自然災害発生時における 医療支援活動マニュアル
平成16 年度 厚生労働科学研究費補助金 特別研究事業「新潟県中越地震を踏まえた保健医療における 対応・体制に関する調査研究」


第2部

自然災害後亜急性期
医療班活動マニュアル

国立国際医療センター病院長 近藤 達也


はじめに
災害後亜急性期医療支援活動に関する研究班からの提言
医療活動調整員
  チェックリスト
  医療調整員マニュアル
後方支援員
  チェックリスト
  後方支援マニュアル
   < 資料> 搬入物品一覧・活動状況報告
医師
  チェックリスト
  医師マニュアル
  亜急性期の災害医療支援(医師編)解説
   < 資料> 緊急援助隊診療録
看護師
  チェックリスト
  看護師マニュアル
   < 資料> 外傷処置・外傷のチェックポイント・熱傷看護・救護班員用健康管理セット・医療機材セット・救急蘇生セット
薬剤師
  チェックリスト
  薬剤師マニュアル
   < 資料> 災害用処方せん・医薬品リスト・薬剤関連資材リスト・需要が予想される医薬品リスト


はじめに

 1995年に発生した阪神大震災時に、被災住民のために個人ボランティアから企業、団体あるいは周辺自治体などの多くの組織が支援活動を実施し、大災害時における支援体制確立の必要性ならびに重要性がそれまで以上に社会に認識された。その結果、大災害発生時の対応として、自治体間協力体制の設立や行政による法的整備、さらには企業内でのボランティア制度の整備などが行われて来ている。また組織毎に災害時対応マニュアルや地域における災害対応体制整備に関する指針なども作成され、いざというときの準備を整えている。

 「災害とは自然現象または人為的現象で地域の人間社会生活環境に損害や危害を与え、かつ人命にかかわる現象」といわれている。この定義からすると、いくら激しい自然現象が起こってもそこに人が住んでいなければ災害は起こることはない。災害の規模を小さくするためには、平常時対応として「被害が発生しないようにするための備え(disaster mitigati on)」と「被害の発生が避けられなかった場合にすぐに被害軽減の対応をする備え(disaster preparedness) 」の災害抑止力向上と災害発生後の「応急対応」と「復旧・復興」を含む災害対応力の向上が不可欠な要素である。

 災害抑止力には、地震や台風などに備えて建物の強度向上や居住地域整備計画を実施、災害対策計画作成、災害訓練などが含まれており、行政主導の組織的な活動が主たるものとなっている。一方災害対応力は災害発生後の活動で、被災者の生活支援や医療支援を行う応急対応と、ある程度時間が経過した後の通常の社会生活への復帰や地域再建を目指す復旧・復興のための活動などがこれに当たる。これらさまざまな活動の中で、被災住民に対する支援が被災地以外から必要になるものは災害後の災害対応力向上に対する活動である。

 今回の新潟中越地震発生後には、多くの医療従事者がボランティアあるいは医療機関派遣チームの一員として被災地で救命救急活動、避難所での診療活動、心のケアのための活動などを実施した。最大震度を記録した新潟県川口町には、国立高度専門医療センターや独立行政法人国立病院機構に所属する多くの施設から救護班が派遣され、発災後3日目から約1ヵ月間、川口町現地対策本部、医師会、現地医療施設、ボランティア団体などと協力して保健医療支援活動を行った。

災害時救護班の活動は日常の診療活動とはかなり異なっている。このような活動に多くの組織が関わる場合には地域の保健医療体制構築とその運営方法、さらには参加する救護班に対しての活動指針の統一が必要であることは言うまでもない。医療班の活動統一に関しては、実際に受診者の疾患治療に関する診療マニュアルと被災地で活動する医療支援班の行動を規定する活動マニュアルが必要と考える。

今回我々は新潟中越地震の支援活動で経験したことをもとに、主に国立高度医療センターと独立行政法人国立病院機構所属の病院を対象として、事前準備も含めて、災害時医療支援活動時の必要事項チェックリストや医療機材、薬剤などをまとめて災害時医療救護班活動マニュアルを作成した。マニュアルの内容は災害医療支援班の構成要員である医師、看護師、薬剤師、後方支援担当(事務係)さらに全体を統括する役割を持つ医療調整員の5つの専門分野別に救護班活動チェックリストと必要資機材リスト、活動指針で構成されており、実際の活動時に使い易いものとなることを心がけた。

災害後亜急性期医療支援活動に関する研究班の提言

 新潟中越地震時に、最大震度を記録した川口町に対して、国立高度専門医療センターや独立行政法人国立病院機構が中心となって医療支援活動を実施した。川口町には33の医療機関及び団体が、各医療班を継続的に送り出し、現地において各班が協力調整のうえ、30日間に渡って延べ745人(30日間の延人数)が医療活動を行った。また、県の依頼により保健師なども派遣されていた。活動時期としては発災後3日目から1ヵ月後までの約1ヶ月間であったが、現地においては異なる施設から派遣された医療班と共同で医療支援活動を行うには様々な困難を伴っていた。今後、より効果的な活動を行うために必要と思われることについて、支援活動に参加された方々の経験をもとに以下の3項目について研究班としての提言を述べさせていただく。

1 避難所の指定ならびに救護所の併設

 これまで大規模災害時の亜急性期医療救護活動においては、全国規模で各種の膨大な数の医療チームが車両により現地へ入り、救護が必要な場所を訪ね歩き活動を実施して来た。しかし、活動開始までに膨大な労力と時間を費やし速やかに活動を開始することができない大きな問題を抱えている。現地の情報不足に加え、医療活動全体を取り仕切る指揮命令体制が整っていない状況下での活動は立ち上がりの遅れを覚悟せざるをえない事態となっている。

 そこで、大規模災害時に医療チームが入りやすく、また、救護所の医療情報を把握しやすくするための対策として次のことを提案する。

(1) 地域防災計画のうえで大規模災害時の避難所を定め、収容可能人数に応じた必要医療チーム数を想定しておく。(図1)

(2) (注)防災計画作成時には医師会との協力体制が必要

(3) 避難所と救護所を書いた地図を作製し、災害発生時には医療チームが各自治体へ直接出向くか、インターネットを通じて地図を受け取り救護所を目指す。

(4) 小規模避難所は、複数で1 ケ所の救護所をおいたり、大規模避難所は複数の医療チームを置く、巡回診療班を計画する等、地域の実情に合わせて柔軟に検討し基本的な医療班の配置数を決める。

(5) 救護所毎に、診療スペースや、医療チームの居住スペースをあらかじめ定めておき、当該場所は避難者の生活スペースとしないこととしておく。

◎メリット

(1) 医療班は混乱した状況下であっても検討をつけて活動場所を探すことができる。
(2) 短時間で医療活動を開始することができる。
(3) 医療チームの活動状況を容易に把握できる。
(4) 自宅居住者や車上生活者も何処に行けば医療を受けられるかが明確になる。
(5) 地図は救援物資を届ける際にも利用することができ、救援物資の大規模避難所集中化を防ぐことができる。
(6) 地元医師会も協力体制をとりやすくなる。
(7) 地図はボランティア活動者も利用できる。

◎新潟中越地震による検証

 平成16年10月31日(発生後8日目)の時点の医療救護所の状況は次のとおり
  ・避難所数 499箇所
  ・避難所への避難人数 71,402人
  ・避難所内救護所の定点数  24箇所

【大規模災害の図式】

● 亜急性期の医療チームに自治体から「避難所MAP」を渡し、現地に入ることをルール化

 

(図1)

2 医療活動調整

 発災直後から48 時間以内は災害支援急性期と呼ばれており、この時期に被災した各市町村の地域災害対策室は現地の資源を利用して被災住民救援を実施しつつ、県災害対策本部へ被災状況を報告して必要な救援要請を行うことになっている。この時期に非被災地から被災地に入る医療支援班はレスキューチームとして災害による受傷者の探索と救急救命活動を行うほか、医療先遣隊として被災地の医療情報を収集して、中央災害対策本部さらには後発医療支援班へ情報提供する役割を有している。(図2)

 

(図2:災害時医療支援体制)

 このような時期に、被災地で円滑な医療支援活動を行うには県中央災害対策本部、被災地域災害対策本部さらに医療支援班のそれぞれに保健医療活動調整を担当する専門職が必要である。

 県災害対策本部(マル1) ならびに被災地域災害対策室(マル2) には、行政官と協力して保健医療対策の指揮をとるため、地域の医療施設あるいは派遣された医療支援班の中から災害対応の訓練を受けた保健医療専門職をそれぞれの対策本部の医療調整員として指名することが望まれる。

 医療調整員を中心とする対策本部は、被災地の保健医療に関する情報を分析して支援班などへ提供する一方、利用可能な人材、資機材についての情報を集約して被災地の要望にあった保健医療活動を提供するように努める。(需要・供給調整体制)

 被災地で活動する医療支援班のリーダー( 医療調整員:マル3) は、各被災地の会議に参加して活動方針に従った保健医療活動を行うために班内調整を行ったり、地域の情報をまとめて地域災害対策本部へ報告するなどの任務を負う。

(1) 県(中央) 災害対策室医療部門の組織と役割

 ア 災害対策組織運営

構成員 県保健医療行政官( 地域担当)
    県医師会代表
    県災害対策本部医療調整員
    災害医療支援班地域代表

 イ 活動内容

被災地情報収集・・・・・・調査チーム派遣(先遣隊)
人材供給
薬剤供給
薬剤以外の物資供給
供給資源輸送・患者搬送ルートの確保
輸送手段の確保
需要と供給のマッチングシステム確立

(2) 被災地( 地域) 災害対策室医療部門の組織と役割

 ア 被災地域災害対策組織運営

構成員 地域保健医療行政官
    地域医療施設会代表
    災害医療支援班代表
    被災者代表

この組織の代表者 地域災害対策医療調整員

 イ 活動内容

活動開始・終了報告
各避難所の位置・被災者数確認
定点・巡回診療計画策定
医療班移動手段確保
医療ニーズの把握
地域医療調整官任命
診療方針統一
統一診療記録・統一医療資機材
活動広報
活動日報作成

3 緊急車両道路情報の公開

 通行禁止との情報が公開されていても現場では緊急車両は通行可となっている場合がある。特に初期の医療チーム派遣では緊急車両向けの道路情報が公開されればより迅速に医療が実施できる。

 災害発生後から亜急性期に救護班が被災地に入る場合、現地の情報、交通手段とその経路さらにはどの被災地に向かうべきかなどについての情報が十分得られないことが多い。大規模災害時に医療チームが入りやすくするための工夫のひとつとして提案したい。

