起こしやすく、また階帯が脱出したりすることがあり、迅速な対処を要求されます。
陣痛促進剤は悪いものととらえられがちです。しかし、こういう緊急の場合には、陣痛促進剤などが使い方次第で分娩時間を短縮し、母親を早く楽にしてあげることができ、赤ちゃんを仮死から守ることもできるのです。
産婦人科の現場では、母親と赤ちゃんの二つの命を大切にするよう日ごろから注意しています。しかし、不測の事態が起こることもあり、しれらに対処するために日々精進しているのです。
妊娠中は胎児が大きくなるにつれて全身の循環血液量が増加し、さらにステロイドホルモンも増加します。これらの影響で、妊娠後半期になると母体には浮腫(むくみ)、蛋白尿、高血圧などの症状が出やすくなります。妊娠20週以降に浮腫、蛋白尿、高血圧の症状うち、いずれか一つ以上の症状が出たものを妊娠中毒症といいます。
妊娠中毒症の原因はいまだに不明ですが、「妊娠という負荷に対する母体の適応不全症候群」と考えられます。そのため、出産後短期間(多くは6週間以内)のうちに症状は消失します。
妊娠中毒症は妊婦の5〜10%が発症し、母体と胎児・新生児にいるいろな悪影響を及ぼすので、その予防、早期発見、早期治療が大切です。
日本では妊婦健診の普及率が高くて定期的に受診するので、妊娠中毒症を早期に発見することができます。妊婦健診では、体重測定と浮腫、蛋白尿、尿糖、血圧、子宮底長などの検査を行いますが、これらはいずれも妊娠中毒症発症のチェックポイントです。
妊娠中毒症の危険因子には次のようなものがあります。
(1)高血圧家系…両親かどちらかの親が高血圧である (2)高年妊娠…35歳以上での妊娠 (3)肥満女性 (4)妊娠中の体重増加が15キログラム以上 (5)多胎妊娠 (6)過労・ストレス (7)塩分のとり過ぎ (8)高血圧、慢性腎炎、糖尿病などの持病がある。
統計的には、正常健康夫婦では結婚後6カ月以内に65%、1年以内に80%、2年以内に90%が妊娠します。2年以上たっても妊娠しない場合を不妊症といいます。
不妊症は以前に一度も妊娠したことのない場合の「原発性不妊症」、一度でも妊娠または分べんの経験がある場合の「続発性不妊症」の2つに分けられます。
女性不妊の場合は、瞳、頭管、子宮、卵管、卵巣のどこかに不妊因子が存在し、その原因を検査しなければなりません。そしてその結果によって、いろいろな治療がなされるのです。
不妊症の治療といっても、新聞紙上に登場するような重症例はごく少なく、大病院に行かなくても、簡単な検査・処理で妊娠する場合の方が多いのです。長期不妊の方には申し訳ないのですが、不妊の治療のスタートは、まず母性を自覚することからではないでしょうか?
ここで現場からのお願いがあります。何歳からとは言いませんが、そろそろ結婚を考え始めるころから、基礎体温を計ってもらいたいということです。
女性は中学2年生で風しんワクチンを接種します(平成7年から義務接種から勧奨接種になってしまいましたが)。これは将来、先天性風しん症候群の子を産まないための配慮なのです。
これと同じように、基礎体温(とかく避妊法への用途が表に出てきているようですが)は、測定することによっているいるなことを教えてくれるのです。ですから、子どもが欲しいという希望を持って病院・医院を訪れる前に、ぜひ体温測定をし、その表を持って来院していただければ医療側も助かり、治療期間の短縮にもつながるわけです。特に結婚間近の人は、今日から婦人体温計と仲良くなってください。
科学と医学が進歩した現代に、いまだに治らない病気があるなんて…と思われる方が多いことと思います。しかし、現実にはエボラ出血熱など、有効な治療法のない病気がまだ多く存在します。
特にウイルスによる病気に対して私たちは無力で、一部のウイルスに効果のある抗ウイルス剤を除けば、有効な手段を持っていません。
では、ウイルス性疾患にどう対処しているのでしょうか。第一番目は、病気にかかる前に予防接種を受け、抗体を獲得しておくことです。第二番目は、病初期であればその病気に対する抗体(ガンマグロブリン)を投与することです。しかし、その抗体を入手できないことが大半です、それ以外では、それぞれの症状に対応した治療を行う、いわゆる対症療法しかありません。つまり、有効な対処方法は、予防接種を行ってあらかじめ自分の体の中に抗体を獲得しておくことなのです。
現在、世界では、年間200万人の乳幼児が「はしか」で亡くなっています。また、妊娠初期に風疹にかかると、母子感染によって白内障、難聴、先天性心疾患などを持つ子どもが生まれる可能性が高くなります。
