集団災害時における一般医の役割

〜 Mass-gathering medicine 〜

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7.一般医の役割(集団災害及びNBC災害)

 以上、Mass−gatheringの集団災害における医療活動の全体の流れを示しました。また、その中でのNBC災害に関してはその特殊性について述べました。ここで、改めて一般医家の役割に関して述べます。

 まず、通常の災害時における一般医家の役割です。Mass−gatheringでの集団災害発生の場に居合わせた場合、まず現場に対策本部が立ち上がっている場合は、対策本部で医師である旨を伝え指示を受けます。救出・救助の役割は、消防が基本的に行います。また、搬送も救急隊によって行われます。

 現場における一般医家の役割は、トリアージとトリートメントすなわち応急処置となります。トリアージは、救急隊と協力して行ってもよいです。また、トリアージに長けた医師が到着すれば、その時点で交代します。

 トリアージに係わらない場合には、応急救護所においての応急処置が役割となります。応急救護所の応急処置の目的は、全身状態の安定化をはかることです。緊急群の傷病者でも的確な応急処置により、準緊急群となることもあります。また、一旦準緊急群にトリアージされた患者が病状の進行により緊急群となることもあります。応急救護所の医師は、緊急群の応急処置をしながら、準緊急群の悪化にも注意することが必要です。傷病者の状態を充分に把握し、搬送の責任者である救急隊と十分に連係して最終的な搬送優先順位に関して、アドバイスします。また、応急救護所で行う応急処置は医療行為なので、トリアージタックの特記事項の欄に、行った処置は時間とともに記載します。

 NBCテロに関しては、二次災害の危険があるので、一般医家が、危険区域、準危険区域に立ち入ることはまずありません。しかし、このようなテロ災害においては、重症の患者の数十倍から数百倍の軽症者、あるいは現在は症状はないが被害を受けた可能性がある被災者があふれかえる可能性があります。このような被災者のケアが一般医家の役割になります。

 実際の活動として予想されるのは、症状のない被災者に対しての、問診と診察、原因物質に関する注意事項の情報、指定病院へのアクセスの方法、精神的ケア等であります。実際に、特殊な例ですが、東新寸臨海事故の際は、一般医家の先生方が近隣の救護所にて診療医療相談に従事しました。

 このようにNBC災害においてもー般医家の役割はあると考えます。


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