医療活動調整員

亜急性期の災害医療救護班における医療調整員の活動チェックリスト

区分
活動項目
出発前
□ 各医療施設における集合時間・出発時間確認
□ 所属医療機関との連絡方法確認
□ 所属医療機関の派遣可能人数と活動期間の確認
□ 急性期救急救命班あるいは先遣隊の情報収集(災害対策本部、保健医療担当者連絡先など)
□ 被災地情報収集
□ メンバーの専門性・役割分担確認
□ 災害対策本部へ連絡( 参加報告、班のメンバー及び機能報告) 
□ 活動地域ならびに移動経路の決定
□ 活動地域・被災状況確認(二次災害を含む) 
□ 携行機材・薬剤の確認
現地での活動準備
□ 地域対策本部ならびに所属施設へ到着報告
□ 地域災害対策本部へ所属機関の活動方針報告(人員、携行機材、薬剤、活動予定期)
□ 医療支援班や地域災害対策本部、地域医療機関などの代表者会議構築・運営
□ 被災地の被災状況ならびに派遣医療ニーズの把握
□ 情報伝達方法の確認
□ 宿舎の決定
□ 患者搬送経路確認
□ 活動地域決定
□ 統一診療方針確認
□ マスコミ対応方法確認
救護活動
□ 朝夕の医療班代表者定例会議参加・運営
□ 所属班の活動計画作成 
□ 日報作成 
□ 地域保健医療情報収集分析( ニーズ変化の把握)
□ 避難所内感染症流行監視 
□ 県災害対策本部への補充品要請
□ スタッフ、地元災害対策本部のメンバーの健康管理 
□ 後発医療支援班の必要性判断
撤退・引き継ぎ
□ 後発医療支援班到着確認 
□ 患者の引き継ぎ紹介
□ 撤退条件の確認(地域医療機関やライフラインの復旧などの確認) 
□ 活動報告書の作成
□ 引継ぎ機材、薬剤リスト作成
□ 所属施設医療班撤退の場合、地域災害対策本部の了承取得

 

医療調整員マニュアル

1 亜急性期医療活動調整

 亜急性期には、すでに中央災害対策本部や被災地対策室などが設立されており、多くの場合避難所における保健医療活動が想定される。この場合の医療調整員の役割は地域災害対策本部での活動調整が主なものとなる。対策本部医療調整員は被災地での保健医療計画に基づいて、地域全体の医療活動を指揮する必要があり、災害医療支援活動経験者か災害医療に関する研修修了者などがこの任務に当たる。被災地地域対策本部では行政官が保健医療担当者として任命されている場合が多く、担当者が災害医療支援に関しての専門性を有していれば最適であるが、そうでない場合には医療支援班代表の中から選出し、行政官の補佐を行うべきである。

 

(図3: 被災地における医療活動調整)

2 各医療支援班の活動調整

 各医療支援班が現地に到着後、被災地で医療活動を行う場合には各医療専門家が他の支援班と情報交換や役割分担をおこない活動調整をすべきである。しかしながら、一つの施設が数次に渡り医療支援班を派遣する場合には、自施設の活動方針と地域災害対策本部の活動計画を調整する必要がある。特に、施設から被災地へ最初に派遣される第1 班の活動や活動を終了して撤収する最後の班では災害医療支援活動の専門性を有する調整員が強く求められる。

 この場合の調整員の活動は後方支援、医師、看護師、薬剤師などの活動と重複する点がかなりあるが、この項目では派遣第1 班と最終班における医療調整員の活動に関する指針を主に記載する。

【 出発前】

(1) 所属医療機関の派遣可能人数と活動期間の確認

 第1次隊医療支援班は所属医療機関がどれほどの規模で被災地の医療支援を行う予定があるかをあらかじめ明確にして災害対策本部に報告する。

 ・派遣時期:被災地に着く日時を明確にする。
 ・医療支援班派遣可能な期間:何日間活動可能かを出来るだけ正確に報告する。
 ・医療支援班構成人数:班員数と何次隊まで送る予定があるかを報告する
 ・構成要員の専門性:それぞれの班の得意分野について構成要員の専門性を含めて報告する。
 ・携行機材・薬剤:用意している機材、薬剤リストを提出する。

 (2) 被災地情報収集 (二次災害を含む)

 出発前に被災状況を把握するための情報収集を行う。出発前の時点でどのような組織がすでにどこで活動しているか知ることも重要である。各組織の連絡先電話番号、情報交換担当者名などを調べておく。少なくとも以下の組織から情報収集を行う。

 ・医療先遣隊(急性期災害医療支援班)
 ・災害対策本部(県災害対策本部)
 ・日本赤十字社
 ・被災地あるいは被災地周辺医師会
 ・新聞・ホームページなど

 ア 医療班活動方針確認

  ・自己完結的活動
    食料・水の確保
    被災地での交通手段確保
    テント・寝袋などの必要性検討
  ・診療方針統一(記録・携行機材)
  ・構成要員の役割分担(健康管理、記録、連絡)

 イ 情報伝達(被災地で活動中)

  ・地域災害対策室、中央災害対策室、所属組織あるいは機関との情報伝達方法確認
  ・情報交換担当者や定期情報伝達時間の確認

 ウ 活動地域と移動経路の想定

 ・活動地域の仮決定
 ・活動目的地までの移動経路を県災害対策本部などに確認
 ・活動予定地域の地域災害対策室担当者へ連絡

 

【 現地での活動準備】

 (1) 地域災害対策本部での打ち合わせ

  ・地域対策本部ならびに所属施設へ到着報告
  ・被災地の被災状況ならびに派遣医療ニーズの把握
  ・活動地域決定、宿舎の決定
  ・所属機関の活動方針報告(人員、携行機材、薬剤、活動予定期)
  ・医療支援班や地域災害対策本部、地域医療機関などの代表者会議参加
    統一診療方針確認、患者搬送経路確認、マスコミ対応方法確認

【 救護所活動 】

 (1) 被災地における医療活動

  ・朝夕の医療班代表者定例会議参加・運営
    各班の活動計画作成
  ・地域保健医療情報収集分析(ニーズ変化の把握)
    避難所内感染症流行監視、日報作成
  ・所属機関への定例報告
    後発医療支援班の必要性判断
  ・スタッフ、地元災害対策本部のメンバーの健康管理

 

【 引継ぎ・撤退 】

 (1) 引継ぎ

  ・後発医療支援班到着確認
  ・患者の引き継ぎ紹介
  ・引継ぎ機材、薬剤リスト作成

 (2) 撤退時

  ・撤退条件の確認(地域医療機関やライフラインの復旧などの確認)
  ・活動報告書の作成
  ・所属施設医療班撤退の場合、地域災害対策本部の了承取得

 

 参考資料

1 救急医学Vol. 15,  No.13, December 1991 集団災害
2 21 世紀の災害医療体制災害に備える医療のあり方
3 災害の書動機における活動マニュアルとその運用に関する研究班 研究報告書
4 国際災害看護マニュアル
5 Natural Disaster Protecting the Public’s Health PAHO
6 JICA 防災と開発2003
7 国際協力機構災害救援医療チーム診療録

後方支援員

亜急性期の災害医療救護班における後方支援活動チェックリスト

区分
活動項目
出発前
□ 情報収集のうえ、派遣目的地、派遣ルート、派遣人員構成を決定
□ 活動地点での電気、水道、ガスなどのライフラインの状況を確認
□ 資材物品の準備(搬入物品一覧を参照)
□ 車両には前部と後部に救護班と判る表示
□ 出発前に情報を共有化するための打ち合わせ実施
現地での活動準備
□ 移動中は、可能な限り、マスコミ情報・ネット情報・自施設・地元自治体から情報を取得
□ 被災地に入ったら自治体、医療機関、大規模避難所で情報を収集
□ 携帯電話の不通も予想されるため、自施設へ定時に連絡
□ 車両の燃料切れを起こさないために早め早めに燃料補給
□ 被災地へ入る直前に食料等物品調達を再確認
□ 行動記録をつける
□ 深夜の行動は、道路事情が悪い場合は禁止
□ 他チームと合流した場合は共同活動を試みる・情報を共有化
救護活動
□ 医療チームを取り巻く構成を確認(避難所責任者、被災者代表、市町村責任者等)
□ 救護所内の指揮命令系統を確認
□ 日々の出来事を記録
□ 他チームと様式等をなるべく統一(活動状況報告書を参照)
□ 各ミーティングに参加し情報を収集
□ 診療受付、連絡調整、巡回診療補助、掲示物管理等の診療補助業務を積極的に実施
□ 補充物品の調達
□ 自チームの活動日数を自施設と調整
□ 自チームの活動は後続へどう繋げていくかローテーションを検討
□ 医療関係者らしく被災地のマナーを厳守
□ 一般ゴミ、医療ゴミを分別し、最後まで責任を持つ
□ 医療チームの健康を守るため食事、活動時間等の生活環境を整える
撤退・引継ぎ
□ 医療活動の必要性が残っている撤退か、必要性がなくなった撤退であるか見極める
 ( 他の医療チームに引き継ぐか、医療機関に引き継ぐか医療の継続性を図り撤退)
□ 撤退について地元自治体、地元住民(区長等)、地元医療機関の了承を得る
□ 診療録は整理し、引き継ぎ機関を確定
□ 撤退のための移動手段を確保
□ 持ち帰る荷物の整理
□ 撤退する際は清掃し、医療廃棄物を含めて持ち帰る

後方支援マニュアル

【 出発前】

1 派遣人員構成の決定

 各医療機関の事情により派遣決定方法、派遣期間、派遣人数、医療活動内容は異なること、また、災害の種類や規模によって医療ニーズが異なるため、チームの編成については状況により柔軟に考慮する。

 《チーム構成》

医 師… マスコミ情報等を参考に内科系と外科系の必要性を判断
看護師… 医師1名につき看護師1〜2名
薬剤師… 医療班毎に1名以上
事務系… 医療班毎に1名以上

 災害発生初期の運転業務は激務であり、途中運転交代の必要性及び活動地決定前後の調整業務並びに情報伝達業務を平行して行うこととなり、チーム内の協力が必要
注)活動開始後、救護所において他チームとの連携が図れる場合のチーム編成は、適宜判断

2 出発までの準備

 被災地の情報は混乱し、医療活動に必要な情報や付随するその他現地情報の入手は難しい。 大規模災害時の情報不足は当然であることを念頭に出動準備する。

 (1) 情報収集

医療情報… 都道府県の健康福祉関係部局、市町村役場、DMAT からの情報入手を試みる。ただし、被災地を所管する公的機関は情報が混乱しており、必要な情報や指示は得られない場合が多い。情報不足のまま自主的な判断により出発する。

交通情報… 国土交通省道路局の渋滞情報(http://www.its.go.jp/traffic/ ) 等、インターネットによる各種の渋滞・通行規制情報を入手すること 現地の状況は刻々と変化しており道路事情は現地でなければ分からない。

気候情報…被災地の気温、今後の気候の見通し等を考慮し持参物品を準備すること 注)先行医療チームから引き継ぐ派遣の場合は、先行医療チームから情報を十分入手すること

 (2) 交通手段の決定

・電車、自動車、航空機等の進入手段の選択は、被災地までの距離と地理的条件、持参物品の量、救護班の人数により判断

・救急車を備えている医療機関は、現地活動で威力を発揮するので是非利用すべき

・救急車は交通規制区域内で緊急車両と即座に判別がつき非常に有効

・一般車両を利用して出動する場合は、救護班である旨を車両の前部と後部に大きく表示(緊急車両扱いのために必要)