一昨年(平成6年)に予防接種法が改定されました。これに伴い、長岡市でも予診の充実と個別接種が推進されています。日本では流行がなくなったボリオや結核など、まだ多くの病気が世界の各地でいまだに猛威を振るっています。
国際人として、海外で活躍する機会が多くなるこれからの子どもたちの未来のためにも、予防接種は必要不可欠です。積極的に、そして自主的に予防接種を受けるようにしてください。これからは、自分の健康を自分で守る時代です。
子どもの肥満が急増して、全国的に問題となっています。長岡市でも、最近の調査で幼児で4%、小学生で8%の肥満児がいて、さらに増加傾向にあることがわかりました。
子どもの肥満で不利な点は、次のように要約できるでしょう。
(1)運動能力が劣りやすい
(2)容ぼうでいじめられたり、劣等感を持ちやすい
(3)将来、動脈硬化になる危険性が高い
子どもの肥満を見つけるのは容易ですが、その原因を取り除きにくいため、対策は大変です。子どもの肥満の原因は主に、遺伝体質と家庭環境の二つです。このうち家庭環境では、大食い、早食い、脂っこいものが好きなど親の食事習慣に問題がある場合と、出無精、運動嫌い、テレビやゲーム好きなど、親の行動習慣に問題がある場合があります。
肥満治療の要点は、熱量と栄養素のバランスのとれた食事を、三食規則正しく食べることと、毎日30分以上の運動を続けることです。
食事面では、カロリー過剰になった原因を配慮して対策を立てるとよいでしょう。例えば「ご飯太り」では薄味のおかずにする、「肉太り」では脂肪分の少ない種類にする、「おやつ太り」ではスナック菓子やケーキを、せんべいや果物にするなどです。
給食はおかわりさせない、家庭のおかずも1人分ずつお皿に盛り分ける、牛乳も1本で140カロリーもあるので、たくさん飲ませないなどの点も注意するとよいでしょう。
運動面でも、遊ぶ仲間があるといちばんよいのですが、家族がつき合ってあげることも大切です。また、新たないじめのきっかけになったり、精神的トラウマ(外傷)を残さないような健康教育の配慮が望まれます。
昔はこどもの病気に予防も治療も無くて、さまざまなおまじないやタブーが信じられていました。中でも入浴して良いか悪いかということが非常に大事なことでした。
江戸時代に作られたはしかの手当についての書き物を見ると、食べて良いもの・悪いものが書いてあり、また75日のあいだ入浴を禁止しています。
柏崎奉行所の役人の日記を見ると、赤ちゃんに湿疹ができたとき医師に入浴を禁止され、化膿して悪化する様子が書かれています。こどもはかゆくて泣くので、母は一日中抱いたまま立って食事もすませ、家族も骨身を削られるようだとあります。母は「毒断ち」と称して、いろいろな食べ物を禁止され、そのため母乳も出なくなります。
これらは今見るとひどい迷信のように思われますが、今でもそのようなタブーが無くなったとは言えません。
食物についての迷信は、幸いに今では消滅したようです。しかし入浴についてはタブーのように大事に考え過ぎて、ちょっとしたことで長いあいだ風呂に入れず、こどもが汚れて大変かわいそうな状態になっていることがあります。
こどもの具合が悪い場合、1〜2日は入浴しないで様子を見るのも良いでしょうが、それ以上日がたったら発熱と呼吸困難がないかぎり風呂に入れた方が良く、それで悪くなることはありません。特に鼻水と咳(せき)だけの時はそのように考えてほしいと思います。アトピーの子は細菌の感染を防ぐためにも入浴が必要です。お湯が熱いとかゆみが強くなるのでぬるめにして、こすらないように洗うと良いでしょう。
平成六年の新潟県における小児の死因中、事故による死亡率は、乳児で第三位、幼児では第二位でした。生活環境の向上、医療の進歩で、病気による死亡が少なくなり、事故の占める比率が高くなったといえるでしょう。死に至らなくても、こどもの事故は多いものです。乳幼児の事故で多いのは、(1)転落・転倒、(2)誤軟・窒息、(3)やけどです。
乳幼児ではまだできないと思っていたことが、ある日突然できるようになるわけで、これが思いがけない事故になることがあります。成長、発達につれて常に新たなる事故に直面する運命にあるわけです。
生後間もない時期では、柔らかいふとんにうつ伏せに寝かせておいて窒息することがあります。五カ月を過ぎ寝返りができるようになると、ベッドからの転落に特に注意する必要があります。
また、この時期には何でもロに持っていくようになります。薬、タバコ等は手の届かない所に置きましょう。
はいはいを始め、つかまり立ちをし、つたい歩きもできるようになると、更に大きな危険が待ち構えています。階段の上下には柵をし、浴槽の水は使用しないときは抜いておきましょう。玄関や縁側からの転落にも注意し、歩行器を使用している場合は目を離さないて下さい。ポットのお湯、ストーブ、またテーブルクロスを引っ張ってこぼした茶わんのお湯でのやけどなど…。