・道路の陥没等による事故防止のため、日没までに被災地へ到着すること

・悪路や急勾配を通行することもあり、4輪駆動の車両がベスト

  (3) 資材物品の準備

 別紙「搬入物品一覧」 を参考

《参考》

・公園や河川敷などで車上生活しながら救護活動する場合は、医療チーム自身の健康に影響を与えるため資材物品の量を小規模とし極力短期間の活動とすべき

・家屋等が使用できず、やむを得ず長期派遣となる場合は、医療活動用大型テントが必要

食料は、災害出動に備えて常時大量に倉庫保管する必要はない。物品(食料)リストを備えておき出動準備段階で購入することで対応可能

・野菜、果物、乳製品、栄養補助食品を持参することも配慮

3 出発前打ち合わせ

 諸注意事項説明、持参物品の確認、現地情報の共有化を図るためのミーティングを実施する。

【 現地での活動準備】

1 被災地域内に入り活動拠点場所を決定までに必要なこと

・出発後も情報は刻々と変わる。定期的に自施設と連絡を取り合い情報を入手すること
また、カーラジオや可能であればインターネット(無線)を活用

・地元自治体、被災地周辺医療機関、大規模避難所へ出向き周辺の情報を得るが、情報は錯綜しており自主的に活動拠点を探し廻る覚悟が必要

・被災地内では、携帯電話が繋がりにくく不通となることを予想し、あらかじめ定時報告(2時間毎など)を自施設と取り決めておく

・車の燃料は、被災地確保ができなくなることを想定し、早め々に補給

・生鮮食品、弁当等の食料は、被災地域へ入る直前に追加購入

・行動記録をつけること

・深夜の行動は道路事情が悪い場合は禁止

・移動中に他チームと合流した際は共同活動を試み、情報を共有化すること

 

 【 救護所活動 】

1 現地活動の開始

 現地での活動で最も大きな問題は、責任者(指揮命令者)が不明確なままで活動を開始することである。そのような状況下で重要なことは、被災地の都道府県、市町村、所轄保健所、避難場所の責任者、被災者の代表、地元医師会、自施設の幹部、自施設の上部機関、他の医療チーム等との調和の中で、各医療チームが活躍し被災者の役に立てる状況を作り出して行くことである。

同一救護所内で複数の医療チームが診療活動を続けることも多く、その場合は中心となる医療施設を決めておき、各医療チーム間が同等の立場で日々のミーティングを行い、医療の変化に対応した救護活動ができるよう、また継続医療が可能となるよう心掛けることも重要である。

 (1) 定点の決定

・積極的に避難所での救護活動を開始すること
・避難所責任者と話し合い、救護活動を行わせていただく了解を得ること
・診療場所の確保、荷物を置く場所、寝泊まりする場所を確保すること

 (2) 記録

・日々の出来事は記録すること
・記録は後続の医療チームへ引き継ぐことを前提に記録簿を備えること
・自施設や関係機関から日報等を求められることがあるため、各医療チーム間で様式を統一させること(別紙参照:活動状況報告書

 (3) 情報収集

・救護所間ミーティング、救護所内ミーティング、保健所ミーティング等関係のあるものには積極的に参加し情報を交換すること

 (4) 診療補助

・診療受付、連絡調整、巡回診療補助、掲示物管理を行うこと

 (5) 自施設へ連絡

・必要な情報は、日々自施設の責任者へ連絡すること

 (6) 物品調達

・必要物品の調達業務(医療器具、医療材料、衛生材料、生活物品)を行うこと
・関係機関や他チームと共有化を図ること

 (7) マスコミ対応

・情報公開は重要な役割である。救護護所又はチーム毎に窓口を統一し業務に影響しない範囲で積極的に対応すること

2 救護活動日数の決定

 救護活動の先行きが見通せない出動の場合や他機関の医療チームとの関わりが予想できない状況下では、活動開始後に総合的に状況を判断し活動日数やローテーションを決定する。 疲労の程度、生活環境、交代要員の事情、交通事情などを判断し活動日数を決定することとなるが、派遣期間は、短くて4日間、長くて6日間(限度)が適当と考える。

3 被災地でのマナー

・避難所では禁酒(寝酒程度は可)
・喫煙はマナーを守ること
・医療ゴミは最後まで責任を持つ
・救援物資は、被災者のためのものである認識を持つ
・被災地を背景として記念撮影は禁止
・言動、行動は医療関係者らしくすること
・医療活動目的以外は、避難生活居住区域には入らないこと
・他の医療チームとの調和を心掛けること
・他の医療チームの物資を許可なく使用しないこと

4 救護所での食事

 持参した非常食やレトルト食品等、限られた食材だけの単調な食事の繰り返しとなる。次第に食料品の現地調達も可能となって来るが、調達する時間的余裕はない。終始、持参したレトルト食品等を消化していくスタイルになる。そのため、果物、野菜、乳製品、栄養補助食品( ビタミン剤) を持参することも心掛る。

(参考)

※ お湯で暖める食品は、一度に調理することが出来ず手間がかかる。缶詰、瓶詰等そのまま食べられるものが便利
※ 食品を温めた水は何度も使い、貴重な水を大切に使う工夫が必要
※ 紙皿は、ラップやビニール袋で覆って使用すると、容器を汚さないで何度も使え、残ったものは生ゴミとして捨てるのに便利
※ 紙コップは、各自名前を書き何度も使用

 

【 撤退・引き継ぎ 】

1 撤退の留意事項

 医療活動の必要性が残されていながら撤退せざるを得ない状況である場合は、他の医療機関に引き継ぐか、地元医療機関に任せる等、医療の継続性を図ったうえで撤退する。医療活動の必要性が薄くなり、地元医療機関に任せるなどの判断は、地元自治体、地元住民( 区長など)、地元医療機関の同意を得て撤退を決定する。

2 撤退時の配慮

・診療録を何処へ引き継ぐか調整すること
・診療録は、救護所毎にとりまとめ、居住地別、50音順などに整理すること
・器材、医薬品、物品は持ち帰るとが原則
・医療廃棄物は持ち帰ることが原則
・使用した場所は現状復帰して引き渡すこと

 

 資料:搬入物品一覧・活動状況報告

 

 

 

医 師

亜急性期の災害医療救護班における医師の活動チェックリスト

区分
活動項目
出発前
□ 携行物品を準備する
□ 現地の気候と流行が予想される感染症
□ 巡回診療が必要か、また可能か(移動手段の確保) 
現地での活動準備
□ 活動地点での電気、水道、ガスなどのライフラインの状況を確認する
□ 活動地域を地図で把握する( 地図の入手)
□ 避難場所と避難者の人数を把握する。(役所で入手)
□ 地元医療機関の被害と機能
□ 周辺医療機関の場所の把握と被害と機能
□ 救急患者の受け入れ病院の確保
□ 慢性疾患増悪患者の受け入れ病院の確保
□ 地元医療機関の収容能力
□ 地元医師との話しあい。役割分担の確認。
□ 他の支援チームとの役割分担の決定( 書式有り43頁
救護活動
□ 定点診療を行なう
□ 巡回診療を行なう
□ 往診を行なう( 広報)
□ 心のケアー、肺塞栓症・廃用症候群の予防、公衆衛生活動を行なう
□ スタッフ、地元災害対策本部のメンバーの健康管理
□ 重症化しそうな患者を後方支援病院に転送する
□ 慢性疾患患者の処方または処方薬の取り寄せを行なう。
□ 診療録・医療支援活動日報の記載と分析 ( 書式有り40 頁46 頁
□ 救急セット、携帯薬品、その他の物品の確認
□ 定時にミーティングを行なう( 地元保健担当者、地元医師、他の救護班)
撤退・引継ぎ
□ 巡回診療のニーズが減少した場合は保健師・看護師に任せ往診で対処する
□ 地元診療所の機能回復を確認する
□ 患者の引き継ぎ紹介を行なう
□ 感染症流行のないことを確認する

医師マニュアル

1 必要とされる情報

 (1) 気候(気温、天気)、流行が予想される感染症(       )

 (2) ライフライン・交通・通信の復旧度チェック
    電気・ガス・水道・不通箇所・電話、インターネット、携帯電話

 (3) 地元医療機関の被害と機能のチェック(以下の各項目が可能か否か)

 病院名 
場所・所要時間
 TEL 
救急・外来診療時間・科
入 院
 検 査 
 処方※ 
手 術
               
               
               
               
               

※慢性疾患の処方が可能か否か、○× で簡単に記入すること。地元医師にも直接聴く。
院外薬局(          )

(4) 周辺医療機関の機能チェック

 病院名 
場所・所要時間
 TEL 
救急・外来診療時間・科
入 院
 検 査 
 処方※ 
手 術
               
               
               
               
               

(5) 救急患者・慢性疾患増悪患者の受入病院の確保(後方支援病院)

 ア 急患 搬送所要時間(  )分 (    )病院:TEL(    )窓口Dr. (     )
   急患 搬送所要時間(  )分 (    )病院:TEL(    )窓口Dr. (     )
 イ 慢性 搬送所要時間(  )分 (    )病院:TEL(    )窓口Dr. (     )

2 地元医師・他の支援チームとの話しあい(担当は流動的であり後方支援版の予定表に記入)

 役割分担を決める。(定点往診巡回で網羅できているかどうか、夜間の避難状況も調査)

 
  場 所  
 受持チーム 
  TEL  
定点診療
 
 
 
巡回診療
 
 
 
心のケアー
 
 
 
往診
 
 
 
保健師
 
 
 

【亜急性期の災害医療支援(医師編)解説】

1 亜急性期医療支援の目的は以下の2 つである。

 (1) 被災地の医療機関が失った機能を一時的に補う役割の一端を担う。

 (2) 災害により生じた新たな医療ニーズに対応する。

2 具体的な診療活動

 (1) 定点診療

  この時期には一般診療とほぼ変わらないニーズ。下記のような特徴的疾患に注意。

ア 高齢者の体調不良・感冒(後方病院に早めの転送)
イ トイレ不足からくる水分摂取不足・便秘(とにかく水分摂取を指示)
ウ ストレスによる帯状疱疹(顔面、広範な場合は入院)
エ 消化性潰瘍の悪化(早めに入院させる)
オ 精神疾患の悪化(必ず心のケアーチームに相談)
カ 熱傷(気道熱傷の疑われる場合や5% 程度以上の熱傷の場合は迷わず転送)

 (2) 巡回診療

  検診的役割も担い患者予備軍の掘り起こしに努める。

 (3) 往診

  できれば避難所を網羅し連絡先を明記する。

 (4) 心のケアー・廃用症候群・肺塞栓症などの患者・予備軍の掘り起こし、公衆衛生活動

ア 不眠・精神疾患なら心のケアー
イ 被災後動かない、食事をしない高齢者は積極的に動かすよう指導
ウ 自家用車内で寝泊まりしている被災者にエコノミークラス症候群の啓蒙・体操など指導
エ 感冒食中毒などの感染症予防に手洗いうがいの励行

 (5) 災害対策本部のメンバーの健康管理

  精神的肉体的に休ませることがベスト。体調不良時には往診・転送

 (6)  (1)〜(5)で救護班が対応できない患者の早めの搬送・専門家への引き継ぎ

 救護班は普段自分が医療活動を行なっている環境・条件とはかけ離れていることを自覚し、重症化しそうな患者はいち早くしかるべき後方支援病院に転送することが肝要である。

 (7) 慢性疾患患者の処方

 被災地では一般被災者の移動が制限されることが多いので近隣部の病院にかかりつけの被災者は慢性疾患治療薬を手に入れられないことが多い。保健師・近隣病院などと協力し処方を行なう。

 (8) 診療の記録・分析

 診療録を残し、患者の分析を行なうことで医療ニーズの推移を予測する。なぜならニーズの減少は撤退の条件である。診療録は患者の引き継ぎにも必要である。

3 診療活動を行なうための準備と調整

 (1) 情報収集

ア 活動地域(地図の入手、分割・分担の決定)
イ 都市部では移動距離は少ないが山間部、過疎部では移動距離が長く巡回診療が重要。通行止めや規制など移動に制限がある場合も有るため効率良く巡回できるように活動地域を分割する。
ウ 避難場所と人数(役所から入手)
エ 避難所を網羅し巡回診療、啓蒙活動を行なう。
オ 気候(最低気温、最高気温、湿度、流行が予想される感染症)
カ 感染症の流行を防ぐべく公衆衛生活動に努める。ワクチン接種などの必要性がある場合は地元医療機関・災害対策本部と十分相談の上、その接種方法を決定する。
キ 電気水道ガスなどライフラインの状態を確認する。
ク 主に処置に必要な水の確保は重要であるが使用しないでも事足りる場合が多い。必要な患者は搬送すべきである。
ケ 地元医療機関の被害と機能のチェック
コ 地元医療機関は被災直後から診療を続けられている場合もあり医師職員とも疲弊していると考えられる。経済的圧迫や支援後の医療機関の置かれる状態に十分配慮した診療支援が求められる。このためには地元医師とよく話しあい役割分担を明確にしておく必要がある。
サ 周辺医療機関の機能チェック
シ 周辺医療機関が問題なく機能している場合は救急患者や入院が必要な患者の受け入れ先として協力が得られる場合がある。できれば搬送時間や対応可能な患者の範囲などの情報を得たい。機能が麻痺あるいは一部麻痺している場合もその病院にかかりつけの慢性疾患患者の処方の問い合わせなどに対応可能かどうかできるだけ情報を得る。
ス 救急患者・慢性疾患増悪患者の受入病院の確保
セ 周辺医療機関が望ましいがやや遠方でも搬送可能な病院の情報をできるだけ収集しておく。

 (2) 地元医師・他の支援チームとの話しあい(ミーティング)

 地元医師や他の支援チームとは実際に会って役割分担を明確にした上で、できれば毎日情報を交換し今後の対策を練る。

4 縮小と撤退

 次の(1) 〜(3)の条件を満たした時に縮小を考える。(4) が可能となった時、撤退できる。できれば他のチームと話し合って順番に縮小撤退する。一般医療支援の撤退時期の目安は被災後1ヶ月である。

 (1) 患者数が減少する

 (2) 主要避難所に保健師(看護師)が常駐し、医療機関に被災者の情報の伝達が行なえる

 (3) 大規模な感染症の流行がない

 (4) 地元診療所の機能が回復しすべての患者の引き継ぎが可能である

 

JICA 緊急援助隊医療チーム診療録

 

看 護 師

亜急性期の災害医療救護班における看護師の活動チェックリスト

区分
活動項目
出発前
□ 携行用看護物品を用意する(医療器材リスト参照)
□ 被災地での活動に必要な看護関連物品を準備する(医療器材リスト参照)
□ 現地のライフラインに応じた看護・保健衛生活動に必要なパンフレットを準備(停電の場合は、事前に必要枚数をコピーして準備する)
□ 被災状況と収集した情報により、想定される看護の準備をする( マニュアル50,51頁参照)
現地での活動準備
□ 活動時点での電気、水道、ガスなどのライフラインの状況を確認する
□ 災害対策本部等、地元行政機関の機能状況を確認する
□ 近隣医療機関の診療状況について確認する
□ 他の医療チーム( 心のケアー、こどものケアー等)が被災地に入っているか確認する
□ 医療救護所内の設営をする( マニュアル51頁参照)
□ 医療救護所内に衛生材料・看護物品の保管場所を確保する
□ 診療の手順についてメンバー内で取り決めをする
□ 診療録の取り扱いについて、メンバー内で取り決めをする
□ 地元保健師や看護師の活動状況から、どの程度活動を援助すればよいのかを検討する
□ それぞれの保健師・看護師の連絡体制のとりかたを確認し、連携に努める
□ 連絡体制がない場合、状況に応じて作成する( マニュアル52頁参照) 
救護活動
□ 医療救護所で、医師の診療介助を行う
□ 巡回診療に同行し、被災者のニーズの把握に努める
□ 巡回診療に同行し、保健衛生指導パンフレット等を用いて行う
□ 巡回診療に同行し、イソジンガーグル・弾性ストッキング・マスク・速乾式手消毒剤等を配布する
□ 巡回診療に同行し、必要に応じて被災者の清潔援助を行う
□ 巡回診療に同行し、生活物資の過不足の確認をし、災害対策本部等を経由して供給する
□ 巡回診療に同行し、高齢者の活動レベルの低下の有無を確認しリハビリについて指導する
□ 他の医療救護班等と連携をとり、衛生材料等の不足についてカバーしあう
□ 医療廃棄物の処理に気をつける( マニュアル54頁参照)
□ 日々のミーティングには必ず参加する
□ 宿泊場所の近隣に対して迷惑がかからないように、救護班のモラルについて注意喚起する
□ 救護班のメンバーの食事の献立を考え、準備する( メンバー内持ち回り制も考慮する)
□ 生活のリズムをメンバーで合わせる( 起床時間・食事・就寝時間)
□ 日々の活動内容を日誌として記録する
撤退・引継ぎ
□ 活動終了時の衛生材料の残数を点検し、取り扱いを検討する( マニュアル55頁参照)
□ 活動終了時の携行資機材の定数を確認する
□ 救護活動を行う際に連携をとって活動していた相手に、活動終了の連絡を行う
□ 救護活動を他の班に引き継ぐ場合は、活動状況や使用物品の残数等を正確に報告する

看護師マニュアル

【出発前】

1 携行用看護物品の準備

 携行する資機材は、必要最低限度にとどめなければならない。とりあえず使うかもしれないので持って行く、という発想は転換し、あるものを最大限に有効活用して救護活動を行なうことが重要となる。創意工夫の視点で、応用技術を駆使した看護ケアーに望む心構えが必要である。
 以下の5 点について、現地の状況について情報収集を進めながら携行資機材の準備をする。

 (1) 医薬品セット(薬剤師マニュアル68頁参照)
 (2) 医療資機材セット(医療資機材セット58、59頁参照)
 (3) 生活資機材セット(後方支援マニュアル39頁参照)
 (4) 巡回診療用セット 巡回する地域の状況によって、現地でセットをする。持ち運びしやすい鞄やリュックサックなどを準備する。
 (5) 蘇生セット(蘇生セット60頁参照)
 (6) 救護班員用健康管理セット(救護班員用健康管理セット57頁参照)

2 看護・保健衛生活動のためのパンフレット準備

 災害における悪急性期には、多くの被災者が住居を失い、二次災害からの被災を避けるために、避難所による不十分な生活環境での集団生活を余儀なくされる。発災直後は、医療援助者は生命の危機的状況の対応に当たるが、亜急性期では被災者の医療に加えて、衣・食・住に目を向ける必要がある。
 避難生活に特有の問題発生を防ぐため、早期から被災者に向けて看護・保健衛生活動を開始し、被災者が自ら健康管理に取り組めるような働きかけをするため、パンフレットやポスターなどを準備する。

 (1) 環境的側面:ゴミ、トイレ、排水、騒音、照明などについて避難所ごとに整備し、わかりやすく表示する。
 (2) 防疫的側面:食中毒や風邪、インフルエンザなど気候や環境により流行が予測される感染症を予防するための、手洗い・うがいや健康管理を呼びかける。
 (3) 対象特性的側面:乳幼児・妊産婦・高齢者・障害者・単身者・要介護者などに、医療機関の診療状況や、巡回診療、救護所の場所・時間を知らせる。
 (4) 疾病問題:糖尿病・高血圧・心臓病などの慢性疾患、精神疾患、難病、認知症など、継続した治療・看護が必要な被災者に向けて、自己管理や受診を呼びかける。
 (5) 避難所特有の健康問題:高血圧、不眠、便秘、食欲不振、不安、抑うつなど、まずは被災者自らが自分の身体・精神の状態を把握し、調整する行動をとることを呼びかける。

3 亜急性期の災害看護

 発災直後から急性期には傷病者の応急処置や、救命・救急処置が最優先されるが、亜急性期では直接受傷した人に限らず、被災者全ての健康状態に目を向けて、身体的にも精神的にも復興に向けて生活をすることができるように看護援助をする必要がある。アルマアタ宣言をもとに、以下の8点についてケアーや指導を行なう準備をする。
 また、災害の種類によっては、二次災害がおこる危険性もあり、亜急性期の活動に際しても、急性期に対応するための知識・技術を備えておくべきである。

 (1) 健康教育:風邪や下痢、発熱などの一般的な疾病の予防・対処。外傷や、一次処置を受けた創傷のその後の処置。精神的援助。
 (2) 水補給と生活環境:安全な水の十分な摂取と、ゴミ・トイレ・排水や手洗い・うがい、避難所の生活環境などの基本的な衛生環境。
 (3) 栄養改善:安全な食糧、バランスのよい栄養摂取。
 (4) 母子保健:妊婦、乳幼児と母親、子どものケアー。
 (5) 予防接種:亜急性期には、地域の医療機関が復興している場合が多く、救護班では必要な予防接種を考慮する。
 (6) 感染症対策:地域や気候、季節、災害の種類により流行することが予測される疾患の知識と治療。
 (7) 病気やけがの手当て:正しい知識と、予防・管理方法。
  (例)避難場所によっては(車中泊等)エコノミー症候群の予防および指導が必要。
 (8) 基本的医薬品の供給:携行する医薬品に関する正しい知識。

 

【現地での活動準備】

1 活動地点でのライフラインの確認

2 現地の情報収集

3 医療救護所の設営

 (1) 地元保健師・看護師との連携により、近隣の避難所の把握につとめる。

ア 避難所の場所(住所)、施設名:名称を統一して、診療録に残す。
イ 避難所の責任者:連絡を取り合い、医療ニーズを拾い上げる。
ウ 避難所の収容人数:常設の救護所と巡回診療の決定。
エ 避難所内部のライフライン、設備:可能な医療支援活動方法の検討。
オ 避難所内の被災者の健康状態:必要な医療支援活動の実施。
カ 避難所内のコミュニティ:生活環境全体の調整支援。
キ 避難所内の被災者の一日の生活状況:診療時間の検討。
 *日中は復興作業や炊き出しに出かけるため、避難所には老人や子どもが多い。
 *食事時や日没後に作業から戻る人が多いため、日中診療を受けられない人のための診療時間の工夫が必要。

 (2) 近隣医療機関の機能状況を確認して、搬送ルートを確保しておく。

 (3) 医療救護所内の環境を整える。

ア 災害医療を行なうにあたり、安全性・生活環境と動線等を配慮して設営する。
イ 現地の建物施設を利用するのか、テント等の仮設建物を利用するのかによって配置を工夫する。
ウ 衛生材料、看護物品の保管場所を確保し、在庫把握と管理をしやすいように工夫する。
エ 受付、トリアージ、診療、与薬の4 つの流れが円滑に進むように、できるだけ一方通行となるように工夫する。
オ 診療室とスタッフの休憩室は区別し、スタッフが休息と健康管理を出来るように配慮する。
カ 救護所の場所と救護活動について、住民がわかりやすいように広報し、目立つように旗をたてたりポスターを貼るなどの工夫をする。