一日の大半を家の中で過ごす乳幼児ですから、当然のことながら事故も家の中で起こることが多いわけです。乳幼児を持つ家庭では、もう一度家の中を総点検し、危険のない環境づくりをして下さい。その上で最も大切なことが、こどもからできるだけ目を離さないようにすることです。
昨年も、暮れ頃から長岡にもインフルエンザが流行しはじめましたが、我が国では毎年のように十一月から二月にかけて、小中学生を中心に流行が広がり、周囲の家族にも蔓延します。
インフルエンザは発症すると発熱、咳、鼻水などの症状が強く、罹患期間も長く続き、感染力も強いため、乳児、年少児などの抵抗力の弱い小児は治癒までに長びいたり、中耳炎、肺炎、他の細菌による感染症、脳症等の合併症の心配もあり、注意が必要です。
冬の風邪にはインフルエンザウイルス以外にも、ライノウイルスなどの他の冬風邪ウイルスによるものや、マイコブラズマ菌による肺炎、溶連菌などの細菌感染症による発熱があり、それぞれ適切な治療が必要です。
風邪の予防には、流行してきたらなるべく人混みに入らないで、体の疲労や寒気をさげて、体調を整えることや外出後の石鹸での手洗い、うがい、マスク等や流行前の予防接種などが有効です。
風邪にかかったら、症状を訴えない乳幼児では、顔色や表情、手足の動かし方の観察が大切で、例えば、ぐったりして動きが少ないときは心配な状態と考えられます。
咳や鼻水、高熱に対しての対症療法も、合併症の予防のために必要ですが、暖かくしてよく眠らせること、温めたスープ等で水分補給を十分行い、発熱と食欲不振からくる脱水症にならないようにすること、体力が回復するまで入浴しないこと、など安静と十分な看病が一番大切です。
こどもの排便回数は、何回までが正常というきまりはありません。
便が長い間腸の中にあって固くなり、出すのが苦しい状態を便秘といっています。排便回数は週2回以下という人もいますが、1日何回も固い便が少しずつ出るときも便秘です。
2〜3印こ1回でも固くなく、腹痛や排便痛がなければ心配いりません。母乳栄養の赤ちゃんでは時には4〜5日に1回のこともありますが、元気がよく、よく飲んでいれば心配いりません。
しかし3日くらい便が出ずに腹痛を訴えたり、便が固くて苦しそうなら、便を出さなければなりません。お腹のマッサージやお尻の刺激で出なければ淀腸や坐薬を使います。くせになるといって浣腸を敬遠して排便させないと、ますます便が固くなり、排便をこわがるようになり、腸も刺激に鈍感になり、便秘ぐせがつくことになります。
ふだんから便秘がちなこどもでは、我慢させないこと、排便の習慣をつけること、食事に気をつけることが大事です。マメ、イモ、海草、野菜など、便の量を増やすもの、腸に刺激を与えるものを食べさせ、毎日決まった時間にトイレに行かせましょう。朝食後か夕食後がいいでしょう。こわがらせないようにして、出なくてもいいから毎日やっていると、排便の習慣がついてくるものです。
便秘の原因は、(1)ミルクや食事の量が少ない、(2)肉など食物残さの少ない食事、(3)毎日の排便習慣がない、または我慢してたまってしまった、などが大部分ですが、(4)便秘をおこす病気もあります。頑固な便秘は診察を受けた方がいいでしょう。
赤ちゃんの場合は体重の増え方もチェックしましょう。
*SIDSとは
乳幼児突然死症候群(SIDS : Sudden Infant Death Syndorome)とは、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児に死をもたらす疾患です。
平成8年における死亡数は526人であり、その約9割が1歳未満の乳幼児期に亡くなっています。
その原因については、窒息等の事故によるものとは異なり、脳における呼吸循環調節機能不全が考えられていますが、単一の原因で起こるかどうかの点も含めて未だ不明です。
その一方で、疾患の発症に関連のある因子についての研究の結果、以下に示すようないくつかのことを積極的に実行することにより、本疾患の死亡率が低下することが明らかになっています。
*SIDS発症の危険性を低くするための留意点
1) 赤ちゃんを寝かせるときは、仰向け寝にしましょう。
ただし、医学上の理由から医師がうつぶせ寝を勧める場合もあるので、このような時は医師の指導を守りましょう。
2) 妊娠中や赤ちゃんの周囲で、たばこを吸わないようにしましょう。
これは、身近な人の理解も大切ですので、日頃から協力を求めましょう。
3) 母乳が赤ちゃんにとって良いことはよく知られています。母乳の出方には個人差がありますが、母乳が出る場合は、できるだけ母乳で育てるようにしましょう。