 (4) 受付、トリアージ、予診など、診療の手順についてメンバー内で役割を決め、良好なコミュニケーションで活動が出来るように打ち合わせをする。

 (5) 診療録の記載や、ファイリング、保管場所などプライバシーや個人情報保護に配慮した取り扱い方法について取り決めをする。

 (6) 新潟中越地震では、避難所内に多数の同姓や同姓同名の被災者がいたため、生年月日や住所の記載が、患者間違いの防止のために重要であった。

 (7) 亜急性期には、外傷や疾病の診療のみならず、精神的な側面で不安や問題を抱える人が増えるため、心のケアーも十分配慮する。専門的支援が必要な場合は紹介する。

 

4 被災地における保健医療チームの連絡体制の作り方

 (1) 必要性

 被災地には、様々な自治体の保健医療チームが被災地入りし、それぞれが全力を尽くし、良い保健医療を提供しようとするが、ともすると、被災者には援助が過剰や過少となる場合がある。能率的かつ効果的に被災者への保健医療の提供を行うため、保健医療チーム内での横の連携が必要である。

 (2) 連携について

縦の連携:同じ自治体、チーム内でのアップダウンの連携。指揮系統が明確であるため、他職種が混合でも連携がとりやすい。
横の連携:異なる自治体、同職種間での連携。同被災地区内の縦の支持・命令系統が整っていても横の連携は難しい。

 (3) 連携つくりの方法

 <同被災地区内の指示・命令系統が不明瞭な場合>

ア この場合、担当地区の行政が指揮をとっていることが望ましい。
イ 県  →  各地区(市町村の災害対策本部 → 地区毎の定点 → 保健医療チームの代表) →  各保健医療チームメンバー
ウ 縦の連携(県 → 各地区 → 各保健医療チームメンバー)ができたら、横の連携( 市町村の災害対策本部 → 地区毎の定点 → 保健医療チームの代表)につとめる。各チームが顔を合わせられ、合同認識できる場を設置する。毎日、情報は刻々と変化するため、1回/日は最低集まれる機会(合同ミーティング)を設ける。
エ 合同ミーティングから、更に、職種毎に分かれて、職種別ミーティングを行い、情報交換を行う。
オ 各職種別のミーティングでは、役割分担と連絡方法を決めておく。
 *保健師と看護師は公衆保健や巡回看護等重複することが多いため、担当地区の特殊性を踏まえた役割分担を特に必要とする
 *被災者への援助が過剰・過少とならないように、巡回が必要。

(方法1)
 (ア) 担当地区内の巡回エリアを分ける。
 (イ) 巡回により、被災者のニーズを吸い上げ、その場で対応できることは、即座に対応する。
 (ウ) 保健師分野・看護師分野で専門を要する場合は、お互いに連絡を取り、役割を分担する。
 (エ) 連絡の取り方は、毎日、決まった時間・場所で担当地区のミーティングを持ち、そこで情報交換をする。(例:11:3 0、15:30 西川口小学校にて西川口地区の保健師・看護師合同ミーティング)
 (オ) ( エ) 以外に、お互いの携帯の番号を交換し、携帯で連絡をタイムリーに取り合う。
 (カ) (オ)の方法は、合同ミーティングの場でチームが交代する度に連絡先が変更できるように、連絡先一覧表に記入し、活用する。

(方法2)
 (ア) 巡回時間を分ける。(例:午前:保健師が巡回、午後:看護師が巡回)
 (イ) 方法1の(イ)〜( カ) に同じ

(方法3)
 *医療班が縮小化する時期に入ると、看護師が巡回できなくなるため、保健師から被災者の医療ニーズの提供をしてもらう必要がある。
 (ア) 巡回は、全て保健師が行う。
 (イ) 医療ニーズがある場合は、携帯または直接医療班に連絡。
 (ウ) 方法1の( オ) (カ) に同じ

カ 前述の体制つくりは、誰かが最初に立ち上げなければならない。定点の場で、行政以外にできれば長く滞在するチームが全体の把握がしやすいという面でリーダー的に指揮をとることが望ましい。その点で、初動のチームは災害医療の経験が豊富で、リーダーシップの発揮できるメンバーが望ましい。(今後のことを踏まえると、初動は各職種2名以上が望ましい)

<同被災地区内の指示・命令系統が明確な場合>
  指示・命令系統が不明確な場合の ア イ を除くウ エ オカ

【救護活動】

1 亜急性期の災害看護(出発前参照)に加えて、二次災害による急性期の再来にも備える。

<急性期の災害看護>

 (1) 状況評価、安全確保:災害という特殊な場所で安全で迅速な救護活動を行なう為に、バリアーの装着、周囲の安全性の確保を行う。

ア 感染防御:ガラスや金属片などが散乱している場合が想定される。そのような場所での救護活動では血液、体液等による汚染が予測される。手袋、ゴーグル、マスク、ガウンなどバリアーを装着して行うことが望ましい。

イ 現場周囲の安全性:救護活動を始める前に、状況評価・安全確保を行う。二次災害の危険の有無を判断し、場合によっては傷病者を避難させた後、または二次災害の原因となるものを取り除いた後で救護活動を行う。

ウ 傷病者、状況の確認:傷病者の数と傷病状況の確認。

 (2) 外傷看護:初期評価:傷病者の生理学的状態から蘇生処置の必要性を判断する。(添付参照)

ア 意識・気道:用手頚椎固定を行いながら声かけを行う。声が出せれば気道は開通していると判断。気道に問題があれば下顎挙上を行い気道の確保を行う。

イ 呼吸: 傷病者の口元に耳をあて口鼻からの空気の出入りを耳で聴き、ほほで感じるとともに、胸郭の動きを目で確認する。(見て、聴いて、感じて)呼吸が不十分であれば人工呼吸を開始する。

ウ 循環: 橈骨動脈を触知し、触れれば血圧は80mmhg以上あると判断。触れなければ頚動脈を触知し、触れれば60mmhg 以上はあると判断。頚動脈がふれなければCPR 適応となる。明らかな出血はガーゼなどにより直接圧迫止血を行う。

*初期評価の段階で呼吸、循環に異常があると判断した場合は人工呼吸、心臓マッサージを施行する。

エ 全身観察:傷病者の解剖学的状態から重大な臓器損傷の有無を判断する。(添付参照)

 (3) 熱傷看護(添付参照)

2 診療に使用した医療器械の簡易消毒

 (1) 清潔な器械を使用することや、消毒液の排水の問題などを考慮すると、医療器械は出来るだけディスポーザブルの製品を使用するのが望ましい。

 (2) どうしても使い回しをしなければならない時は、簡易消毒する。

ア エルエイジー10液(0.05〜0.2%) :結核菌に有効、芽胞菌・ウィルスに無効、一般的に腐食作用は無い

イ ピューラックス(0.02〜0.05%): ウィルス・一般細菌・芽胞菌等に有効、金属・ゴム類に腐食性がある

 (3) 使用した機器は、清浄水で洗浄し、血液など付着物を除去しておく。

 (4) 器械は開くか、外して液体との接触面を多くしておく。(一般的に30分から60分)

 

3 医療廃棄物の処理

 被災地での医療支援において発生する医療廃棄物の取り扱いは、慎重に行なう。

 (1) 準備:可燃ゴミ用・不燃ゴミ用(ダンボール、ビニール袋など)、医療廃棄物用(プラスチック容器、ミッペール、針ボックスなど

 (2) 医療廃棄物:針類、血液・体液の付着しているものは硬いふたつきのプラスチック容器などに入れる。

 (3) 一般ゴミの廃棄に当たっては、地域の担当者に確認のうえ、安全に考慮し被災者の迷惑にならないよう所定の場所に廃棄する。

 (4) 医療廃棄物は地域の担当者に確認のうえ、廃棄業者や近くの医療機関に直接渡すか、持ち帰る。安全な廃棄方法、回収方法が確認できるまでは所定の場所に保管しておき、むやみに移動させない。

 (5) 個人情報に関する廃棄物がある場合も十分に配慮して、地域の担当者に確認し、廃棄施設がある場合には利用する。無い場合には、持ち帰り自施設で処理する。

 

4 救護班員の健康管理

 自己管理が基本となるが、チームメンバーそれぞれが協力体制のもと健康管理に努めることが大事。

 (1) 食事

ア 献立は、制限範囲内でなるべくかたよらない。当番制で持ち回り制が望ましい。
イ ライフラインの復旧の状況によるが、基本的にはレトルト食品となる。
注意:下水が復旧していない場合、食べ残しのものは流せない。そのため、カップ麺のスープは飲み干さなければならないため、過剰な塩分摂取に注意。フルーツ缶のシロップも糖分が多く含まれるため注意。
ウ 季節によって、塩分・水分の補給に注意を配る必要がある。

 (2) 排泄

ア 仮設トイレ等、なるべくトイレに行く回数を減らしたくなるため、水分を控える傾向になるが、膀胱炎・便秘等のもとになるため、水分は可能な限り通常通りに摂取する。
イ 便秘になりやすいため、自己にてコントロールする。必要時、下剤の服用をするなどする。(便秘になりやすい人は下剤を持参する。ない場合は医療班に処方してもらう)

 (3) 睡眠

ア 集団生活の中で、同じサイクルで活動することはお互いのストレス軽減のために必要。就寝、起床時間は揃える。
イ 眠れない、イライラするなどストレス症状のある場合はお互いに状態を観察しあい、早期にメンタル面での調整を図る。

 (4) 清潔

ア ウェットティッシュ等で清拭をする(過敏性皮膚の場合は、ノンアルコールが望ましい)。
イ ウェットティッシュやウェルパスを使用して、手指の清潔に努める。
ウ 被災者用の仮設風呂が設置されている場合は、マナーとモラルを守って使用する。

 (5) ストレス

 救援者の受けるストレスについて理解し、メンバーや自己の状態に気づかって早期発見と対処を心がける。

5 ミーティングの参加と情報交換

 出来る限り毎晩ミーティングを行い情報交換するとともに、メンバー内で何でも言い合えるような関係をつくる。 また、毎日医療支援班が入れ替わるため、全体の把握と役割分担、指揮系統を明らかにし、混乱の無いようにする。

【撤退・引継ぎ】

 被災地の状況が安定し、地元の医療機関が機能を回復すれば、撤退を検討する。災害対策本部など、地元の関係機関と連絡を取り合い、引継ぎを行う。
 プライマリーヘルスケアーの基本は「自助・自決」であり、災害救援活動においても、被災地の人々の活動を全て肩代わりするのではないことを念頭において援助活動を行ない、撤退の時期を決定する必要がある。
 活動に際して、連携を取り合った地元の関係機関や、医療機関、保健師・看護師にも撤退の同意を得て、活動終了の報告と引継ぎ連絡をしっかりと行なう。
 撤退時には、持ち込んだ医療資機材(特に消耗品類)で、現地に供与するものと持ち帰るものを現地の担当者と相談し、不要なものは持ち帰る。供与する際は、可能なら供与品のリストを作り、供与式やサインをもらうなどの形式をとるのが望ましい。
 また、後続班が必要な場合は、地元の関係機関と相談の上、現地の最新の情報とニーズを正しく伝えて要請をする。

<参考文献>

1.JMTDRマニュアル;太田宗夫ら監修,国際協力事業団 国際緊急援助隊事務局,1998
2. 国際災害看護マニュアル; 山本保博ら監修, 真興交易医書出版部,2002
3. 災害看護; 黒田裕子ら監修, メディカ出版,2004
4. インターナショナルナーシングレビュー 臨時増刊号; 総特集自然災害・事故・テロ時の看護, 第2 8巻, 第3号,2005
5. 看護管理; 特集: 新潟中越地震・台風23 号災害への援助活動,84-106,Vol.15,No.2,2005
6. 看護管理; 特集: 新潟中越地震への救援活動と病院の対応,196-202,Vol.15,No.3,2005

 

<外傷看護資料>

【外傷処置】

● 頭部・顔面:明らかな変形や出血の有無。変形がなければ直接圧迫止血施行。変形がある場合には出血部周囲の皮膚を圧迫し止血を施行する。意識レベルの確認を行い、レベルが2桁(JCS)であれば搬送を考慮する。

● 頸部:外頸静脈の怒張、気管の偏位、皮下気腫の有無を確認する。確認後頚部は動かさないように頚椎カラーで固定することが望ましい。

● 胸部:胸郭運動の左右差、外表面の損傷の有無。呼吸音の左右差、皮下気腫の有無。

● 開放性胸壁損傷(開放性気胸)・・・三辺テーピング

● フレイルチェスト・・・厚く重ねたガーゼやタオルをあててテープで固定

● また穿通性の異物がみられた場合にはそのままの状態で固定する。

● 腹部: 明らかな損傷、膨隆の有無、圧痕の有無。腸管脱出している場合にはビニールなどで被覆する。また胸部同様穿通性の異物がみられた場合にはそのままの状態で固定する。

● 骨盤と大腿: 腸骨を両側面から圧迫して動揺、痛みの有無を確認し、いずれかの症状がみられた場合には骨盤骨折の可能性があり、出血を助長させる可能性があるためそれ以上の触診は行わない。もしいずれかの症状がみられなかった場合には恥骨を上方から圧迫し動揺、痛みを確認する。

● 骨折: 開放性骨折の場合には感染予防・止血目的にて開放部を清潔なガーゼで覆う。また疼痛緩和・変形予防目的にシーネ(場合によっては傘や板等)で固定する。

● クラッシュシンドローム: 長時間局所が圧迫されることにより金組織損傷がおこり、救出されると同時に急性腎不全、凝固機能障害、代謝性アシドーシスなどを合併し、全身状態の悪化が急速に進行する。減張切開、大量の輸液と利尿剤投与しながら腎機能に注意していく。

 

【外傷のチェックポイント】

● タンポナーデ:外頸静脈の怒張、血圧低下、脈圧低下、奇脈、心音低下

● 気道外傷:顔面外傷、頸部皮下気腫、喉頭損傷、気道狭窄音

● フレイルチェスト:胸郭の奇異運動や動揺

● 開放性胸壁損傷(気胸):吸い込み創、創からの泡の混じった出血

● 緊張性気胸:傷病者の呼吸音低下、鼓音、皮下気腫、気管の健側への偏移、頸静脈怒張

● 血胸:呼吸音の左右差、患側胸部の濁音

● 腹部の内出血:腹部膨隆、腹壁の緊張、腹部圧痛、下腹部の圧痕

● 骨盤骨折:骨盤の動揺・痛みの有無、下肢の伸長差

● 大腿骨骨折:大腿の変形・腫脹、動揺・痛み、下肢の伸長差

【熱傷看護】

熱傷分類
障害組織
生体変化
外見
症状
消毒
処置
I度熱傷
表皮 軽度の浮腫 発赤・紅斑 疼痛・熱感 ヒビテン液(0.05%ヒビテン水)

ポピドンヨード

(イソジン)

局所の冷却
消炎剤内服
ステロイド剤軟膏塗布
II度熱傷

(浅達性)

表皮 浮腫・水疱 水泡底が赤色 強い疼痛、灼熱感 水泡は温存
消毒後被覆剤で覆い感染がなければ数日放置
II度熱傷

(深達性)

真皮 水泡底が蒼白 知覚鈍麻 小範囲の場合には上記と同様の処置

広範囲の場合はIII度熱傷処置と同様

III度熱傷
真皮全層
皮化組織
血管、血管内の血球破壊

血流の途絶

壊死・白色 無痛性 感染防止目的で抗菌剤の軟膏を塗布する。感染があれば1回/2日ガーゼ交換
 

<搬入物品一覧>

救護班員用健康管理セット

品 名
 数 
品 名
 数 
品 名
 数 
総合ビタミン剤   消毒セット   血圧計  
総合感冒剤   イソジン   聴診器  
解熱鎮痛剤   ガーゼ   体温計  
健胃・消化剤   ソフトタイ   リップクリーム  
止痢剤   冷湿布   点眼薬  
整腸剤   カットバン( 長方形)      
イソジンガーグル   ゲンタシン軟膏      

*班員の人数により、必要準備数を適宜設定する。

 

救急蘇生セット

品 名
サイズ
喉頭鏡  
1
喉頭鏡ブレード 5、4、3
各1
バイドブロック 大、中
各2
マギール鉗子
1
スタイレット  
2
経鼻エアウェア 7.0 8.0
各1
アンビューバッグ  
1
簡易吸引器  
1
挿管チューブ   4.0 5.0 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5
7.0〜8.0 は各2 ほかは各1 本
吸引チューブ 6 、10、14
各3本
注射器 2.5 5 10 20
各3
注射針 18G 23G
各5
翼状針 21G 23G
各2
輸液セット 成人用
3
延長チューブ  
3
三方活栓  
3
布製テープ  
1巻
駆血帯  
1本
はさみ  
1
プラスチック手袋 M 、S
10枚
酒精綿  
1箱
ヴィーンエフ 500ml
2
エピネフリン 1ml
5
生理食塩水 20ml
5
硫酸アトロピン 0.5mg
4
キシロカインゼリー  
1

薬 剤 師

亜急性期の災害医療救護班における薬剤師の活動チェックリスト

区分
活動項目
出発前
□ 携行用医薬品を準備する( リスト68-70頁参照)
□ 被災地での活動に必要な薬剤関連資材を準備する( リスト71頁参照)
□ 医療救護所における処方・調剤の方法について打ち合わせる
□ 医療救護班における薬剤師の役割・活動内容について打ち合わせる
現地での活動準備
□ 活動地点での電気、水道、ガスなどのライフラインの状況を確認する
□ 医療救護所内に医薬品の保管場所及び調剤場所を確保する
□ 医薬品を調剤しやすいように分類する
□ 医薬品毎に適切な保管が出来るように努める(冷所薬、向精神薬など)
□ 調剤場所に調剤用物品を配置する
□ 巡回用医薬品のセットを準備する( 巡回診療を行う場合)
□ 現地での他の医療救護班の活動状況を把握し、薬剤師同士の連携が取れるように努める
□ 現地での医薬品等の補給方法を検討する
□ 地元薬剤師会の活動状況を確認し、連携が取れるように努める
□ 近隣医療機関の診療状況、保険薬局の調剤状況を確認する
□ かかりつけ医からの慢性疾患治療薬の入手方法を確認する
救護活動
□ 医療救護所で調剤・服薬指導を行う
□ 巡回診療に同行し、調剤・服薬指導を行う
□ 医療救護所の限られた医薬品で最良の処方が出来るように、医師に処方アドバイスを行う
□ 保健師、看護師と連携をとり被災住民への感染予防活動を行う( 含嗽・手指消毒の指導など)
□ 使用したり、供給された医薬品を1日毎に集計・記録し、救護所の医薬品の在庫を常に把握する
□ 不足が予測される医薬品について、補給の手配を行う
□ 他の医療救護班から医薬品の援助要請があった場合は、可能な限り応ずる努力をする
□ 診療時の事務作業(受付、カルテ整理など) 、処置の補助なども、時間の許す限り積極的に行う
□ 所属施設と頻回に連絡を取り、活動状況の報告、必要な支援の依頼を行う
□ 日々の活動内容を日誌として記録する
撤退・引継ぎ
□ 活動終了時の残薬の取り扱いを検討する( 所属施設に持ち帰る。活動を継続する医療救護班に譲渡する。被災地に譲渡する。など)
□ 活動終了時の医薬品の在庫を明確にする
□ 活動期間中に使用した医薬品を集計する
□ 医薬品を譲渡する場合は、譲渡方法を譲渡先と相談する
□ 救護活動を行う際に連携を取って活動していた相手に、活動終了の連絡を行う
□ 救護活動を他の医療救護班に引き継ぐ場合は、活動状況や使用医薬品の状況を正確に報告する

 薬剤師マニュアル

【出発前】

1 携行用医薬品の準備

 (1) 被災地での医療救護活動に必要と思われる医薬品を携行用として準備する。

*新潟中越地震における川口町での医療救護活動を参考にした携行用医薬品リスト(1週間程度の活動を想定)を別添資料として例示した(68-70頁参照)。
*亜急性期の災害医療救護活動において需要が予想される医薬品のリストを別添資料として例示した(72-73頁参照)。

2 薬剤関連物品の準備

 (1) 被災地の医療救護所において調剤及び医薬品の保管・管理に必要となる資材を準備する。

*新潟中越地震における川口町での医療救護活動を参考にした携行する薬剤関連資材リスト(1週間程度の活動を想定)を別添資料として例示した(71頁参照)。

 (2) 準備する資材のうち事務用品等については、後方支援担当者と打ち合わせを行い重複しないように注意する。

3 医療救護所における処方・調剤の方法の打ち合わせ

 (1) 医療救護所における処方・調剤の方法について、医師と打ち合わせを行う。

 (2) 災害時は診療録に記載された処方に基づいて調剤が行われることが多いが、亜急性期においては、処方せんを用いた処方及び調剤が望ましい。

 (3) 処方せんは3枚綴り(複写)とし、1枚目:調剤用、2枚目:患者控え用、3枚目:医師控え用(診療録貼付用)とするのが便利である。(別添資料として例示した。67頁参照)

4 医療救護班における薬剤師の役割・活動内容の打ち合わせ

 (1) 医療救護班における薬剤師の役割及び活動内容について、班員と打ち合わせを行う。

 (2) 医療救護班における薬剤師の活動としては、次のようなことが考えられる。

ア 診療における調剤及び服薬指導
イ 医薬品等の在庫管理
ウ 診療時の医師への処方アドバイス
エ 慢性疾患使用医薬品の鑑別
オ 公衆衛生活動(含嗽・手指消毒の指導、消毒薬の供給・補充)

 

【現地での活動準備】

1 活動地点でのライフラインの確認

 (1) 活動地点での電気、水道、ガスなどのライフラインの状況を確認し、状況に応じた医薬品の保管・管理方法を検討する。

2 医薬品の保管場所及び調剤場所の確保

 (1) 医療救護所内に医薬品の保管場所及び調剤場所を確保する。

 (2) 医薬品は診察場所の近くに一括して保管することが調剤及び管理上望ましいが、スペースが確保出来ない場合は、別にストック用保管場所を確保する。

 (3) 医薬品の保管場所の側に調剤場所を設ける。

 (4) 医薬品の保管場所及び調剤場所は関係者以外が立ち入ることがないように工夫する。

 (5) 場所の確保が出来たら、医薬品や調剤用資材を効率よく活動が行えるように配置する。

3 医薬品の分類・保管

 (1) 薬の保管には、事前に保管用のケース等を用意していくことが望ましい。

 (2) 医薬品は内用薬、外用薬、注射薬に区別して保管する。また、毒薬、向精神薬については、可能な限り鍵の懸かる保管場所を確保する。

 (3) 冷所保存が必要な医薬品は、温度管理に注意する。アウトドア用の冷蔵庫(電気不要タイプもある)を準備するのが望ましいが、無理な場合はクーラーボックスと瞬間冷却剤等を準備すると良い。

 (4) 薬の分類は、種類別にアイウエオ順や薬効別に分類するのが良い。薬袋などを利用し、袋の上に医薬品名を記載したり、色を付けたりして区別すると便利である。

4 巡回用医薬品等の準備

 (1) 巡回診療を行う場合は、巡回診療用の医薬品及び調剤用資材を準備する。

 (2) 1回の巡回に必要と思われる医薬品および調剤用資材(薬袋、筆記用具等)を用意し、携帯用の容器(リュックサック等)に入れる。

5 現地での薬剤師同士の連携

 (1) 現地で活動を行っている他の医療救護班の薬剤師と連絡を取るように努める。他の医療救護班の活動状況を把握し、医薬品等の譲受・譲渡、公衆衛生活動などに連携して活動が行えると良い。定期的にミーティングなどを行うのが良い方法である。

 (2) 現地で活動を行っている地元薬剤師会と連絡を取るように努める。地元薬剤師会の活動状況を把握し、被災住民に適切な情報が提供出来るように努める。また、連携して活動が行えることがあれば積極的に行う。

 (3) 近隣医療機関の診療状況、保険薬局の調剤状況を確認し、被災住民に適切な情報が提供出来るように努める。また、医療救護班の薬剤師として援助出来ることがあれば積極的に行う。

6 現地での医薬品の補給方法の検討

 (1) 医療救護班で使用する医薬品は派遣元医療機関より持参することを基本とするが、医療救護活動中の医薬品の不足に備えて、現地での医薬品の補給方法も検討する必要がある。

 (2) 現地での医薬品の補給には次のような方法が考えられる。現地での医薬品の供給状況を確認し、状況に応じて適切な対応を取ることが必要である。特に、現地の災害対策本部と連絡を取り、医薬品集積所の設置状況や近隣における協力医療機関の情報を得ることが大事である。

ア 所属する医療機関からの補給
イ 近隣の医療機関からの補給
ウ 現地で活動を行っている医療救護班からの譲受
エ 都道府県及び市町村における災害用の備蓄医薬品の利用
オ 被災地外からの救援医薬品の利用

 

7 慢性疾患治療薬の入手方法の確認

 (1) 被災住民が常用している慢性疾患治療薬の入手方法を現地の災害対策本部に確認し、被災住民に情報提供を行う。

 (2) 災害時には、診察を受けずにかかかりつけ医からの常用薬の処方及び調剤が可能な場合がある。その際には、不足する常用薬の把握及びかかりつけ医への連絡、また調剤された常用薬の服薬指導などを行うことも必要である。

 

【救護活動】

1 医療救護所における調剤及び服薬指導

 (1) 調剤は原則として処方せんに基づいて行うが、緊急の場合は、診療録に基づいて行うこともある。

 (2) 調剤の際には処方せんまたは診療録に調剤済みの旨、調剤者の記名押印又は署名、調剤年月日を記入する。

 (3) 薬袋には、患者名、用法・用量、投与日数、調剤者の記名押印又は署名、調剤年月日などを記載するが、予め必要事項が印刷されているものや、必要事項が押印できるスタンプなどを利用すると便利である。

 (4) 調剤録を作成し、調剤の記録を記載することが望ましい。

 (5) 調剤後には、患者が正しく医薬品の使用が出来るように、服薬指導を行う。

 (6) 患者への薬剤情報提供として、薬袋へ薬品名、薬効、注意事項を記載することが望ましい。また、患者に他の医療救護班や医療機関で診察を受ける際には、処方せんの控えや薬袋を持参することを勧める。

 

2 巡回診療への同行

 (1) 医療救護班で巡回診療を行う場合は、可能な限り同行し、調剤、服薬指導、公衆衛生活動などを行うように努める。

 (2) 巡回診療に同行する場合は、診察時に調剤・服薬指導が出来るように繁用される医薬品を遂行していくことが望ましいが、巡回診療修了後に調剤して届ける方法でも良い。

3 医師への処方アドバイス

 (1) 医療救護所内の限られた医薬品で医師が最良の処方が出来るように、常に医療救護所内の医薬品の在庫を把握し、医師の処方意図に合った医薬品をアドバイスする。

 (2) 医薬品が不足した場合は、現地では特定銘柄の医薬品の確保は困難が予想されるために、同種同効薬の使用についてのアドバイスも必要である。

 (3) 患者の常用薬・持参薬の調査・確認を行い、処方が必要な場合は医師に救護所の在庫薬から同種薬や同効薬などの処方アドバイスを行う。また、相互作用の確認なども行う。

4 公衆衛生活動

 (1) 被災住民への感染症の蔓延を防止するために、保健師、看護師と連携を取り、感染予防活動を行う。具体的には次のような活動が考えられる。

ア 含嗽、手指消毒の遂行(パンフレットの配布やポスターの掲示など
イ 含嗽、手指消毒の手技の指導
ウ 含嗽薬、手指消毒薬の配置及び補充

5 医薬品の管理

 (1) 調剤した医薬品及び補給した医薬品は毎日集計を行い記録を作成する。常に救護所内にある医薬品の種類・数量は把握しておく。

 (2) 不足が予測される医薬品がある場合は、速やかに補給の手配をする。

 (3) 医薬品の補給が上手く行かずに不足した場合は、医師と代替薬について検討を行う。

 (4) 医薬品の管理にはコンピューター(電気が使用出来る場合)を利用すると良い。

 (5) 他の医療救護班から医薬品の援助要請があった場合は、可能な限り応ずる努力をする。

 

6 医療チームとしての活動

 (1) 薬剤師としての活動以外にも、医療救護班の一員として薬剤師が出来ること積極的に行っていく。具体的には次のような活動が考えられる。

ア 診療時の事務作業(受付、カルテ整理など)
イ 処置の補助

7 その他

 (1) 所属施設と頻回に連絡を取り、活動状況の報告、必要な支援の依頼を行う。

 (2) 日々の活動内容を日誌として記録し、引継ぎや活動終了時の報告などに利用出来るようにする。

 

【撤退・引継ぎ】

1 活動終了時の残薬の取り扱い

 (1) 利用せずに残った医薬品は持ち帰ることを基本とするが、引き続き活動を継続する医療救護班が利用出来るようであれば譲渡することも検討する。

 (2) その地域における医療救護活動が終了となり、最終的に残された医薬品については地元自治体の災害対策本部と協議を行い、地元において有効利用が出来るようであれば譲渡することも検討する。

 

2 医薬品の管理

 (1) 活動終了時の医薬品の在庫を明確にし、医薬品の種類・数量を記載したリストを作成すると良い。医薬品を譲渡する場合は、医薬品リストを添えて譲渡する。

 (2) 活動期間中に使用した医薬品を集計し、使用医薬品の種類・数量を明確にする。

3 撤退時の引継ぎ及び連絡

 (1) 活動終了時には、現地で連携を取って活動していた相手に、活動終了の連絡を行う。

 (2) 救護活動を他の医療救護班に引き継ぐ場合は、活動状況や使用医薬品の状況を正確に報告する。

 

  別添資料

  1 災害用処方せん(見本)67頁参照
  2 災害時携行用医薬品リスト(亜急性期用)68-70頁参照
  3 災害時携行用薬剤関連資材リスト(亜急性期用)71頁参照
  4 災害医療救護活動(亜急性期)において需要が予想される医薬品リスト(72-73頁参照)

 

 処方せんは、3枚綴り(複写)とし、1枚目:調剤用、2枚目:患者控え用、3枚目: 医師控え用(診療録添付用)とするのが望ましい。

災害時携行用医薬品リスト( 亜急性期)

 新潟中越地震における川口町での医療救護活動を参考にした災害における亜急性期の医療救護活動(1週間程度の際に携行する医薬品リストの1例)

種別
薬効分類
小児製剤
医薬品名
規格
被災後3〜14日
被災後14日以降
数量
数量
内用薬 抗不安薬
セルシン錠
2mg
200
100
内用薬 催眠・鎮静薬(超短期作用型)
マイスリー錠
5mg
100
100
内用薬 催眠・鎮静薬(短期作用型)
レンドルミン錠
0.25mg
200
100
内用薬 解熱鎮痛消炎剤
ロキソニン錠
60mg
500
300
内用薬 解熱鎮痛消炎剤
カロナール錠
200mg
200
200
内用薬 総合感冒剤
PL 顆粒
1g
1000
500
内用薬 総合感冒剤
小児用風邪薬 (注1)
500
300
内用薬 鎮痙薬
ブスコパン錠
10mg
50
50
内用薬 抗めまい薬
メリスロン錠
6mg
50
50
内用薬 降圧剤(Ca 拮抗薬)
アムロジン錠
2.5mg
200
100
内用薬 降圧剤(ACE 阻害薬)
レニベース錠
2.5mg
100
50
内用薬 抗狭心症薬(硝酸薬)
ニトロペン錠
0.3mg
20
20
内用薬 去痰剤
ムコダイン錠
250mg
500
500
内用薬 鎮咳薬
メジコン錠
15mg
500
500
内用薬 気管支拡張薬・喘息治療薬
テオドール錠
100mg
200
100
内用薬 気管支拡張薬・喘息治療薬
テオドールドライシロップ
50mg
100
50
内用薬 止瀉薬
ロペミンカプセル
1mg
50
50
内用薬 整腸薬
ビオフェルミン
1g
200
200
内用薬 整腸薬
ビオフェルミン
0.5g
100
100
内用薬 消化性潰瘍用剤
セルベックスカプセル
50mg
400
300
内用薬 消化性潰瘍用剤(H2 遮断薬)
ガスター錠
20mg
100
100
内用薬 下剤(大腸刺激性下剤)
プルゼニド錠
12mg
100
100
内用薬 下剤(塩類下剤)
酸化マグネシウム
0.5g
100
100
内用薬 胃腸機能調整薬
プリンペラン錠
5mg
100
100
内用薬 副腎ホルモン製剤
プレドニン錠
5mg
100
50
内用薬 抗血小板薬
バイアスピリン錠
100mg
100
100
内用薬 血糖降下薬
ダオニール錠
1.25mg
100
50
内用薬 アレルギー治療薬( 抗ヒスタミン剤)
ポララミン錠
2mg
200
100
内用薬 アレルギー治療薬( 抗ヒスタミン剤)
ザジテンドライシロップ
0.3mg
100
50
内用薬 抗生物質(マクロライド系)
クラリス錠
200mg
200
100
内用薬 抗生物質(マクロライド系)
クラリスドライシロップ小児用
50mg
100
50
内用薬 抗生物質(ペニシリン系)
サワシリンカプセル
250mg
200
100
内用薬 抗生物質(ペニシリン系)
サワシリン細粒
100mg
100
50
内用薬 抗生物質(セフェム系)
ケフラールカプセル
250mg
400
200
内用薬 抗生物質(セフェム系)
ケフラール細粒
100mg
200
100
内用薬 化学療法薬(キノロン系)
クラビット錠
100mg
200
100
内用薬 抗ウィルス薬
ゾビラックス錠
200mg
200
100
外用薬 解熱鎮痛消炎剤( 坐薬)
ボルタレンサポ
25mg
50
30
外用薬 解熱鎮痛消炎剤(坐薬)
アンヒバ
100mg
30
20
外用薬 抗菌薬(点眼)
クラビット点眼液
5mL
10
5
外用薬 抗アレルギー薬(点眼)
ザジテン点眼液
5mL
10
5
外用薬 抗狭心症薬(貼付)
フランドルテープS
40mg
10
10
外用薬 気管支拡張薬( 吸入)
サルタノールインヘラー
13.5mL
5
5
外用薬 気管支拡張薬( 吸入)
ベネトリン吸入液
30mL
2
2
外用薬 去痰薬( 吸入)
ビソルボン吸入液
500mL
1
1
外用薬 気管支拡張薬( 貼付)
ホクナリンテープ
0.5mg
50
25
外用薬 気管支拡張薬( 貼付)
ホクナリンテープ
1mg
50
25
外用薬 含嗽剤
イソジンガーグル
30mL
100
50
外用薬 胃腸機能調整薬( 坐薬)
ナウゼリン坐剤
10mg
20
10
外用薬 胃腸機能調整薬( 坐薬)
ナウゼリン坐剤
30mg
20
10
外用薬 殺菌消毒薬(口腔用薬)
オラドール口中錠
0.5mg
400
300
外用薬 口内炎治療薬( 塗布)
ケナログ軟膏
2g
10
10
外用薬 副腎皮質ホルモン薬(塗布)
リンデロンVG 軟膏
5g
10
10
外用薬 鎮痛薬(塗布)
ボルタレンゲル
25g
10
10
外用薬 消炎薬(塗布)
アズノール軟膏
20g
20
10
外用薬 抗ヒスタミン薬(塗布)
レスタミンコーワ軟膏
10g
20
10
外用薬 抗菌薬( 塗布)
ゲーベンクリーム
100g
10
5
外用薬 抗菌薬(塗布)
ゲンタシン軟膏
10g
20
10
外用薬 抗菌薬(貼付)
ソフラチュール
10×10cm
10
5
外用薬 消炎・鎮痛パップ剤
ミルタックス
6
100
50
外用薬 抗ウィルス薬(塗布)
ゾビラックス軟膏
5g
10
10
外用薬 浣腸薬
グリセリン浣腸
30mL
5
5
外用薬 消毒薬( 手指用)
ウェルパス
1000mL
10
10
外用薬 消毒薬
イソジン液
250mL
3
3
外用薬 消毒薬
消毒用エタノール
500mL
3
3
外用薬 消毒薬
0.05%マスキン水
500mL
5
5
外用薬 生理食塩液
生理食塩水(開栓)
1000mL
10
5
外用薬 滅菌精製水
精製水(開栓)
1000mL
20
5
注射薬 鎮痛薬
ペンタジン注
15mg
5
5
注射薬 抗不安薬
ホリゾン注
10mg
5
5
注射薬 抗不安薬
アタラックスP 注
25mg
5
5
注射薬 副交感神経抑制薬
硫酸アトロピン注
0.5mg
5
5
注射薬 局所麻酔薬
1% キシロカインポリアンプ
10mL
10
10
注射薬 電解質輸液
ラクテック
500mL
5
5
注射薬 電解質輸液
ソリタT1
500mL
5
5
注射薬 強心薬・昇圧薬
イノバン注
100mg
5
5
注射薬 強心薬・昇圧薬
ドブトレックス注
100mg
5
5
注射薬 強心薬・昇圧薬
エピクイック注
1mg
5
5
注射薬 強心薬・昇圧薬
ノルアドリナリン注
1mg
5
5
注射薬 気管支拡張薬・喘息治療薬
ネオフィリン注
250mg
5
5
注射薬 生理食塩液
生理食塩水
20mL
30
30
注射薬 生理食塩液
生理食塩水
100mL
10
10
注射薬 抗生物質(セフェム系)
パンスポリン静注用1g バッグS
1g
10
10
注射薬 抗生物質(ペニシリン系)
ペントシリン静注用1g バッグ
1g
10
10
注射薬 トキソイド
破傷風トキソイド
1mL
10
10
注射薬 インスリン製剤
ヒューマリンR注
10mL
1
1

( 注1) 小児用風邪薬(院内製剤):1 包=ペリアクチン散1mg 、アスベリン散10mg 、ムコダイン細粒100mg

災害時携行用薬剤関連資材リスト( 亜急性期)

( 新潟中越地震における川口町での医療救護活動を参考にした災害の亜急性期の医療救護活動1週間程度の際に携行する薬剤関連資材リストの1 例)

区分
物品名
数量
調剤用物品
処方せん
300枚
薬袋(内用薬用)
500枚
薬袋(外用薬用)
200枚
外用薬瓶(100mL)
20個
軟膏壺(30g)
10個
軟膏ベラ
1本
ビニール袋
50枚
調剤印
1個
マジック(黒、赤、青など)
各1本
ボールペン
2本
輪ゴム
1箱
事務用品
セロハンテープ
1本
ハサミ
1本
電卓
1台
ステイプラー(本体)
1台
ステイプラー(針)
1箱
ノート
2冊
ノートパソコン
1台
USBストレージ
1個
書籍
医薬品集(医療用・一般用)
各1冊
医薬品鑑別辞典
1冊
治療指針
1冊
その他
アウトドア用冷蔵庫又は保冷容器
1台
瞬間冷却剤
30個
リュックサック( 巡回診療用)
1個
ケース( 薬保管用)
数個

*事務用品等は後方支援担当者と打合せを行い、重複のないように注意する。

災害医療救護活動(亜急性期)において需要が予想される医薬品リスト

種類
薬効分類
予測される医薬品の需要
小児製剤の必要性
代表的な医薬品
被災後3〜14日
被災後14日以降
内用薬
抗不安薬
デパス、セルシン、リーゼ、セレナール
内用薬
催眠・鎮静薬(超短期作用型)
アモバン、マイスリー
内用薬
催眠・鎮静薬(短期作用型)
レンドルミン、リスミー
内用薬
解熱鎮痛消炎剤
ロキソニン、ブルフェン、アセトアミノフェン
内用薬
総合感冒剤
PL顆粒
内用薬
鎮痙薬
ブスコパン
内用薬
抗めまい薬
メリスロン
内用薬
降圧剤(Ca 拮抗薬)
アムロジン、アダラート、アダラートL、ヘルベッサー
内用薬
降圧剤
レニベース、ブロプレス
内用薬
抗狭心症薬(硝酸薬)
ニトロペン
内用薬
去痰剤
ムコダイン、ムコソルバン
内用薬
鎮咳薬
メジコン、トクレス、レスプレン、アスベリン
内用薬
気管支拡張薬・喘息治療薬
テオドール、テオロング
内用薬
止瀉薬
ロペミン
内用薬
整腸薬
ビオフェルミン、ラックビー
内用薬
消化性潰瘍用剤
アルサルミン細粒、マーズレンS 、セルベックス
内用薬
消化性潰瘍用剤(H2 遮断薬)
ガスター、アルタット、ザンタック
内用薬
下剤(大腸刺激性下剤)
プルゼニド、アローゼン
内用薬
下剤(塩類下剤)
酸化マグネシウム
内用薬
胃腸機能調整薬
プリンペラン、ナウゼリン
内用薬
副腎ホルモン製剤
プレドニン
内用薬
抗血小板薬
バイアスピリン
内用薬
血糖降下薬
ダオニール、グリミクロン
内用薬
アレルギー治療薬
ポララミン、ペリアクチン
内用薬
抗生物質(マクロライド系)
クラリス、クラリシッド
内用薬
抗生物質(ペニシリン系)
サワシリン
内用薬
抗生物質(セフェム系)
フロモックス、セフゾン、ケフラール
内用薬
化学療法薬(キノロン系)
クラビッド
内用薬
抗ウィルス薬
ゾビラックス
外用薬
解熱鎮痛消炎剤( 坐薬)
アンヒバ、ボルタレンサポ
外用薬
抗菌薬(点眼)
クラビット点眼
外用薬
ビタミン製剤(点眼)
サンコバ点眼
外用薬
抗アレルギー薬( 点眼)
ザジテン点眼
外用薬
抗狭心症薬(貼付)
フランドルテープS
外用薬
気管支拡張薬(吸入)
サルタノールインヘラー、ベネトリン吸入液
外用薬
去痰薬(吸入)
ビソルボン吸入液
外用薬
気管支拡張薬(貼付)
ホクナリンテープ
外用薬
含嗽剤
イソジンガーグル
外用薬
胃腸機能調整薬( 坐薬)
ナウゼリン坐薬
外用薬
殺菌消毒薬(口腔用薬)
SP トローチ、オラドールトローチ
外用薬
口内炎治療薬(塗布)
ケナログ軟膏、デキサルチン軟膏
外用薬
副腎皮質ホルモン薬( 塗布)
リンデロンVG 軟膏、ロコイド軟膏
外用薬
鎮痛薬(塗布)
ボルタレンゲル、インテバンクリーム
外用薬
消炎薬(塗布)
アズノール軟膏、アンダーム軟膏
外用薬
抗ヒスタミン薬(塗布)
レスタミン軟膏
外用薬
抗菌薬(塗布)
ゲーベンクリーム
外用薬
抗菌薬(塗布)
ゲンタシン軟膏
外用薬
抗菌薬(貼付)
ソフラチュール
外用薬
消炎・鎮痛パップ剤
ミルタックス、セルタッチ、アドフィード、MS温シップ
外用薬
抗ウィルス薬( 塗布)
ゾビラックス軟膏、アラセナA 軟膏
外用薬
浣腸薬
グリセリン浣腸
外用薬
保護薬(塗布)
白色ワセリン
外用薬
消毒薬(手指用)
ウェルパス
外用薬
消毒薬
消毒用エタノール、イソジン、マスキン
外用薬
生理食塩液
外用薬
滅菌精製水
注射薬
鎮痛薬
ペンタジン注、レペタン注
注射薬
抗不安薬
ホリゾン注、アタラックスP注
注射薬
副交感神経抑制薬
硫酸アトロピン注
注射薬
局所麻酔薬
キシロカインポリアンプ
注射薬
電解質輸液
ラクテック、ソリタT1号
注射薬
強心薬、昇圧薬
イノバン注、ドブトレックス注、エピクイック注
注射薬
生理食塩液
注射薬
気管支拡張薬・喘息治療薬
ネオフィリン注
注射薬
抗生物質
セフェム系、ペニシリン系
注射薬
インスリン製剤
ヒューマリンR注
注射薬
トキソイド
破傷風トキソイド

予測される医薬品の需要 ◎: 需要大 ○: 需要中 △: 需要小


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